CO2排出は2020年より前にも「大幅に」削減するべき

世界中で二酸化炭素排出削減の強化の行動を直ちに起こさなければ、地球規模での温度上昇を2℃以内に抑えられるチャンスは「急速な減速」をするだろう、と国連が警鐘を鳴らしている。

国連環境計画 (The UN Environment Programme)は、各国が現時点の排出削減の公約を達成したとしても、2020年時点での二酸化炭素総排出量は、温室効果ガス削減コストや気候変動対策コストが急激に増加し始めるレベルより8~12ギガトンも多く、各国の努力が充分でない、と発表した。

17カ国、44の科学者グループで編成された『The Emissions Gap Report 2013(温室効果ガス排出ギャップ報告書2013)』では、過去の排出量の積算で算出された温室効果の「ギャップ」が目標値に対して2020年までに埋まるか大幅に縮小されない場合は、地球規模での温度上昇を1.5℃までに抑える道は閉ざされる、と警告している。2010年に行われた国連会合では、国際社会は2100年までに地球規模での気温上昇を2℃までに抑え、産業革命以前の水準にすることに同意している。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC) の直近の会合で科学者たちは、世界規模で30年の間に、気温上昇を2℃までに抑える排出量を上回る二酸化炭素を排出する可能性があると通告した。また、直近の国連の分析では、このような排出状況は、4℃または6℃の気温上昇をもたらし、それによって海面上昇が起こり異常気象や食料不足が引き起こされるという方向に世界は向かっているのではないかという懸念を示されている。

温室効果ガス排出ギャップ報告書は、その翌週にワルシャワで行われた気候変動に関する会合に先駆けて、2020年における2℃を前提としたCO2排出目標よりを達成できたとしても、それまでに削減量を大幅に削減できない場合は、海面上昇などへの対策として多大の余計なコストが発生すると警告した。。

国連環境計画は「多大のコストは、中期的にさらに高い率での世界的な排出削減、より気候変動に対するインフラ整備の構築、現時点で未完成である削減技術に対するより大きな依存、中長期的により大きな削減コスト、2℃の目標が達成されなかった場合のより大きなリスク、を意味している」と述べた。

このシナリオを避けるために、報告書ではCO2排出の上限は2020年までに44ギガトンとし、2025年までには40ギガトンに、さらに2050年までには22ギガトンにするように推奨している。

しかし、2℃上昇を抑えるための各年における目標は、2010年に大幅削減を開始するという前提に基づいて設定されたものであることを考慮すれば、この目標の達成は「ますます困難になる」と報告書は警鐘を鳴らしている。地球規模での温室効果ガスの排出量は、そのデータが入手可能な最新の年である2010年のもので50.1ギガトンになっている。

報告書は、処置策を講じるための扉は徐々に閉ざされつつあると述べたものの、2℃目標は削減制約の野心的な実施と、エネルギー効率や再生可能エネルギー・化石燃料に対する補助金の分野における既存の公約や国際協力のルール強化によりまだ達成可能としている。

オーストラリアの5%の排出削減目標が「称賛に値するものではなく」、15から25%程度まで増加させるべきであると、先週 同国の気候変動局 (Climate Change Authority)が発表した。

また世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature) の別の分析では、豪州は気温上昇を2℃に抑えられる2020年までの自国の「炭素予算」の持分のうち3分の2をすでに消化してしまっている。

国連環境計画のアヒム・シュタイナー事務局長は、排出削減着手の遅れは、結果的に気候変動による経済コストを増加されるものだとしている。

「このような排出目標の固定化により、気候に配慮した技術の導入が減速し、世界のコミュニティに持続可能でグリーンな未来への道を開く開発の選択肢を狭めてしまっているのです」とシュタイナー氏は言う。

しかし、2020年目標にむけての着実な取り組みは、現行の誓約の強化と、エネルギー効率や化石燃料の補助金制度改革や再生可能エネルギーなどの分野での国際協力の拡大などを含め、この先の行動いかんによってまだ達成可能です」

「農業分野も、直接的な排出が現在地球規模での温室効果ガス排出の11%を占める(間接的な排出も考慮するとさらに増加するが)ことから、このセクターが削減に貢献できることはあるのです」

最近トニー・アボット豪首相から、山火事と気候変動を関連付ける「でたらめを言った」件で糾弾された、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のクリスティアーナ・フィゲレス事務局長は、「一連の気候関連の交渉についてワルシャワでの会合に向かっている中、すべての国の熱意が本当に必要です。熱意によって国々はより一層より早く排出ギャップを埋め、すべての人に持続可能な未来に橋を架けることができるのです」と付け加えた。

「しかし、科学的な視点から見た気候変動の現実に見合うためには、国の熱意だけでは不十分です。これが、国際協力への触媒となる世界中の新しい合意が2015年までに緊急に必要な理由のひとつなのです」

本稿は2013年11月5日に The Guardianにて発表されました。

翻訳:華山朝子

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著者

オリバー・ミルマン氏は、ガーディアン豪州支局のレポーターで、主に環境問題を取り扱っている。彼はメルボルンに拠点を置いている。