女性への教育で温暖化に歯止め

オバマ大統領の科学技術補佐官ジョン・ホールドレン氏は1977年に、人口抑制に関する幾つかの方法についての文章を共同執筆しており、その方法のひとつとして避妊手術を挙げていた。それが判明した途端、アメリカの右派は怒りをあらわにし、ここぞとばかりに彼のことをオバマの「SF補佐官」と呼んだ。

しかしコペンハーゲンでの気候変動会議が近づく昨今、人口抑制の必要性はフィクションの世界でのことではない。アレックス・レントン氏が英国雑誌「プロスペクト」11月号で述べているように、世界人口の増加率が現在のまま進めば、2050年にはその人口を支えるためにもうひとつの地球分の資源が必要だという。温暖化による影響も考慮に入れれば、ホールドレンやその他大勢が1970代に既に予見していた通り、その頃の地球はもはやこの世の終わりの様相を呈しているかもしれない。

しかし世界のリーダーたちはこの問題を取り違えているのかもしれない。温暖化対策のほとんどが人々の権利を奪うやり方なのである。飛行機で移動する権利、運転する権利、中庭に暖房をつける権利などなど。それらとはまったく逆に人類に力を与える方法がある。世界中の女性に、自分の体を自分でコントロールする権利を与えるのだ。それは多くの女性が望むことでもある。国連によると2億人以上の女性が避妊したいが、その方法を得られないということだ。

1970年代に謳われた、おぞましい強制中絶のことなどは忘れよう。ミッシェル・ゴールドバーグ氏が指摘するように、フェミニズム運動によって強制中絶の概念は一掃された。私たちは女性にごく基本的な権利を与えることによって、人口を「コントロール」できるのである。つまり、人口抑制は、ひいては温暖化問題は、女性が関わる問題なのである。

女性が避妊方法、教育、働く権利、法の前の平等を享受していれば、出生率は下落する。ここで、文化相対主義(文化に優劣をつけることは出来ないという思想)と西欧的リベラル志向が矛盾をきたし始める。たとえ自分たちの社会が平等で男女差別のないユートピアで、他の文化を尊重したいと思っていても、女性の権利を否定する文化は世界全体に害を及ぼしてしまうのだ。干ばつと洪水の被害にさいなまれる世の中を望むのでない限り、世界中で女性が平等な市民として扱われるよう強く要求しなければならない。それをフェミニズムと呼ぶ必要などはない。計算された利己心とでも呼べばよいのだ。

人口抑制はいわゆる開発途上国のみが取り組むべき問題でもない。その正反対である。最も急速な発展を遂げている中国の一人っ子政策は悪名高い。しかし、そのおかげで3億から4億の人口が減少した。(興味深いことに、中国は、私たちが想像する以上に、他の分野においても多くの地球温暖化対策を行っている

だからといって中国の出産制限政策を丸ごと輸入すればよいというものではない。結局のところ、あの人民共和国は、女性だけにとどまらず、その他においても人権に関して評価されている国とはいえないのだから。しかし何らかの行動をおこさなければならない。1人のイギリス人の子供はサハラ以南のアフリカの子供の30倍以上の公害要因となる。そしてイギリスと違い、サハラ以南のアフリカ女性は差し迫る経済的理由から子供を必要としている。

確かに豊かな国の多くの女性が子供の数を抑えることを選択している。イギリスの一家の平均出生率は少なめの1.97人で、先進国の中では平均である。しかし、これは多くの女性がいまだに3人以上の子を出産していることを意味しその二酸化炭素排出量を考えると、そんなに子を産まないよう説得されるべきである。

何も厳格な法律をつくろうということではない。前向きなインセンティブを与えればよいのだ。女性が自分の体を自分でコントロールする権利を否定してはならない。(妊娠中絶反対キャンペーンではそうしているが)小家族に対する子ども向け手当てを大幅に増やせばよいのである。中産階級の家族に対しては、子供が2人以下の場合に大幅減税も行うべきだ。これは人権を奪うやり方ではない。違うオプションに重点を置いているだけだ。なんといっても同じ惑星を共有する人々の権利を守るやり方の方が良いではないか。

温暖化が起こっているかどうかを信じていなくてもかまわない。人類がこの地球の気候に影響を与えるという事実から目を逸らし続けていたってかまわない。人口の問題はそれとはまた別物だ。単純に算数の問題なのだ。地球が受け入れられる人間の数には限りがある。それに世界中の女性に教育を与え、その生活を改善することは、目的がどうであれ、そう悪いことではないはずだ。

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この記事は2009年10月27日火曜日、グリニッジ標準時16:30にguardian.co.uk で掲載されたものです。

翻訳:石原明子

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著者

メアリー・フィッツジェラルドは英国雑誌プロスペクトのアシスタントエディター。また英週刊誌ニューステーツマンとオブザーバー紙にも寄稿している。コメディウェブサイトsuchsmallportions.comの共同創設者でもある。