オクサーナ・ブランバエバ氏は、ヨーロッパ国連大学副学長欧州事務所(UNU-ViE)でプログラム・アソシエートを務める。コロンビア大学にて国際情勢の修士号を取得(2004年)、ユーラシア研究においてHarriman Certificate (2007年)を取得し、持続可能な開発と知識移転に情熱をもって取り組んでいる。
「毎朝目が覚めるたびに、私たちの実験室で行う研究が世界に影響を与えるのだと思ってワクワクします」と南アフリカ出身の29歳の環境科学者Aluwani Nemukula氏は話す。
「他の人が全く知らないこと、十分には知らないことに挑戦するのが好きなんです」と中国出身、34歳の環境エンジニアZhen He氏は述べる。
「新たな発見によって人を救うことができるかもしれないという点にやりがいを感じます」と言うのはブラジル出身、32歳の物質科学者Janaina Junkes氏。
「他の誰も発見していないことを発見する瞬間がいいんです。もちろん、簡単にはいきません。そこまで到達するには相当な努力が必要です。…でも簡単なものだったら、…皆がやっているはずでしょう?」 こう話すのは南アフリカ出身27歳の昆虫学者Jeanne de Waal氏だ。
これらのコメントは、ドイツ連邦教育研究所(BMBF)が2009年から主催している「グリーンタレント(緑の才能)」コンテストの受賞者たちのものだ。「グリーンタレント」は持続可能性について研究している世界各国の優れた科学者たちのための国際フォーラムである。毎年BMFFは、持続可能性、気候とエネルギー、地球変動、グリーン成長、資源、地球システムの分野を研究する優秀な若い科学者20名を表彰している。
より安全で、より公正な世界を作るために若者たちができることを認め、祝福しようではありませんか。
培養された哺乳類細胞の実験を行うDaniela Leme氏 写真提供:Daniela Leme氏
国連大学は若い科学者の育成、国際科学ネットワークの強化、地球規模の課題への対処に力を注いでおり、ボンの国連大学副学長欧州事務所(UNU-ViE)はグリーンタレントコンテストを支援している。
持続可能性への貢献
では「グリーンタレント」は持続可能性にどう結びつくのか?2010年のコンテスト受賞者2名について見てみよう。インドネシアの環境研究者Tonni Kurniawan氏とケニアの土木技師Mike Otieno氏だ。
アルバート・アインシュタインに科学的なインスピレーションを得たというKurniawan氏は、エネルギー効率が高く環境にやさしい方法で汚染水を処理するための研究が認められた。彼は、香港理工大学、イースタン・フィンランド大学での研究滞在中、自治体の廃水など慣習的でない水源からの水を使用し、飲料水に近い質にまで高める様々な手法を試した。
南アフリカのケープタウン大学で博士課程に在籍するOtieno氏は、エンジニアやアセットマネージャーがより持続可能な建物を建設することに貢献している。この目的のため彼は、腐食しやすい鉄骨鉄筋コンクリートの耐久性能を予測するモデルを開発中だ。彼の研究によれば、信頼できる予測モデルがあれば、効果的・効率的なメンテナンスと修理の対策が大きく改善することがわかった。それはつまり建物の使用期間が伸びることを意味する。既存の建物の寿命を延ばし、資源の無駄を省く必要がある現在、この分野に注目が集まっている。
交流体験
毎年、グリーンタレント受賞者は、今日の持続可能性の分野をリードする専門家と直接会い、交流する機会を与えられる。この将来有望な科学者たちはドイツ10日間のツアーに招待され、世界でトップレベルの大学や研究機関、そしてシーメンス、フォルクスワーゲン、デザーテック、マックス・プランクなどの企業を訪れる。彼らはグループミーティングに加え、会いたい著名な専門家と個別に会うこともできる。
更に受賞者には、受賞の翌年、再びドイツで1~3ヶ月間の研究滞在にも招待される。この機会に研究プロジェクトを行ったり、開発したりすることが可能だ。滞在の終わりには個人的な経験と研究滞在の結果について報告を行うことになっている。
2010年のグリーンタレント受賞者20名のうち3名が、同じくボンの国連大学環境と人間の安全保障研究所(UNU-EHS)で勤務しスキルを高めることになる。コロンビア出身、27歳の建築家Adrian Lopez氏は都市と産業の関連に焦点を当て、都市開発と貧しい集落に関するリスクを特定しようとしている。
コンテストの受賞者たちは、地球と人類が直面する最大の課題である持続可能性の問題について科学的解答を提供し続けているのだ。
南アフリカの環境研究者Paul Jorgensen氏は、弱冠23歳の最年少受賞者の1人だが、PALM(パミール・アライ山脈)プロジェクトの枠組みの中で持続可能な土地管理の研究を行う予定だ。「若い科学者たちは斬新な視点でものを見ることができる」とポールは信じている。
インド出身28歳の環境科学者Binita Shah氏は最近UNU-EHSが開発したリスクと脆弱性測定ツールであるWorldRiskIndex(世界リスクインデックス)を自国のケーススタディに適用する。
「わずかな科学の応用と研修によって、インドの田園地帯の多数の人々の生活様式を大きく変えることができます」Shah氏は言う。「私は科学者としてその役割を果たせると信じています」
Shah氏のこの発言は、2010年の国際青少年デーに潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が表した思いに応えるものだ。
「若者は次世代を担うリーダーであるとともに、今日の利害を背負う者でもあります。…私たち年配の世代は、相互の繋がりがますます密接になる世界で成人してゆく若者の経験や模範から多くを学ぶ側であることも認識せねばなりません。…より安全で、より公正な世界を作るために若者たちができることを認め、祝福しようではありませんか。若者の、そして私たちの未来を豊かにするための政策、プログラム、意思決定のプロセスに若者を参加させるための努力を強化しようではありませんか」
3年目を迎えたグリーンタレントコンテストでは、今年も世界各地の研究所、現場、図書館で研究にいそしむ若い科学者20名を探している。彼らも、これまでの受賞者と同様、地球と人類が直面する最大の課題である持続可能性の問題について科学的解答を提供し続けているのだ。まだ名も知らぬ若き科学者たちが誰なのか、そして地球をより持続可能なものにする彼らの研究が何なのかについて、知られる日が待たれる。
***
2011年「グリーンタレント」コンテストの受賞者は2011年10月に発表される予定。
「緑の才能」にあふれる受賞者たち by オクサーナ・ブランバエバ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.