ベルリンの「システムエラー」による無料ショップ

ベルリンのフリードリヒスハイン地区にあるこのリサイクルショップでは、中古の洋服や台所用品や本が所狭しと並んだ棚から、欲しい物は何でも持って帰ることができる。お金を払う必要はない。盗んでいるわけでもない。物を何かと交換しなくていいのだ。

すべての物が無料のギフトショップ、Schenkladen(シェンクラーデン)で、私たちは連帯経済の一部に参加しているのだ。この無料ショップは、Systemfehler(「システムエラー」、あるいは社会の過ちという意味)と呼ばれる、さまざまな政治的プロジェクトに空間を提供するプラットフォームの一環であり、ベルリンに4店舗ある無料ショップの1つである。店がある場所は、一般的にはコミューンあるいは集団生活として知られる多くの「居住区プロジェクト」の1つだ。

無料ショップのコンセプトは簡単だ。人々が不要な物を寄付し、それを必要とする人々が持っていく。無料ショップは慈善活動ではなく、むしろ予防的行動である。慈善は、資本主義に抑圧された人々に対する一時しのぎの善行になる。一方、無料ショップは相互扶助に基づく新しい経済システムとして機能するのだ。

「人は、お金や交換行為を伴わずに何かをすることに慣れていないのです」と、イェスナー通りの無料ショップやSystemfehlerの他のプロジェクトでボランティアをしているエレン・サティー氏は語る。私たちは薄暗い部屋でコーヒーテーブルを囲んで座っていた。「社会ではあまり見られない行動ですね……つまり、お金が絡まない行動はあまりありません」

無料ショップは、人々が店として理解している場所を完全に覆し、協力的共有の場に変容させている。無料ショップは、人が何かを買ったり売ったりしなければならない状況を望まず、特に不要品が家に放置されている状況を好まない。基本的なルールとして、1人が持ち帰れる物の数は5つ以内だが、何かと引き替えではなく物を持って帰るというコンセプトそのものが最初は奇妙に感じるようだと、エレンは述べる。

「中には、物を持ち帰る時に少し不安になる人もいます。『本当にいいですか?』と聞いてくるので、『ええ、もちろんよ』と答えるのです」と彼女は説明する。彼女の周りでは、ボランティアの人々が今晩の無料イベントに備えてスープの夕食を準備している。今晩の出し物はピエロのパフォーマンスだ。

新しい経済のための闘い

無料ショップを通じて、エレンとボランティアたちは、ある経済のために闘っている。「お金や物の交換に基づく経済ではなく、人間、交流、創造性、そしてプロジェクトに人々が費やすエネルギーといったものに基づく」経済だ。

あなたの労働量や、あなたの収入で手に入る物に基づいて世界を導くのではなく、協力に基づいた支援的な経済活動によって世界を導いていく状況を想像してほしい。そういったタイプの経済活動は、欧米の経済学によってほとんど切り捨てられているが、コミュニティや地域社会や特定の文化では、小規模で常に行われている。資本主義の問題とは、協力が経済的利益の中で測定できないという点だ。資本主義は協力(例えばコミューン的生活)を嫌う。なぜなら人々が資源を共有すると、生産や消費への欲求が低くなるからだ。

「人々を肘で押し分けるような資本主義とは違います」と、テーブルの向こう側で窓を背にしてソファに座るデイヴィッド・ヴォーゲル氏が言う。個人が仕事のために競争する経済とは違って、連帯経済の構造は共同活動を促進する。Systemfehlerの水平的な組織構造は、協力は競争に勝るというボランティアたちの信条を反映している。無料ショップは月例ミーティングを開催し、満場一致のコンセンサスに基づいて決定と問題解決を行っている。

「私たちは常に、全員が満足する解決法を探ろうとしています。それは時にはエネルギーと時間の掛かることですが、よりよい結果につながると思います」とエレンは言う。

批評家は、そうしたプロセスはあまりにも骨が折れると主張するかもしれない。しかしデイヴィッドは自身の経験を踏まえて、満場一致のコンセンサスを探るプロセスは長い目で見れば、究極的により「持続可能」だと語る。

「私たちの活動のもう1つのコンセプトは、いい気分になるということです」と彼は続ける。生活の中の経済活動が私たちの気分にどんな影響を及ぼすのかという一見単純なコンセプトは、成功が金銭や利益で測られる現状においては全く異質なものだ。クレジットカードの冷たい商取引とは違って、無料ショップを後にする人々は共同的プロジェクトに参加したという感覚を味わう。

「ここでは働くために動くのではありません……楽しみのためでもあるし、誰かと一緒に何かをやるためでもあります」とエレンは言う。

Systemfehlerは2007年に、シャルンヴェーバー通りの別の場所で創立された。その1号店は家主との問題によって立ち退きを迫られた。しかしボランティアたちは警察に店からただ追い出されるのではなく、立ち退き行動をデモに変えて警官隊の裏をかいた。

「とても面白い状況でした。警察が店のドアを開けると、中からたくさんのカラフルな風船が出てきたのです」とデイヴィッドは言う。店を風船で一杯にしておき、店にあった物をすべて持って新しい店まで行進したそうだ。おおげさな警護付きの引っ越しというわけである。

コストよりも共有

しかし、Systemfelherを運営するには費用が掛かる。主に家賃だ。人々からさまざまな形で集められた月々の寄付で、ボランティアは費用を支払う。その他、非営利目的のフェスティバルや街のイベントでの情報発信センターに連携パートナーとして参加することで、費用を得ている。

Systemfehlerの空間を利用する活動としては無料ショップが最もよく知られているが、その他にもmaschinen(t)raum(機械の部屋または夢)というカフェがある。コンサートや演劇といったさまざまな文化の夕べが開催され、バーとしても利用されている。さらにSystemfehlerは、Volksküche(人々のキッチン)という夜のイベントを開催し、ボランティアが多くの人々に最低限の料金で料理を振る舞う。エコロジー問題を扱った無政府主義的な映画の鑑賞会や瞑想の夕べなども行っている。

私たちが訪れたのは、ある水曜日の晩である。夕食の準備がもうすぐ整う。イスラエルから来たボランティアが、スープには塩が足りないかもしれないと優しく教えてくれる。3人のボランティアが自分の置かれた状況や、このプロジェクトに関わるきっかけとなった理想について話してくれる。エレンとデイヴィッドは、資本主義が増幅した富裕層と貧困層の断絶や、草の根運動を構築する必要性について語る。

「つまり少しずつ、ゆっくりと歩みを進める必要があると思います。スピードが遅すぎてはいけないかもしれませんが、速すぎてもダメです。速すぎれば、同じシステムを別の方法、あるいは別のリーダーの下で維持し続けることになるでしょう」とデイヴィッドは言う。「でも、ピラミッド型の構造をぶち壊す必要があると思います。私にとって無料ショップはそのプロセスの一部でもあるのです」

お持ち帰り自由の品が入った箱が舗道際に置かれている光景は、活動家の仲間うちではすでに定着している。しかし無料ショップは、整理整頓された店先のアイデンティティーを、水平的組織と気分の良さと協力的共有に基づく地域プロジェクトに組み入れる。

より協力的なプロジェクトが店やレストランといった典型的に資本主義的な場所に進出するようになれば、恐らく人々は、人を疎外する交換経済ではなく集合的共有によって一体となった世界を想像できるようになるだろう。

エレンは笑いながら私たちの顔を見て、こう尋ねた。「あなたがたは革命を起こしたいのね?」

本稿は Open Democracy のご好意により掲載しています。

翻訳:髙﨑文子

Creative Commons License
ベルリンの「システムエラー」による無料ショップ by タイラー・ マイルズ とアンドレア・ アビ・カラム is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
Based on a work at http://www.opendemocracy.net/transformation/andrea-abi-karam-taylor-miles/berlin%E2%80%99s-system-error-free-shop.

著者

タイラー・マイルズ氏はプラハに住むフリーランスのジャーナリストで英語教師である。ボストン大学でジャーナリズムとラテンアメリカ研究を学び、『ボストン・グローブ』紙の地域記事担当デスクを含むボストン周辺のさまざまな出版社で働いた経歴を持つ。ブラジル北東部ではCiclovida(産業的農業などに反対する活動組織)と共に連帯活動を行い、Rooting for the Home Team(ホームチームを応援する)と共にワールドカップに伴う強制退去に反対する活動に参加した。

アンドレア・アビ・カラム氏は、サンフランシスコのベイエリアを拠点とする詩人、活動家、フリーランスのジャーナリストである。彼女はオークランドで、Words of Resistance(抵抗の言葉)という政治的ポエトリー・リーディングを毎月主催している。ボストン大学で神経生物学と英語学を学び、同校の独立系オンラインマガジン『The Quad』の編集長を1年半、務めた。