世界中で認識されているように(そして工業国の多くで排出削減の要請が出るたびに繰り返し言われることだが)、中国の主要都市はもう長いこと高レベルでの大気汚染に苦しんでいる。
「The End of China’s Coal Boom (中国の石炭ブームの終焉)」と題された2013年のグリーンピースの新しいブリーフィングレポートによると、中国の都市の92%が国の定める環境大気質の標準に見合っていないという。中国のPM2.5(空気動力学的直径2.5マイクロメートル以下の細かい粒子状物質)による大気汚染の原因の半分近くは石炭の燃焼によるものだ。だが、石炭燃焼をともなうプラントや工場の新規建設の勢いが衰えることはない。中国が世界最大のエネルギー消費国である状況を(また中国が世界の主要な温室効果ガス排出国であることを)考えると驚くことではないのだが。2013年には、中国のエネルギー消費全体の65%を石炭が占めており、これにより中国は世界上位のエネルギー消費国の中で最も石炭に依存する国となっている。グリーンピースのレポートによると、世界の石炭消費の半分近くを中国が占めているという。過去10年間の世界のCO2の排出の伸びが中国の石炭使用に紐付くという事がお分かりいただけるだろう。(下記のグラフをご覧ください)
図3.世界のCO2排出量の変化(参照元:BP Statistical Review of World Energy 2013より算出)
しかし、2013年には北京や中国のその他の都市で、「エアーポカリプス(大気と世界終末をかけた造語)」の状況に度々見舞われ、大気汚染レベルがおそろしく跳ね上がり、社会的関心が高まっていく中、政府に対する石炭に偏重した依存形態を変えることへのプレッシャーも高まっていった。2013年9月、 Airborne Pollution Prevention and Control Action Plan(大気汚染防止管理計画書)により、中国政府ははっきりと石炭消費の大幅な削減の規制の必要性の認識を示した。
「当初は、行動計画は規定条項として石炭消費量の上限を取り入れていた。現在では、急速な石炭使用上昇の傾向を覆し、わずか数年で国内の石炭消費を削減するために、さらに多くの条項が盛り込まれている」と、グリーンピースは述べている。
「今までのところ、提案された石炭規制措置の目標は非常に意欲的である。これらが達成できれば、規制措置は世界最大の石炭消費国での石炭消費を大幅に軌道修正できるだけでなく、世界のCO2排出の景観(展望)をも著しく塗り替えることになるだろう。」
こうした希望に満ちたニュースが現実味を帯びるかどうかは、少々慎重になるところではあるが、数週間前のアースデーにおける中国のテーマ(公害との闘いを宣言する)は、この問題に対しておそらく中国が本気で取り組む覚悟があると理解してよいだろう。
以下、6つの事実を関連する概要レポートと非常に有用なグラフを配してご紹介する。
図1. 中国各省での規制措置目標 (参照元:国および省の大気汚染計画)
図2. 石炭規制措置が消費予測に与える影響(2012年までの公式エネルギー統計;過去の傾向と公表されたポリシーにもとづいた、グリーンピースによる予測)
図4. 国際エネルギー機関(IEA)の気候変動緩和の経路(450ppmシナリオ)に従った中国の石炭消費削減政策の効果の予測(参照元:IEA世界エネルギー見通し2013年より算出)
図5. 中国の2003~2013年の国内石炭消費成長率と、2014年の産業予測(参照元:2012年までの公式エネルギー統計;産業および税関データより算出した2013年の成長率;産業予測にもとづいた2014年成長率)
図6a とb. 中国の石炭消費規制目標の適用される省のCO2削減量と削減率と、EU/米国で達成済み・今後予測される排出削減量との比較
図7. 中国で設置済み太陽光発電および風力発電の累計発電量
翻訳:華山朝子
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