グリーン成長に期待するアフリカ

先週火曜日、パリで主要20カ国・地域(G20)の閣僚会議が開催され、原子力の安全性が議論されている時、6,000キロメートル離れた地ではグリーンビジネスの成長を検討するための会議が開かれていた。

コンゴ民主共和国の首都ブラザビルで、環境保護主義者、政策立案者、実業家が一堂に会し、第2回国際グリーンビジネスフォーラム・アフリカ(Green Business Forum in Africa)が幕を開けた。4日間にわたる同会議では、持続可能な経済発展の機会について検討された。

両会議がこの時期に開催されたことは極めて重要な意味を持つ。東京電力福島第一原子力発電所の事故発生を受けて、先進工業国では原子力エネルギー政策の見直しが行われているほか、多くのアフリカ首脳が、アフリカの将来に必要なのは「グリーン(地球環境に優しいこと)」だと認識したからだ。

同会議に先立ちパリで講演したポアントノアール商工会議所のシルベストレ・ディディエ・マヴェンゼラ(Sylvestre Didier Mavuenzela)会頭によると、ブラザビル会議の目的は、「現在の懸念」に対応し、持続可能なビジネス、コンゴ盆地の森林保護、食料安全保障を求める運動の重要性を国民に「認識させる」ことだという。

「中部アフリカ、欧州、アジア、米国の投資家にとって本フォーラムは、小区域のエコ・ビジネスから利益を得るチャンスを提供します。その一方で、現地の開発や住民の生活状態改善の必要性にも重点が置かれています」(マヴェンゼラ会頭)

また記者の取材に対して、主催者(コンゴの持続可能な開発・環境省など)はグリーンビジネスの急成長を認識しているとコメントしている。

さらに、「もし中部アフリカ諸国が同分野の取り組みに参加せず、行動を起こさないなら、自国の経済的脆弱性を改善することができるグリーンビジネスの恩恵を受けることはできないでしょう」とも述べた。

パリに本部を置く経済協力開発機構(OECD)は次のようなコメントを発表している。「各国政府はグリーン経済に重点を置き、経済成長と雇用の新たな機会を見いださなければならない。また、各国はよりグリーンな経済への移行を後押しするイノベーション、投資、起業を十分に活用する政策を整備する必要がある」

先月 OECDが発行した報告書「Towards Green Growth(グリーン成長に向けて)」では、経済成長を促進し、環境を保護することを目的とした各国政府向けの実践的枠組みが概説されている。

OECDグリーン成長戦略チームのナタリー・ジルアード氏はインタープレス・サービス(Inter Press Service)に対して、「多くのアフリカ諸国は自然資産に大変恵まれています。その資産を持続可能なかたちで開発するための政策が必要とされていますが、現在、組織的にこれが実現されつつあります」と語った。

OECDはまた、「グリーン成長は経済的、環境的に重要な意味を持ち」、「自然資源部門だけを見ても、環境の持続性への投資に関連した商業機会は2050年までに数兆ドルに達する可能性がある」との見解を示している。

専門家によると、2012年に開催されるリオ+20に先駆けて、アフリカとその他地域の国々はこの点についてすでに合意し、新たな投資や多くのパートナーシップの形成が進んでいるという。

ジルアード氏はインタープレス・サービス に対し、その一例として、ルワンダの「経済発展・貧困削減戦略」では環境が「分野横断的な重要課題として特定されている」ことを明らかにした。

「グリーン成長に関してルワンダが必要とするものは、ドイツやカナダで必要とされているものとは当然異なります。そのため、開発の各段階に合わせた政策を策定することが重要です」と同氏は述べた。

OECDによると、ルワンダでは、有望視されている環境や自然資源を抱えるさまざまな部門が、開発目標を達成する上で重要であるとして特定されている。

その一例が観光業だ。マウンテンゴリラの生息環境保護対策によって振興し、現在ではGDPに占める割合が首位になるまで成長した。

国内外に拠点を構えるアフリカの実業家も、他の開発途上国や欧州との協力などを介してグリーン産業に積極的に関与しはじめている。これらは多く場合、アフリカの生活水準を向上させる機会となっている。

ベニンでは、NGOのBeninese Association for Mobilisation and Development(ABED)(流通・開発に関するベニン協会)が、村部にソーラーパネルを設置する活動を続けている。「他の地域にも応用可能な、太陽エネルギーの導入を奨励する取り組みのモデルケースとなることを目指しています」と、フランスで教育を受け、パリを拠点に活動するクリステル・アデジュモン再生可能エネルギー・プロジェクトマネージャーは述べた。

「本プロジェクトは、農村地域に暮らす女性たちが自らの手で、太陽光発電による農村地域の電化を進めるというものです」と、アデジュモン氏は続ける。

アデジュモン氏がインタープレス・サービス に語ったところによると、ベニンの農村地帯で生活する女性たちは、自分たちの村を太陽光発電によって電化するため、インドのベアフット・カレッジで6カ月間、太陽光発電技術に関する研修を受けた。ベアフット・カレッジ自体も太陽光発電を利用しており、貧しい村の女性が医療従事者や技術専門家に転身するための教育を提供している。

この取り組みの目的は、家庭生活、健康、教育、雇用、環境保護への影響を通して「持続可能な社会的発展」を後押しすることであるという。

アデジュモン氏をはじめとする専門家は、世界で約14億人が電力を利用することができず、その多くはサハラ以南のアフリカに住む人々で、そこでは平均電化率が30%、農村部に至っては12%であると指摘する。

具体的な対策が講じられない限り、2030年になっても約12億の人々が電力を利用できない状態が続くと予測されている。

2011年にG8およびG20の議長国を務めるフランスは、アフリカにおけるエネルギー利用と開発が最優先事項であることを強調し、4月にはナタリー・コシウスコ・モリゼ仏環境相とケニアのライラ・オディンガ首相が、Paris-Nairobi Climate Initiative(パリ・ナイロビ気候イニシアティブ)を発足させた。同イニシアティブは、2030年までに誰もがクリーンエネルギーを利用できるようになることを目指す。

「最も高値で、効率が悪く、持続可能性の乏しい電力を利用しているのは、世界で最も貧しい人々である」と、フランスとケニアは共同で報告している。

イニシアティブの利害関係を反映して、パリで開かれた発足会には、アフリカ、G20加盟国、欧州、国連機関、開発団体、エネルギー企業(フランスのEDF、中央アフリカ共和国のEnerca(エネルカ)など)から90の代表団が参加した。

同会議の最終宣言で参加者は、「すべての人々によるエネルギー利用の実現、経済の発展、気候変動への取り組みが緊急課題である」との合意に至ったことを確認した。

ケニアが主催する次回会合は2012年2月にナイロビで開催される。「投資環境の改善、新たな財政メカニズムの構築、クリーンエネルギーに関するフラッグシップ・プロジェクトの開始を目指して実施された取り組み」について報告が行われる予定だ。

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本論は、開発、環境、人権、市民社会などに関する問題を取り上げる独立系通信社インタープレス・サービス(Inter Press Service)の承認を得て掲載しています。

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著者

A. D. マッケンジー氏は、世界130カ国以上330地域で370人の記者を抱えるインタープレス・サービス(Inter Press Service)に定期的に寄稿しています。