アフリカの雇用課題への対応は世界的な責任

ジム・ヨン・キム世界銀行総裁は今月、任期を3年以上も残したまま、2月1日付で辞任すると発表し、国際援助関係者に衝撃を与えた。辞任表明にあたり、キム総裁は「世界中で貧困層の期待が高まる中、世界銀行グループの活動は、これまでになく重要になっている…」と強調した。しかし、キム総裁がその地位を下りる一方で、貧困に終止符を打ち、貧困層の期待に応えようとする世銀の現状の取り組みは、未だ道の途中だ。

アフリカでは、雇用不足が貧困削減に対する最大の課題となっている。世界銀行の推計によると、アフリカの労働年齢人口は2015年から2035年にかけ70%(4億5,000万人)増加すると推計している。急増する若年人口に対し、アフリカは必要な雇用をどのように提供してゆくのだろうか。

これまで、その答えは工業にあった。例えば東アジアでは、大量の労働者が農業を離れ、製造業に移動した結果、経済成長や雇用創出、貧困削減が推進された。しかし、アフリカでは産業の空洞化が進んでいる。全世界の製造業に占めるアフリカのシェアは、1980年よりも縮小しているからだ。現時点で、労働市場への新規参入者の75%は自営業者か、中小企業の中でも特に小規模な企業に就職しており、サービス部門で働く者は20%、工業部門に至ってはわずか5%にすぎない。こうしたトレンドが続けば、今後20年間に労働年齢に達すると見られるアフリカ人のうち、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就ける者は、4分の1未満になると予測される。

アフリカの工業化に対しマイナスに働いている要因が、多くのサービスや農業ビジネスにプラスに働き、雇用を創出する可能性を秘めている。

この雇用危機は、東アジアの生産性が高い(かつ賃金の低い)製造業との激しい競争や、世界的な工業関連雇用と生産量の衰退を背景に生じている。アフリカにも多くある資源の豊富な国々は、工業化に困難を抱えている一方で、大陸全体としても、モノを安く、効率的に運ぶグローバル・バリューチェーンの成長に適応しなくてはいけないが、この分野でのアフリカの実績は芳しくない。

しかし、よい知らせもある。国連大学とブルッキングス研究所の調査によると、アフリカの工業化に対しマイナスに働いている要因が、多くのサービスや、園芸をはじめとする農業ビジネスにプラスに働き、雇用を創出する可能性を秘めている。

これらの「煙突を持たない工業(非重工業)」は、アフリカ経済の中でも最もダイナミックな部門に数えられる。サービス(観光業、リモートオフィス・サービスなど)や農業ビジネス(果汁など)、園芸(切り花やそのまま消費できる野菜など)は、製造業と同じ特徴を多く備えている。そのため、製造業の成長を推進するための政策は、物流の改善、インフラ整備とスキル向上への投資、輸出増大などの産業も振興している。

アフリカ諸国の経済規模は小さいため、雇用拡創出には輸出が欠かせない。 Photo: Rob Beechey / World Bank, Creative Commons BY-NC-ND 2.0

国際社会は、アフリカにおける雇用創出に大きな利害関係を有している。雇用危機の解決は、持続可能な開発目標の達成だけでなく、アフリカ大陸全体の社会と政治の安定を確保するためにも欠かせない。よい知らせとは、国際社会からの支援があれば、煙突の有無にかかわらず、工業がアフリカでよい雇用を創出できるという知らせだ。

雇用創出を支援する策として、貿易について3つ、援助について1つを挙げる。

第1に、アフリカの製造業とサービス輸出を推進するためには、統合的な策が必要だ。アフリカ諸国の経済規模は小さいため、雇用の成長には輸出が欠かせない。そのために最優先すべきは、保護主義の高まりへの対策である。農産品と製品の交易に関する世界貿易機関(WTO)の交渉は行き詰まり、米国は貿易問題におけるリーダーシップを放棄してしまった。これに代わって中国やインド、ブラジルが世界の貿易交渉で顕著な役割を担うようになっている。これらの国々が先頭に立って、市場開放を維持する多国間ルールを促進しなくてはいけない。

第2に、アフリカの主な貿易相手国、特にアジア諸国は、アフリカからの非従来型の輸出品の受け入れを緩和すべきだ。農工業関連のバリューチェーン形成を妨げている加工一次産品に対する関税の引き下げは、大きな一歩となるだろう。中国は、アフリカ諸国と二国間貿易協定を締結しているが、アフリカ全体を対象とする単一のイニシアティブへと切り替え、その他のアジア諸国にも同様の特恵貿易(特定の国の製品に対して優遇的な扱いを与える貿易)を認めるよう働きかけることで、主導的な役割を果たせる可能性がある。また、米国のアフリカ成長機会法やEUの経済連携協定など、既存の特恵制度の強化も可能である。「ブレグジット」(英国のEU(欧州連合)離脱問題)にプラスの側面があるとすれば、それは英国がアフリカからの輸出品に、独自の特恵制度を開発する機会が生まれることかもしれない。

第3に、貿易円滑化協定(TFA)の全面実施が優先課題となる。貿易円滑化は、輸出コストの引き下げによって、既存の輸出企業の成長を支援するとともに、新たな企業の輸出開始も可能にする。WTOの推計によると、TFAが全面実施されれば、アフリカの貿易コストが16%以上も減少する可能性がある。出だしこそ遅れがあったが、WTOによる「貿易のための援助」イニシアティブはようやく、貿易関連インフラの整備に向けた追加的資金を投入し、これを最も必要とするところに展開できるようになってきた。この動きは維持すべきだ。

最後に、工業には電力、道路、鉄道をはじめとするインフラの整備が欠かせない。政府開発援助(ODA)は、インフラ整備の重要な財源となってきたが、近年では、世界銀行やその他の国際開発金融機関(MDBs)の公的資金供与が減少してきた。アンゴラからザンビアに至るまで、アフリカ諸国の政府は民間貸付に依存するようになっており、中には債務返済困難の兆候を示す国もある。信頼度の高い国については、世界銀行やその他のMDBsから民間資金の借入を可能にするほうが、より優れた策と言えよう。公的資金と民間資金を併用するブレンドファイナンスの活用し、インフラ整備の財源とすれば、アフリカ経済にとって民間市場への依存よりも大きな利益が生まれるだろう。

これら4つの策に取り組めば、アフリカの雇用危機を回避し、大陸全体はもとより、さらに幅広い地域に安定と繁栄をもたらすだろう。

ジム・キム総裁は、グローバルな貧困の根絶という仕事を達成できないまま、その地位を去った。今こそ国際社会がこれを引き継ぎ、アフリカという最も必要な場所で、取り組みを続けるべきだ。

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この記事は、はじめにModern Diplomacyに掲載されました。

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著者

ジョン・ペイジは、国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)とブルッキングス研究所で上級研究員を務める。1980年から2008年にかけ、世界銀行で数々の要職を歴任。その後約10年間、アフリカにおける構造変革、雇用および工業開発に関する研究に取り組んでいる。経済に関する学術書数冊と90件を超える論文の著者でもある。

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