新型コロナウイルス感染症:夏の猛暑到来で何が起こるか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、北半球で冬の只中に流行が始まったが、夏の間はもちろん、それ以降も収まらないであろうことが明らかになってきた。ここ数年の夏は記録的な暑さとなっており、2020年も同様の予測がなされている。世界気象機関(WMO)は今年の夏も大変な猛暑になると警告を発している。猛暑がさらに厳しさを増し、長引くとなれば、人々の健康にますます悪影響を及ぼす。

たとえば、2003年の猛暑の結果、ドイツだけで7,000人近くが死亡し、熱中症、脱水症、心疾患など、暑さによる疾病が多数発生した。こうした疾病の多くは病院での治療が必要となるため、医療システムのひっ迫につながる。

猛暑が都市部の住民にとってとりわけ問題なのは、建物が密集し、いわゆる「ヒートアイランド現象」がとくに発生しやすいからである。この現象は、建物が隣接し互いに排熱すると起こるため、都市部の気温はしばしば周囲の農村地帯よりも最大3℃高くなる。さらに、風通しが悪く、住宅や地表が熱を吸収するせいで、夜間気温があまり下がらない。その結果気温が20℃以上の暑く寝苦しい夜となり、住民の健康にさらなる悪影響をもたらす。

猛暑が襲うと、都市に暮らす人々は冷却効果のある公園などの緑豊かな空間や水域に押し寄せる傾向にあるが、こうした行動は文字通り密集を引き起こし、身体的距離の確保とは相容れない。これまで、ヨーロッパでは多数の都市が、人々が涼めるように革新的な対策を講じてきた。例として、市役所やショッピングセンターなどの空調の効いた公共空間や公共のプールの営業時間を伸ばすといったことがあげられる。しかし今年は、そうした施設は完全に閉鎖されているか、少なくとも営業時間が制限されている。

COVID-19により、今年の夏は、これまで以上に多くの人々が冷房の効いたオフィスビルではなく、暑い家で在宅勤務をすることになる(ヨーロッパのほとんどの国では個人の家に空調設備がない)。田舎への週末旅行という選択肢も、例年より制限されるだろう。普段よりも長く夏期休暇を取って2週間ほど暑い都市から逃れることさえ、今年は実現するのが難しい。

しかし、都市の住民が涼める選択肢がないままであれば、暑さによって体調を崩す人が生じ、医療システムへのさらなる負担を招くことになる。人との接触の禁止や制限に加えて、逃れようのない暑さから来る不快感にも対処しなければならない場合、そうした暑さは人々の心の健康にも大きな被害をもたらすだろう。

都市の住民が夏を安全に乗り切るための具体的な対策を考案することが不可欠である。

緑地や池など、大規模なグリーン(自然の機能や仕組みを活用した)インフラやブルー(海洋生態系を活用した)インフラにすでに投資を行ってきた都市は、恩恵を受けられるだろう。そうした多目的空間は、猛暑の際に周囲よりも冷涼な場所となるだけでなく、大雨や洪水といった自然災害の被害から守る役割も果たし、今回のパンデミック(世界的流行)の収束後も、投資に値する。また、ポケットパーク(小規模の公園)やコミュニティガーデンを碁盤目状に設計すれば、緑地が混み合ったり一時閉鎖されたりするリスクが軽減される。こうした既存空間を最大限に有効活用して、多くの人が安全に涼める方法を考案する必要がある。

今から新しい公園を建設するのは不可能かもしれないが、多目的空間に可動式の日よけを備え、混雑している地域にある程度の緑を植えたりするのは今からでも遅くはない。たとえば、駐車場や空き地は迅速かつ非常に効果的に転換することが大いに見込める。校庭も一般に開放することができるだろう。また、十分な間隔を開けて安全に移動できるよう、サイクリストや歩行者のためのスペースも必要である。多数の都市がこうした問題に取り組んでいて、例えばブリュッセルでは、都心部を対象に新しい交通の概念を取り入れたばかりであり、ミュンヘンでは期間限定の遊歩道を導入している。

個人が取るべき対策もある。たとえば、屋根や壁面の緑化は家を涼しくするのに役立つ。今こそ日陰を作るために日よけの設置や緑を植えたりするなど、住宅の緑化や改修を検討する好機ではないだろうか。他の対策としては、住宅の断熱システムや換気装置の強化がある。

どこにどの対策が最適かは個々のケースで判断しなければならない。人々の生活環境も、抱える問題も、それぞれ異なっており、異なる解決策が必要である。バルコニーや庭のない小さなアパートで暮らす人々の場合、部屋の温度がすぐに高くなるため、広い屋外空間のある大きな家に住んでいる人々よりも多くの問題を抱えているだろう。こうした社会的側面も考慮しなければならない。

一方で、今回のパンデミックは願わくば一時的な問題であるが、より長期的なもう1つの緊急課題である気候変動も、私たちの取り組みにおいて無視してはならない。住宅もアパートも空調設備で涼しくできるが、専門家はそれらを一種の「不適切な適応」と考えている。第一に、空調設備は大量のエネルギーを使用し環境に悪影響を及ぼすこと、第二に、熱を放出するため周辺地域の気温がさらに高くなることが理由としてあげられる。

持続可能な開発目標(SDGs)の目標 11(住み続けられるまちづくり)に沿った、居住に適した都市という長期目標は、グリーンおよびブルーインフラでなければならない。それは気候変動への適応と緩和(SDG13)に役立つだけでなく、レジャーとレクリエーションの場をもたらし、最終的には人々の健康と福祉(SDG3)にも寄与する。それとともに、ニューアーバンアジェンダの複数の目標や、仙台防災枠組の復旧・復興の指針で、優先行動4に示される「より良い復興(Build Back Better)」などのターゲットにも貢献しうる。

最後に、COVID-19と関連して期待できる社会の発展事例がいくつかある。これまでの数週間、多くの都市で高齢者やその他の社会的弱者を支援するコミュニティ活動が数多く始まっていて、それまで面識のなかった隣人同士を結びつけている活動もある。たとえば、若い住民が高齢の隣人のために買い物に行くことで、そうした高齢者はCOVID-19の罹患リスクを高めずに済む。他の危機においても、一部の社会的集団が、他より弱い立場に陥りやすい場合がある。比較的リスクを受けにくいグループがよりリスクを受けやすいグループを支えることは、猛暑などの危機に際して大きく功を奏することが証明されており、例えば猛暑日に高齢者がスーパーマーケットに行かずに済むようになる。

COVID-19によって私たちの夏の過ごし方が大きく変わることは間違いないが、うまく備えれば猛暑を乗り切れるだろう。

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この記事は最初にInternational Institute for Sustainable Development’s SDG Knowledge Hub掲載されました。

 

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著者

国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)脆弱性評価・危機管理・適応計画部門のリサーチ・アソシエイトである。オーストリア・インスブルック大学で地理学の博士号を取得。

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