ルスベー・レガティス氏はインタープレスサービスのレポーターである。インタープレスサービスは世界130カ国以上、330の拠点に370人のジャーナリストを配属している。
世界的気候変動に対する政策と努力を前進させるには強力な地域活動が必要で、気候変動の影響を最も受けている国々が指導的役割を果たすべきだ。
そうしなければ、まもなく南アフリカで開催される気候変動枠組み条約(UNFCCC)締約国会議は「麻痺」と「暴利」の会議となるだろう。公平な温暖化対策の専門家であり、11月に発売される『Politics of Climate Justice(公平な温暖化対策の政治)』の著者でもあるパトリック・ボンド氏はこう語る。
ボンド氏は「代表者らは気候変動の危機を解決する機会をふいにした」と考えている。
12月17日、COP17(国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議)において、194カ国が気候変動対策の進捗状態を評価する。特に、世界の気候政策努力に関して今後4年間を方向付ける京都議定書の第二約束期間に向け、温室効果ガス排出量の法的拘束力ある削減目標について議論し、合意を目指す。
これまでの会議では気候変動を主に経済的な悪影響として捉え、概念化してきた。ボンド氏によるとこれは「市場の問題は市場の解決策で対応すべき」というイデオロギーに基づくものだ。
そのため、排出量が取引される炭素市場を気候変動に対処する主要なツールだとみなす議論が大方を占めている。
ボンド氏は国連特派員ルスベー・レガティス氏に対し、今後の気候政策の中枢となる南側諸国や、その展望と必要性について次のように語った。
Q: 気候変動の会議では、口先だけの約束ばかりなされてきました。このように進歩のない状況を打ち破るには、12月のダーバン会議において何が必要でしょうか。
A: これまでの実績を考えれば、ワシントン、オタワ、ロンドン、ブリュッセル、東京、モスクワ、デリー、北京、プレトリアの代表団には会議を欠席してもらい、気候変動の被害者たちに規則を定めてもらうことが必要でしょう。公害排出国はそれに従って現在の行動を改め、他国に補償を行うべきです。環境犯罪を裁く国際法廷を設立し、地球保護対策に従わない国には制裁と罰則を処することも必要です。
これらの都市の活動家たちは、COP17が飛躍的な前進を遂げられるよう自分たちの代表団に欠席を求めるでしょうが、これまでどおり無視されるでしょう。
アフリカや世界各国の活動家たちは、9月前半にホワイトハウス前で行われたような直接行動(1252人がオバマ政権のタールサンドのパイプライン建設に対して抗議活動を行い逮捕された)を通して公平な温暖化対策を求めて結束し、化石燃料は土の中にとどめておくよう努めるべきです。(既存の)気候に害を及ぼすエネルギー、輸送、掘削、生産、分配、消費、廃棄方法をやめ、公正な移行を促すよう行動すべきなのです。
Q: 著作の中で、世界の代表者たちは「気候危機に対する真摯な解決策」をもたらすことに失敗したと書いておられますね。真摯な解決策とは?失敗の原因は?
A: 最も甚大な影響を与えている世界の主要人物たちは、化石燃料産業の代表者たちであり、世界銀行、アメリカのホワイトハウス、国務省、エネルギー省、カナダの保守党政権とタールサンド産業にいるその仲間たちです。彼らは温室効果ガスをできるだけ広めようとしています。
彼らが中所得国の政府を諭してきたため、ボリビア以外の全ての国は、ある目的を持ってCOPに参加するようです。つまり温室ガス排出量の上限を引き上げようというものです。そうすれば資本家階級の支持を受ける各国の代表は、好きなだけ公害をまき散らすことができるのです。その結果どうなろうとお構いなしに……。
解決方法は、1987年のモントリオール議定書を前例とすべきでしょう。この時は、CFC(クロロフルオロカーボン)によるオゾン層破壊を防ぐため、適切な移行期間(この場合は9年間)を設け、CFCを全廃しました。
しかし市場理論家や化石燃料産業はそんな対策を認めませんから、代表団は骨抜きになっています。権力の不均衡を考えれば、UNFCCC を通し気候変動に対処する方法が見つかるなどと信じるのは愚かなことです。
Q: 環境的負担と責任は、気候変動の影響を被る国々、国際コミュニティ、原因を作っている国々の間で均等に分配されていると思いますか?
A:「気候債務」は、北側が南側に負う経済的負債の一部と捉えるべきです。
広く知られているとおり、気候変動の責任は北側にあります。それには当然、南側で無責任な操業を行う企業も含みます。例えば南アフリカのBHPビリトン、アングロアメリカンは世界最安の電力を手に入れ、その利益をそれぞれメルボルン、ロンドンへ送っています。
ここでの負担の共有とは、環境活動家は同意することですが、このような企業が環境を破壊して莫大な利益を得られるようなアパルトヘイト時代から続く特別価格協定を廃止することです。そうすれば大多数の人々が1世帯1カ月わずか50キロワット時しか得られない現状が改善され、無料の基本電力が得られるようになるはずです。
これは「第三世界の国家主義者」による要求というわけではありません。気候債務(ほとんどの計算によると年間4000億ドル以上)は、エチオピアのメレス・ゼナウィ首相やスワジランド国王ムスワティのような暴君を通して支払われるべきではないのです。
そうではなく、ナミビア式の「ベーシックインカム給付」のような直接的な給付メカニズムによって、腐敗した政府や産業を仲介せずに、気候変動によって被害を受けている人々(例えば昨年はほとんどのパキスタン人)に直接支払いがなされるよう保証すべきです。
Q: 新興経済国は、現在は世界レベルで主要な温室ガス排出国でもありますが、こういった国々の役割は?
A: 南アフリカのような政府にとって最良の方法は、もっとも悪影響を受けやすい弱小国(氷河や雪が融解しつつあるアンデス・ヒマラヤ地域、水没の危機にある島嶼国、干ばつに見舞われるアフリカの内陸国、海水面上昇の脅威にさらされるバングラデシュのような地域)に、プロセスの全権を任せることだと思います。
ボリビアが最も良い手本となるでしょう。彼らは2010年4月にコチャバンバ民衆合意を採択しました。これは一言で言えば、京都議定書に代わるものです。しかしBASIC諸国(ブラジル、南アフリカ、中国)はこれにそっぽを向き、コペンハーゲンでは利己的な理由でアメリカと意気投合しました。こんな彼らには解決策を出す資格はありません。
よって、新興経済国の交渉担当者たちがすべきことは、コペンハーゲン協定と、多国籍企業に電力、超安価な労働力を提供したこと、公害を引き起こしたことに関して謝罪することです。そして気候変動危機に適切に対応できる人々に公平な温暖化対策運動を任せることです。
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