キーラン・クック氏は、ボランティアのジャーナリストたちで構成された独立系 Climate News Network チームの一員である。クック氏はアイルランドと東南アジアで、BBCおよびフィナンシャル・タイムズの通信員を務めた経歴を持つ。
石炭火力発電所が地球環境に与える影響を懸念する人々にとって、最近、吉報が次々と届いているようだ。
石炭は化石燃料の中で最大の汚染源である。国際エネルギー機関(IEA)によると、石炭は世界のエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量の約45パーセントを占めている。
7月中旬、世界銀行はCO2排出と地球温暖化への懸念から、石炭火力発電所に対する融資を大幅に縮小していることを発表した。将来的に、石炭火力発電所への金融支援は「まれな事例にのみ」限定していくという。その後、アメリカ輸出入銀行が、ベトナムの大規模な石炭火力発電所への融資を行わない決定を下したことを明らかにした。
その数日後、世界最大の公的金融機関である欧州投資銀行(EIB)が世界銀行に追随し、新たな融資基準を導入した。その基準が適切に施行されれば、褐炭や、いわゆる「粗悪炭」を燃料とする火力発電所への将来的な融資は行われなくなる。
しかし、悲観主義者が言うように、よいことが起こる時には暗雲が見え隠れするものだ。
世界銀行の決意が試されるのは来年の初め、大きな議論の的となっている「粗悪な」石炭を燃料とするコソボの火力発電所に対して、資金供与の保証を行うかどうか決定する時だ。
石炭関連の融資に関するEIBの新基準(化石燃料を使用する火力発電所から生じる排出量の規定制限値に基づく)は、汚染者に対して寛容すぎるとして批判されている。一方、アメリカ輸出入銀行は世界の多くの地域で石炭火力発電所を支援し続けている
さらに、もっと大局的な状況がある。世界は過去に前例がないほど、エネルギー生産に石炭を使用している。石炭消費量は2040年までに少なくとも3分の1増加する見込みであり、最悪のシナリオが現実のものとなれば、2分の1増加する可能性もある。
米国エネルギー情報局(EIA)は包括的な『International Energy Outlook 2013(2013年版国際エネルギー見通し)』を発表した。
EIAによれば、世界のエネルギー消費は2010年から2040年の間に50パーセント以上増加し、再生可能エネルギーや原子力発電の成長にもかかわらず、総消費量の80パーセントを化石燃料が供給する見込みだという。
EIAは、石炭が電力生産部門において引き続き優勢だと見ている。世界の石炭消費量は毎年1.3パーセントずつ増加するというのだ。すなわち、2010年の147クアデリリオン(10の15乗)英国熱量単位(Btu)から、2020年には180クアデリリオンBtu、2040年には220クアデリリオンBtuに増加する。
このような消費の伸びは、中国やインドという急速な成長を遂げつつある経済国に大いに起因するのだが、石炭消費は現在、他の地域でも急増している。
アメリカにおけるシェールガス・ブームに伴い、比較的安価なアメリカの石炭は現在、輸出向けに記録的な量を利用できる。EIAによると、2012年のアメリカの石炭輸出量は1億1500万トンを超え、2009年の輸出量の2倍以上となった。
今のところ、欧州連合(EU)はアメリカの石炭を買う最大の顧客だ。イギリスへの輸出量だけでも2012年に約70パーセント増加した。イギリスにおける石炭使用量の急増は、昨年イギリス国内のCO2排出量が4パーセント増加した主な原因だと見られている。
一方、EUの経済大国であり、CO2削減におけるリーダーと目されることが多いドイツは、徐々に石炭使用量を増加させている。
CO2排出を規制し、暴走する地球温暖化を避けたいと望む人々にとって、こうした状況は暗い見通ししか生まない。石炭から低炭素型のガスへ転換を図るために多くの努力がなされてきたアメリカでさえ、石炭がカムバックを果たしつつある。
石炭の価格が下落し、天然ガスの価格が上昇する中、EIAは、2013年1月から4月までのアメリカの電力生産のうち石炭が占める割合は平均39.5パーセントだったとしている。この数字が昨年の同時期には35.4パーセントだった。
アメリカの温室効果ガス排出量は過去4年間にわたって減少し続けてきた。しかし警戒しなければならない。今年は上昇するかもしれないのだ。
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本稿はClimate News Networkのご厚意で掲載されました。
翻訳:髙﨑文子
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