AI(人工知能)がアフリカにもたらす利点と欠点

現在、アフリカの人口は急増しているが、その大多数は若年層と都市人口だ。国民の年齢の中央値は、ドイツの47.1歳、米国の38.1歳、中国の37.7歳に対し、アフリカはわずか19.5歳だ。しかも、アフリカの若年人口は2055年までにさらに倍増し、2億2,500万人に達すると予測されている。2100年までに、アフリカは世界最大の都市のうち、3つを抱えるだろう。ナイジェリアのラゴスの人口は8,800万人に増加し、コンゴ民主共和国のキンシャサが8,300万人、タンザニアのダルエスサラームが7,300万人でこれに続くと予測されている。

アフリカで高まる成長への期待に応えるためには、アフリカの国々が直面するガバナンス課題に対する革新的なアプローチが必要となる。ところが、2018年の「イブラヒム・アフリカ・ガバナンス指数」(アフリカの国々のガバナンスの質や進歩具合を計り、ランキングするために開発された指数)によると、アフリカのガバナンスは改善を見せているものの、主に若い都市住民の期待には応えられていない。

よって、アフリカ諸国は、急成長する大都市にサービスを提供しながら、残り続ける貧困政情不安のほか、越境組織犯罪政治的暴力といった問題への対策も進めなければいけないというプレッシャーに直面している。

その解決策とされているツールの1つが、AI(人工知能)だ。機械学習とこれに関係するコンピュータ活用型のガバナンス支援は、第4次産業革命と呼ばれている。国家が脆弱で不安定な場合、その能力を増強する際に有用なツールになる。しかし、多くの技術が破壊性を持つように、AIはよい目的にも、悪い目的にも用いられる可能性がある。よいAIの将来性を実現するためには、よいガバナンスのシステムが必要だ。

アフリカにおけるAIの利点と欠点

AIの活用は、民間セクターにおける技術の担い手が中心となって牽引してきたが、アフリカ諸国政府の関心が高まる中で、地域全体の成長とカバナンスに関する「AI戦略」が話題になりはじめた。通常、AIは特定の課題に中立的に活用さない。AI活用に絡む複雑性に対処するには、ガバナンスとの関連で、よいAIと悪いAIの類型化が必要だ。よいAIは、幅広く社会に恩恵をもたらす形で利用される。逆に、悪いAIは社会的な分断や抑圧、暴力を目的に用いられる。

これまでの報道はほとんど、アフリカでのよいAIの活用法を取り上げてきた。ガーナやナイジェリアの新興企業は、アフリカ農村部における医師の不足と医療アクセスの欠如に取り組んでいる。こうした企業は、医師の活動の幅を広げるとともに、携帯電話の普及をデータ収集、行政効率の改善、治療対象者の拡大に向けたツールとして活用するためにAIを応用し始めた。

ケニアとナイジェリアでは、AIを中心に据える新興企業が農業計画や金融取引費用の削減、公共交通機関のアクセスと効率向上に取り組むようになっている。M-ShuleやTuteriaのように、教育に焦点を当て、アクセスしやすい広範な訓練学習プラットフォームを通じ、教員による授業を支援する新興企業も出てきた。ガーナやナイジェリア、ケニア、南アフリカなど、AI資源の豊富な国の政府は、支援の意思を示しながらも、慎重な姿勢を崩さない。政府機関の中では、AIの統合よりも、AIの研究や開発に対する金銭的支援や、科学・技術・工学・数学の教育分野の教育推進の方が優先されている。この状況はしばらく続く可能性が高い。

上記のようなよい活用例では、開発におけるギャップが解消されているが、スキルを高め、資源不足を補えるAIの力は、国家に対する挑戦者や、反体制派の抑圧を図る国家に悪用される恐れもある。ディープ・フェイクと呼ばれる、動画や音声、データのねつ造は、既存の民族的・宗教的分裂を強調し、生まれつつある民主的な機構を攻撃するために利用されかねない。例えば、ボコ・ハラムの支持者は、政府当局の扇動的な音声をでっち上げ、宗教的な対立を煽ろうとするかもしれない。移行期にある民主主義国の激しい選挙戦で、特に人気のあるソーシャルメディア・プラットフォームとの連動が起きた場合、こうした戦術を止めることは難しいだろう。

人為的な誤報のほか、政府がAIを用いて、反体制派や社会から疎外された集団をさらに抑圧、監視する可能性もある。ジンバブエ政府は中国の支援を得て、既存の監視・顔認識アプリで使える個人の顔画像収集を開始している。こうしたアプリについて、人権擁護団体は、システムがオンラインになった時に悪用のおそれがあると懸念している。

最後に、通信技術の普及とともに、悪いAIアプリは、非国家主体、国家主体双方による暴力に関連するコストの低下に寄与する恐れもある。サイバー空間内の機密情報の収集、自動式または増強型の小型武器、AIで動くドローンはいずれも、より暴力的な作戦をより低コストで実行するための手段となりかねない。

グローバル・ガバナンス機構はAIのアフリカへの影響緩和にどのように貢献できるか

悪いAIの潜在的可能性を低下させるには、世界、地域、地方の政府をつなぎ、専門家集団を設け、インターネットによって可能となった技術を効果的に管理する共通の枠組みを確立すべきだ。これによるインターネットやデータ、AIアプリケーションの悪用の取り締まりが理想だ。

2018年初頭、Microsoftは「サイバー空間における悪意ある挑発的な国家行動の危険性」を減らすための産業と市民社会による取り組みを前進させることを目的に、デジタル・ジュネーブ条約に向けたキャンペーンを正式に開始した。2018年11月上旬、アフリカ連合委員会は「アフリカにおけるデジタル経済の発展と新興技術」というテーマで第7回インターネット・ガバナンス・フォーラムを主催した。このフォーラムでは、いくつかの重要問題を中心とする議論が行われたが、その中には、人権を守りながら、インターネットによって可能となった経済の潜在能力を発揮させる点が含まれていた。

2018年の最も注目すべき動きは、サイバー空間の信頼性と安全性のためのパリ・コールだ。パリ・コールは、インターネットの完全性保護、選挙プロセスの干渉予防、さらには「非政府主体によるオンラインでの傭兵活動(金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵)と攻撃行動」の取り締まりを始め、ガバナンスに関するターゲット分野をいくつか特定している。

アフリカ大陸は、悪いAIがもたらす独自の課題への対処を強いられるだろう。カバナンス構造の弱体化や民主的規範の変遷、特に顕著な民族的・宗教的分裂によって、悪いAIに関連する損害を最小限に抑えることが難しくなるからだ。そのためには、脅威とよい活用の機会をともに認識できるアフリカ人研究者と専門家を包摂する戦略が必要となる。

政府間組織は、アフリカのAI起業家や関係企業との連携を図ると同時に、政府職員にAIや電子情報の科学捜査に関する訓練を施すべきだ。政府担当者がAI利用の微妙に異なる性質を認識できれば、よい用途を念頭に置きながら、この技術をよりよく認識、支援できるようになるだろう。また、電子情報の科学捜査を効果的に利用すれば、政府機関がでっち上げのメディアをより迅速に特定し、扇動的なコンテンツを排除し、不正なコンテンツを暴き、暴力の沈静化に役立つ可能性がある。

アフリカ諸国の政府が、AIに関する共通のガバナンス枠組みの中で行動すると同時に、国内の学術・起業専門家と連携すれば、悪いAIの潜在能力を弱めながら、これを社会課題解決の取り組みに活用しようとする人々を認識、奨励できるようになる。このような成果が簡単に達成できるとは思えないが、世界的・地域的ガバナンス機構が、来るべき技術革命の先頭に立ち、他人の役に立とうとする向社会的なアフリカ人の能力向上と強化は最も重要だ。

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AIに起因する国際的な政策課題の探究を目的として研究者、政策立案者、企業およびオピニオンリーダーのために設立された包括的プラットフォーム、「AIとグローバルガバナンス」に本記事を寄稿したのは、クレイトン・ビソー氏とジョン・フリッツ氏である。

本記事で表明された意見は著者のものであり、国連大学の意見を必ずしも反映しない。

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著者

ジョン・フリッツ

One Earth Future基金

ジョン・フリッツはOne Earth Future基金研究員。政策・組織開発をはじめ、さまざまなトピックに関する研究を手がけてきた。現時点は、越境組織犯罪とサイバーセキュリティを中心に研究している。南アフリカのクワズール・ナタール大学で開発研究修士号と政治学・経済史学士号を取得。現在はレジス大学情報保証学修士課程に在籍中。

クレイトン・ビソー

One Earth Future基金

クレイトン・ビソーはOne Earth Future(OEF)基金研究予測部門の政情予測担当者。OEFでは、クーデターや選挙関連の暴力、国内紛争の帰結など、紛争関連事象を予言する予報・機械学習システムの開発に携わる。クレイトンは、過激派の徴募活動(兵を募集・徴集する活動)や行動に焦点を当てた紛争と政治的暴力のパターン解明を研究分野としている。この研究の結果は、The Journal of Conflict ResolutionとConflict Management and Peace Scienceの両誌で発表された。

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