北京宣言から30年:これまでの進捗と今後の課題

1995年の北京宣言と行動綱領は、世界の女性の平等、開発、平和のための野心的な目標を設定した。189カ国の賛同を得たこの宣言は、女性の権利が人権であることを再確認し、人生のあらゆる段階における女性の権利の全面的な承認と保護を求めた。30年近く経った今、世界はその進捗を把握し、残された課題を見極めなければならない。

貧困と女性

北京宣言では、貧困の女性化を認識し、貧困の影響が男性より女性に圧倒的に偏っている点や、中程度や重度の食料不足に直面している女性が男性よりも4,780 万人も多い点を指摘した。収入だけでなく、構造的な障壁もジェンダーによる貧困を悪化させ続けている。多くの女性は自分の収入をコントロールできる立場になく、10人に1人は相談を受ける機会もなく自身の収入の使い道が決められている。世帯構成も貧困率に影響しており、配偶者のいない世帯では、女性が世帯主の場合、男性世帯主の場合と比較して貧困を経験する可能性が高くなっている。北京宣言では、貧困撲滅には経済成長と社会正義とならんで、経済的および社会的進歩における女性の平等な参加が不可欠であると述べている。

女性と経済

女性の経済参加は、教育へのアクセスと密接に結びついている。2015年以降540万人減少したものの、現在も1億1,930万人の女子が学校に通えていない。教育は経済的機会を高めるだけでなく、貧困や家庭内暴力の可能性も減らす。しかし、女性が有給雇用に従事できるかどうかは、介護や家事といった無償労働の責任の所在を女性に偏らせている社会規範によっても影響される。2022年、世界全体で、25歳から54歳の男性の労働参加率は91.9%だったのに対し、同じ条件の女性の労働参加率は63.3%だった。この数値は20年以上ほとんど変わっていない。男女間の賃金格差も依然として残っており、女性の収入は男性より平均で20%低くなっている。南アフリカでは、女性の労働参加率は上昇しているが、男女間の賃金格差は拡大している。多くの女性が高技能産業で働いているが、指導的役割よりも低賃金の役職に集中していることが多い。

女性に対する暴力

女性に対する暴力は、依然として世界的に最も蔓延している人権侵害のひとつであり、家庭内での虐待や有害な伝統的慣習を含め、さまざまな環境における心理的、身体的、性的危害がこれに含まれる。北京宣言は、女性に対する暴力の撤廃を明確に求めている。世界的に認識されている問題であるにもかかわらず、多くの女性、特に教育や経済的機会が限られている女性は、依然として親密なパートナーからの暴力にさらされている。進展は見られるものの、すべての国が家庭内暴力に対する法的保護を制定しているわけではない。北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、中東では、それぞれ43%、21%、50%の国々が、いまだにそのような法的保護の整備を行なっていない。暴力に対する見方が変化していることを示すエビデンスも出てきており、男女ともに暴力を拒否する傾向が強まっている。身体的・性的暴力の発生率が世界的に最も高いアフリカとアジアでは、女性に対する暴力を容認する傾向は依然として強い。ジェンダーに基づく暴力を減らし、女性の権利を前進させるためには、こうした深く根付いた固定観念の打破に挑むことが不可欠である。

世界では、女性の8人に1人が親密なパートナーからの暴力を経験している。ジェンダー不平等が根強く残る社会では、女性と少女は、依然として最大のリスクにさらされており、女性に対する暴力が社会的慣習として広く受け入れられている地域では特にリスクが高い。ジェンダーに基づく暴力は世界的な問題であるが、女性の権利が特に厳しく制限されている地域もあり、そのような地域では法的・社会的障壁によって暴力の連鎖が強化されている。アフガニスタンでは、タリバンの支配下で女性の権利が厳しく制限されてきた。2024年、タリバンは女性が公の場で話すことを禁止し、身体と顔を完全に覆うことを義務付ける法律を導入した。しかし、女性に対する暴力はこうした公的な制限にとどまらない。アフガニスタン女性の46.1%が過去1年間に親密なパートナーからの暴力を経験し、50.8%が人生のある時点で暴力を経験している。家庭内暴力に対する法的保護がないため、結婚生活で虐待を受けている女性は特に脆弱なままだ。

南アフリカは世界で最も女性の殺害率が高い国のひとつであり、毎日7人近くの女性が殺害されている。2017年から2021年にかけて、親密なパートナーによるフェミサイド(性別を理由に女性または少女を標的とした殺人)が増加し、2021年に起きたフェミサイドの60%が被害者のパートナーによる犯行であり、2017年から4.1ポイント上昇した。憂慮すべきことに、有罪判決に至るケースは20%未満であり、司法の制度不全を浮き彫りにしている。これを受けて、ラマポーザ大統領は2024年、ジェンダーに基づく暴力とフェミサイドに関する国家評議会を設立する法案に署名した。この評議会は、ジェンダーに基づく暴力と戦うための資金提供および政策実施を目的としている。女性の経済参加は社会的および経済的進歩の重要な原動力であるが、深く根付いたジェンダー規範がその機会を制限し続けている。このような社会規範を打破することは、あらゆる分野での女性の貢献をより広く受け入れ、女性が男性と同じように有能であるという理解を深めるために不可欠である。

一定の進展は見られるものの、経済参加における男女格差や女性に対する暴力は根強い課題として残る。これらの問題に取り組むには、女性が活躍できる平等な機会を確保するための持続的な政策努力、教育へのアクセス、法的保護が必要である。北京宣言はジェンダー平等のための大胆なビジョンを定めたが、それから30年近く経った今、世界はそのビジョンの実現に向けた決意を新たにしなければならない。

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本記事の原文(英語)は国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)のウェブサイトからご覧ください。

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