再生可能エネルギーへの100%転換は可能か?

2011年04月20日 ブレンダン・バレット ロイヤルメルボルン工科大学

福島の原発事故、そしてその影響で東日本の広い範囲において計画停電が行われ、国のエネルギー政策の見直し、再生可能エネルギーへのシフトを求めるが上がっている。

しかし、経済産業省の当局者は、「原子力は不可欠」だと躍起になって人々に呼びかけている。なぜなら、「再生可能エネルギーだけでは不十分」だからだという。

国外でも、米国のブレイクスルー研究所のようなシンクタンクは同様に、日本の原子力発電を徐々に削減し、再生可能エネルギーに切り替えるのはコストがかかりすぎると懸念しているようだ。同研究所によると、日本が不足分である203ギガワット(GW)の電力を太陽光で補うには、1兆100億米ドル相当のコストがかかる。代わりに風力ならどうかと言えば、日本の国土の50%を使い、3750億ドルをかけて設備を建設しても、152ギガワットの電力しか供給できない。

再生可能エネルギーへの転換には高いコストがかかるが、その一方で 非常に懸念されるのは、日本が福島原子力発電所に代わるものとして、化石燃料を用いる火力発電所の建設をにわかに推し進め、その結果,低炭素社会に向けての努力を台無しにしないかということだ。ブレイクスルー研究所もこの点を懸念しており、日本のすべての原子力発電所を天然ガスと石炭に置き換えると、二酸化炭素排出量は現在より1割増加すると論じている。

福島での事故直後に議論に加わったガーディアン紙のコラムニスト、ジョージ・モンビオ氏は、原子力発電を継続する必要があるという意見を支持した。彼の意見では、「……大抵の環境保護論者と同様に、私も化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使うべきだと思っています。しかし、原子力の代用とするには課題が大きすぎます」とのことだ。

日本としては、福島第一原発の4基(あるいはおそらく6基)分の埋め合わせを考えるだけでなく、2020年までに9基、2030年までに14基以上の原発を建設する計画も再考しなければならない。しかしながら、既得権者(各地域の電力会社10社および原子力発電所の設計を担当する東芝、日立、三菱)および日本の原発を資金面からバックアップする金融業界の力は大きく、したがって原子力にほとんど、あるいはまったく頼らない代替シナリオに政策立案者が客観的に耳を傾ける見込みは非常に少ない。

これは非常に残念なことだ。なぜなら、日本が今、どのような方策を取ろうとも、それは今後、世界のエネルギー政策に根本的な影響を及ぼしうるからである。英王立国際問題研究所のアンソニー・フロガット氏が指摘するように、原子力発電が世界の発電量に占める割合はわずか6%であり、関係する国は30ヵ国で、中でも主要なのは米国、フランス、日本、ドイツ、ロシア、韓国の6ヵ国にすぎない。日本のように自然資源に乏しい国が、原子力にほとんど、あるいは一切頼らず、化石燃料にも完全に頼らない方法を見つけられたら、国際的に大きな影響力を持つことになるだろう。

エネルギー効率が出発点

エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの利用を組み合わせたエネルギー戦略(アモリー・ロビンズ氏が提唱した「ソフトパス」という言葉で呼ばれることもある)のメリットについて議論すると、限界が見えることが少なくない。ジョージ・モンビオ氏は最近、なぜこの類のエネルギー戦略が問題にぶつかるのかを詳しく解説した。彼に言わせれば、電力消費を減らし、地域で発電を行うというアイディアが素晴らしく聞こえるのは、「但し書きを読むまで」なのだ。

お決まりの文言はこうだ。エネルギー需要が今後ますます増えると予想されている一方で、私たちは信頼性が高く、コスト効率が良く、低炭素のエネルギー源を必要としている。再生可能エネルギーはイデオロギーとしては魅力的だが、高コストで、信頼性に欠け、特有の環境コスト(景観侵害、騒音など)がついてくる。

電力消費を減らすことなど、一見、不可能に思われる。しかし、福島の事故はこの思い込みを考え直すきっかけになるだろう。計画停電に直面した東日本の人々は実際、生活の質を大きく損なうことなく電力の消費量を減らすことができた。東京を象徴するネオンサインの多くは消され、電車や店舗でも必要以上の余計な照明は消された。ここから明らかなのは、事故の前には無駄な、あるいは贅沢に使われていた電力がかなりあったということだ。

つまり、絶対的な必要に迫られれば、不可能も可能になるようなのだ。また、偶然だが同時に、日本人はこのような制約を受けて、自分たちの使っている電力がどう作られているのかを、選ぶ機会こそ与えられていないものの、より詳しく学んでいる。

だが、エネルギー関係で選択できることもある。日本の企業は工場の夜間操業を行うなど、オフピーク電力を利用した生産体制を模索し始めている。また、より適切に需要を制御し、負荷を分散させるために、ピーク時の電気料金を引き上げようという案もある。サマータイム(夏期は朝5時でも明るいので、時計を1時間早める)導入案も 再び真剣に検討されている。

興味深いことに、東京の自動販売機の照明はことごとく消されている。事態が悪化すれば、日本の自動販売機520万台、そして16,000~17,000軒のパチンコ屋が店じまいということもありうる。これで原子力発電所の2つや3つはたちまち廃炉にできるかもしれない。たとえば、自動販売機の消費電力はここ数年で劇的に減少したとはいえ、それでも1台あたり、今でも年間1,046キロワット時を消費している。

しかしながら、エネルギー政策の決定においては、技術的な可不可よりも政治力がものを言う。当然のことながら、たとえば自動販売機やパチンコ業界のビジネスに大きな影響があるなら、関連する勢力からは相当な反発があるだろう。それでも、福島の大事故をきっかけに、私たちはエネルギーについて何が可能かを考え、既成概念にとらわれずに状況を見つめ直すことができるようになったのだ。

今こそエネルギーシフトの時?

危機的状況に直面した人々が電力消費を大幅に減らすことができたのを見ると、そもそも日本に原子力発電は必要なのかという疑問がわき起こる。日本で再生可能エネルギーの利用をかねてから提唱している人物に、環境エネルギー政策研究所 (ISEP)の所長を務めるソーシャルイノベーター、飯田哲也氏がいる。飯田氏は、最近発表した『「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ』 と題する論文の中で、地震、津波、原発事故という3つの災害が重なった東北関東大震災により、日本は1868年の明治維新、第二次世界大戦の終結に続き、3回目の歴史的なリセットを経験していると述べている。

飯田氏の主張の中心は、誰もがエアコンをつける夏の数ヶ月間、電力需要は高くなることが予想されるため、さまざまな応急措置が取られるだろうが、現実的かつ長期的には、2050年までに電力を100%再生エネルギーで賄うように、エネルギーシフトを進める他に道はない、というものだ。

しかし、その目標を達成するには、日本はエネルギー効率向上と節電対策により、電力消費を対2010年比で50%まで減らす必要がある。中期的な目標として飯田氏は、2020年までに電力消費を20%減らし、再生可能エネルギーによる電力供給を2010年の10%程度から2020年には30%に引き上げることを提言している。

飯田氏は原子力発電を徐々に削減することを勧めており、発電量に占める割合を現在の25%から2020年には10%、2050年にはゼロにすることを目標に掲げている。さらに、天然ガスは2020年までは25%で横ばい、石炭と石油は40%から15%にすべきだと述べている。そして、2050年にはいずれもエネルギー源としては使わなくなる。このシナリオでは、原子力と化石燃料による発電は、再生可能エネルギーに転換するまでの過渡期における短期的な暫定措置と見なされているのだ。

長年、こうした提案に関する活動を行ってきた飯田氏は2008年、日本風力発電協会、日本地熱学会、ソーラーシステム振興協会などの団体をまとめる 自然エネルギー政策プラットフォームの設立を手助けした。このプラットフォームの最初の任務の1つは、 2050年自然エネルギービジョンの発表で、それによると日本は2050年までに電力需要の67%を再生可能エネルギーでまかなえるという。

さまざまな再生可能エネルギーを組み合わせた計画を策定するにあたっては、プラットフォームの各メンバーが自らの分野に責任を持ち、予測を行った。たとえば、風力発電協会は(a) 従来通り、(b) 全電力の5%、(c) 全電力の10%の3通りのシナリオを策定した。最後のシナリオでは、同協会は、北海道と東北地方を中心に、設備の半分を洋上に建設すると、50,000メガワット(2010年の3,000メガワットから増加)を供給できるようになるという予測を示した。

コストに関する正確なデータを入手し、不確かな将来の天候状況(風力発電施設に影響を及ぼす台風など)を考慮するだけでも困難だが、最難関の問題は、再生可能なエネルギーに関するこれらの提案が、またも政策立案者に無視されるかもしれないということだ。日本ではこれまで、エネルギーに関する決定は従来、原子力と集中型エネルギーシステムに偏ってきた。なぜならこれこそが、影響力を持つ電力業界の拠り所だからだ。

東京電力(TEPCO)を含む大手電力会社10社は、再生可能エネルギー源の開発に対しては、それほど力を入れてこなかった。たとえばTEPCOの長期目標は、2020年までに北海道と東北でわずか400メガワットの再生可能エネルギー(主に風力)を作り出すことだ。

その結果、日本は再生可能エネルギー競争で他の先進国に明らかに大きく遅れをとり、2010年においていくらかでもめぼしいレベルで投資をしているのは太陽光発電だけだった。ピュー環境グループが2011年3月に発表した「クリーンエネルギーレースの勝者は誰だ?」というタイトルのレポートによると、中国が大きく伸びていて、2010年には544億米ドルという記録的な額を投資している。日本は世界第3位の経済大国だが、再生可能エネルギーによる設備容量の伸びでは第5位にとどまっていて、インドが急速に迫ってきている。ピューのレポートによると、過去5年における再生可能エネルギー容量の伸びは日本では45%、中国では108%だった。

最近、数々の研究で、2030~2050年の間に世界全体が再生可能エネルギーに移行できるという結論が示されている。スタンフォード大学の研究者は2009年11月に、サイエンティフィック・アメリカン誌に研究の成果を発表し、20年以内に世界の電力を100%クリーンエネルギー(原子力は含まない)で賄えるようになると主張した。彼らのウェブサイトには、その結果の裏付けとなるデータやさまざまなプレゼンテーション資料が 掲載されている。

スタンフォード大学のチームを率いるマーク・ジェイコブソン教授は、日本の状況について、彼らのグローバルモデルを基準にすると、日本は南部を中心に風力に恵まれ、太陽光も十分だとする見解を述べている。同教授はまた、「ポイントは、真に再生可能なエネルギー(風力、集光型太陽光発電、太陽電池、地熱、水力、波力、潮力など)を組み合わせてまとめ、毎時の需給を合わせることです」と説明した。

ジェイコブソンのチームはこれが可能であることをカリフォルニアで示した。同チームによると、カリフォルニアでは2年間、99.8%の場合において、毎時の需要を再生可能エネルギーで賄うことができたのだ。

「全時間の0.2%にあたる分だけバックアップが必要でした。これは需要応答で解消できる程度です」と教授は説明した。

ジェイコブソン教授いわく、日本は「再生可能エネルギーの比率を上げ、送電網を広げ、電気自動車を増やし(風力発電の夜間利用を増やすため)、電力供給にできないものを水素に切り替え、再生可能エネルギーの発電設備容量を十分に活用し、風が強すぎる時は制限するのではなく、余剰分を水素に回して高温処理や運搬に用いることが不可欠」ということだ。
同教授が懸念するのは、日本では再生可能資源の開発の可能性が十分に追求されていないのではないかということだ。そして、次のように述べた。「本当に望むのであれば、100%再生可能エネルギーにするのが不可能な理由はありません。これは技術の問題ではなく、意志の問題です。技術と資源はあるのですから。特別な利権や補助金が間違ったグループ(つまり化石燃料と原子力に関わるところ)にむやみに流れていることが足かせになっているのです。政治的に環境汚染源からクリーンエネルギーに補助金の行き先を切り替えられれば、問題の解決に向けて大きく前進することができます」

エコフィス社の調査は、スタンフォード大学のチームが出した結論を支持するものである。それによると、世界は2050年までに地球全体の電力需要を100%再生可能なエネルギーで賄うことができる。 ただし、その目標の約半分はエネルギー効率向上と節電で達成することが前提だ。さらに、地域や国ごとの調査も行われていて、ヨーロッパドイツオーストラリア では再生可能エネルギーへの100%移行が比較的短期間で実現できるとされている。

日本が考え直す機会

もちろん、福島の原発事故を経てもなお、再生可能エネルギーは日本の進むべき道ではないと言う人は多くいるだろう。そういう人々は、いつも通りにするのがいい、「普通」に戻すのに時間をかけすぎてはいけないと、一般の人たちを納得させようとするのだ。

だが、日本が堅牢かつ低炭素、そして耐久性と安全性に優れたエネルギーシステムを目指すなら、今こそ客観的な評価を行い、分散化したローカルな発電システムを全国規模のスマートグリッドに接続させるというやり方も検討すべきかもしれない。そうすれば最低でも、国が50ヘルツ地域と60ヘルツ地域に分断されているなどという問題(明治時代の名残り、そして今に至るまで業界を牛耳ってきた大企業の遺産)は解決できる。

日本だけでなく、どの国にとっても、原子力は短期的な解決策であると同時に、廃炉や、結果的に生じる放射性廃棄物の処理コストなどを考えると、非常に長期にわたって問題が続くものだ。現在でも日本は再処理した放射性廃棄物の最終処分場を探しているが、この問題については他の多くの国も頭を悩ませている。廃棄物は地下300メートルから1000メートルあたりの深さまで埋めなければならないが、放射性物質の崩壊は数千年も続くことを、私たちは心しておかなければならない。

たしかに、この事実だけでも、日本で続く原発事故を受けて今後の方針を考えるにあたり、エネルギーシフトが必要な理由になるのではないだろうか。皆さんはどう思われるだろうか?

翻訳:ユニカルインターナショナル

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著者

ブレンダン・バレット

ロイヤルメルボルン工科大学

ブレンダン・バレットは、東京にある国連大学サステイナビリティ高等研究所の客員研究員であり、ロイヤルメルボルン工科大学 (RMIT) の特別研究員である。民間部門、大学・研究機関、国際機関での職歴がある。ウェブと情報テクノロジーを駆使し、環境と人間安全保障の問題に関する情報伝達や講義、また研究をおこなっている。RMITに加わる前は、国連機関である国連環境計画と国連大学で、約20年にわたり勤務した。