COP28はアフリカにおける「現代の奴隷制の罠」に終止符を打てるか

気候危機により、金鉱労働者が債務や搾取の増大にさらされている。

グローバル・サウスは、気候危機の大きな重荷を不当に負っている。例えばアフリカでは、世界平均気温を上回る速さで温暖化が進んでおり、干ばつや洪水などの気候リスクの深刻化により、すでに深刻な社会的・環境的・経済的課題が悪化している。

アフリカがこの新たな気候シナリオに適応するため奮闘する中、現代の奴隷制の増加も懸念すべきである。現在380万人が強制労働の状況に陥っていると推計されるが、これは2017年の340万人から増加している。

現代の奴隷制にはいくつかの要因があるが、私たちの研究によると、気候危機こそが重要なリスク増大要因である。気候関連の圧力が高まると同時に経済的機会が失われるにつれ、何百万もの人々が権利の制約、非正規労働、残酷な搾取を強いられるなど脆弱な立場に追い込まれている。こうした脅威は、天然資源に依存するコミュニティーにおいて最も高くなることが多い。

気候危機と現代の奴隷制との結び付きを暴く

気候変動と現代の奴隷制との複雑な関係には未だ解明されていないところが多い。国連大学によるガーナのココア・金鉱採掘部門の研究により、生産減少や持続不可能な生産と現代の奴隷制リスクの増加の間に明確な関連性があることが明らかになった。干ばつや予測不能な降雨により生産高や収入が減少し、金鉱労働者は洪水による債務の増加を日常的に経験していた。困窮した農民は、しばしば危険な状況において、家族による無報酬労働を含め、低賃金労働に頼らざるを得なくなったのだ。

農家はまた、安価な殺虫剤を用いたり、収入を増やすために手作業の小規模な金採掘用に土地を利用または売却したりしている。こうした行動は、環境破壊、汚染、コミュニティ全体の健康の悪化につながっている。これにより生産が脅かされ、現地経済に搾取的な労働状況が定着した。

労働者の脆弱性は、限られた経済的支援や金融サービスへのアクセス不足により一層悪化した。例えば、農民、鉱山労働者、肉体労働者は、保険制度や年俸を受ける権利がないことが多かった。多くの人々が代わりに非公式な経済的取り決めに頼り、ただでさえ脆弱な立場に置かれた人々を永続的な債務拘束、土地の喪失、賃金未払いのリスクにさらされている。

COP28で現代の奴隷制の罠に対処する

今年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)は、懐疑派の見解を覆し、アフリカで気候変動による現代奴隷制のリスクにさらされている人々のために成果を出せるだろうか。これはまだ分からない。しかし、同会議は気候ファイナンスやインクルージョンに焦点を当てているため、対応するための動機づけとなって関係者に喚起するきっかけとなり得る。金融部門を巻き込むことは非常に重要である。私たちは、投資・融資ポートフォリオにおける環境および社会的リスクについて対話を始め、同部門がその比類なき影響力をいかに駆使して労働者を保護できるかを示す必要がある。金融部門による支援を動員できる3つの分野を以下に示す。

より包摂的で「公正な移行」を確保する。

こうした移行には、化石燃料の段階的廃止に伴う失業という状況のみならず、多方面における人権や労働者の権利を盛り込む必要がある。また、気候変動によりすでに財産、生計や生命を失った開発途上国の人々に関与することも優先事項として必要である。これは、公正な移行に資源を提供し、被害を救済する方法を明らかにするとともに、貢献できる方法を金融部門が検討するよう促すことにつながる。また、例えば、再生可能エネルギー部門などでサプライチェーン全体における追跡管理を実施し、強制労働が行われているおそれのある場所を特定することでも、前進を遂げることができる。

公平性・公正性に取り組む。

労働者の公平性を実現するための人権アプローチ、とりわけ農業や天然資源のバリューチェーン全体での人権アプローチには公正性が求められる。生活賃金や利益の分配など、より公平な経済モデルを推進する行動は、経済状況を改善し、奴隷制や搾取から労働者を保護し、企業や投資家のより高いリターン(離職率の低下や生産性の向上など)の創出に役立つ。投資家はまた、利益リスクやレピュテーションリスクと並んで、気候変動リスクや社会的リスクをリスク評価において優先させることで公正性を高め、財務に影響を及ぼす可能性のある気候変動や社会的影響を効果的に特定し、その対応に役立てることができる。投資家はさらに、その影響力を行使して企業に説明責任を果たさせるとともに、脆弱な立場に置かれた人々と環境の両方を保護するための予防策を講じることもできる。

グローバルな低炭素の未来を実現する。

一部の投資家たちが環境・社会・ガバナンス(ESG)のコミットメントの一環として、気候変動へのレジリエンス(強靭性)を優先するようになってきており、大手銀行によるネットゼロ・コミットメントもこの方向に進んでいる。「グリーンな移行」に関連するバリューチェーンに投資する企業が、現代の奴隷制のリスクに対するレジリエンスの構築や、労働慣行の悪化防止に資することも極めて重要である。責任ある投資家がCOP28に参加することで、部門全体の議論の潮流の変化と、新たな基準の設定に役立つ可能性がある。

アフリカには、クリーン技術革命を推進するために必要な鉱物が数多く存在する。しかしアフリカは同時に、自らが大きく寄与していない気候危機の矢面にも立たされている。緩和と適応に関する議論は極めて重要であるものの、COP28ではそれにとどまらず、アフリカの資源を搾取しながらもそうした資源を採掘し管理するアフリカの人々にほとんど保護策を提供しない、現在のグローバルな投資パターンに対する信頼できる代替案を検討する必要がある。

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