国際ニエレニ・ニューズレター(英語、スペイン語、フランス語でお読みいただけます)は、食料主権を求める世界的な運動を伝えることを目指しています。社会的な運動や組織の連合によって組織されたニエレニの主な目的は、問題に関する分かりやすい資料を提供し、体験談の交換や情報の共有を望む個人と組織のための空間を創造することによって、運動の基盤を強化することです。
第21回国際連合人権理事会は2012年10月11日、第21回会期における第19号決議を採択した。この決議により、同理事会は無期限の政府間作業部会の発足を決定し、小規模農家と農村労働者の権利に関する国際連合宣言の草稿について交渉し、まとめ、提出するように命じた。この作業部会の第1回会合が2013年7月15~19日、ジュネーブで開催された。今回の記事は、この重要なテーマに関して説得力のある見解を示している。
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食料主権を推進し、それに関連する人権を擁護する人々の社会的抗議活動と正当な訴えが、迫害され、処罰を受け、犯罪化される傾向が、近年急激に高まっている。特に大規模な経済投資が関連する事例で、その傾向が見られる。
人権擁護家に関する国連事務総長特別代表を過去に務めたヒナ・ジラニ氏、および人権擁護家の状況に関する特別報告者のマーガレット・セカッギャ氏によると、土地や天然資源や環境問題に取り組んでいる人々は2番目に弱い人権擁護者である(国連文書A/HRC/4/37およびA/HRC/19/55をご覧ください)。
食料主権活動家の犯罪化とは、食料主権やそれに関連する人権を主張する人々や社会運動に対して、根拠のない刑事訴訟(または人権を順守しない法律や、有力な関係者に有利になるように差別的で偏った法律に基づいた刑事訴訟)が非常に組織的に繰り返し起こされることと定義できる。食料主権に関連する人権とは、適切な食料への権利、土地と領土への権利、水への権利、集会と結社の自由への権利などだ。
食料主権を求める社会運動の活動家たちは、曖昧な犯罪の定義に基づいた法的措置(例えば、公務員の名誉や評判を傷つけると推定される違反行為の告訴)に直面することが多い。それは多くの場合、法に反している。本稿で後ほど紹介する証言が示すように、刑事訴訟における数々の不法行為が確認されている。具体的には、恣意的逮捕、審理前こう留期間の過剰な延長、刑事訴訟の不合理な長期化だ。
また、犯罪化は嫌がらせ、脅迫、肉体的および心理的暴行を伴うこともあり、特に人権擁護の信用を傷つけるために、公の場での中傷やその他の手段が用いられる。中傷する事例の場合、小規模食料生産者や食料主権活動家や支持者たちの一般的イメージを傷つけることが目的である。人権擁護家の状況に関する国連特別報告者は、「擁護家の逮捕やこう留の数々の事例は、彼らに汚名を着せる原因でもあります。擁護家はトラブルメーカーとして映し出され、国民に認識されるからです」と懸念を表明した。
例えば食料主権の社会運動は、「開発や対話への反対勢力」「テロリスト」「麻薬ディーラー」「トラブルメーカー」であるとして非難されたと報告している。
究極的に言えば、犯罪化とは、食料生産の資源へのアクセスや管理、および食料システムの管理を求めて行動する人々を怖じ気づかせ、阻止する手段である。
人権を擁護したために迫害される人々は、彼らの多くが工面できない高額な法定費用を負担させられる場合が多い。犯罪化によって、告発されたリーダーは失職する可能性もある。人々の組織は疎外感や落胆に苦しみ、食料主権のために活動し続ける力に深刻なダメージを受ける。究極的に言えば、犯罪化とは、食料生産の資源へのアクセスや管理、および食料システムの管理を求めて行動する人々を怖じ気づかせ、阻止する手段である。
食料主権の社会活動家や支持者は、企業、通信メディア、民間の警備機関などといった非国家的な関係者による直接的または間接的な行動を通して、犯罪化される可能性がある。この状況は特に、採鉱、水力発電用のダム建設、林業やアグリビジネスといった大規模な投資プロジェクトが関係する場合に起こる。
米州人権委員会はこの事実を2012年の報告書で次のように言及している。「しばしば、巨大プロジェクトを管理するオーナーやプロジェクトで働くスタッフは、権利を守ろうとする人権擁護家の活動を弱体化させる目的で、擁護家に対し刑事告訴を申し立てる」
女性、先住民族、小規模農家、漁業関係者、食料関連分野の労働者、牧畜業者、そして食料主権を行使したいと望む全てのコミュニティが持つ権利を擁護する取り組みを、食料主権運動とその支持者は倍増する必要がある。
さらなる組織化、支持基盤と活動家の連帯、公正な法的枠組み、人権の管理制度の強化が、増え続ける犯罪化の脅威に立ち向かうための重要な要素だ。
人権理事会諮問委員会による小規模農家と農村労働者の権利向上に関する予備調査:A/HRC/16/63(英語、スペイン語、フランス語の文書をこちらからダウンロードできます)
人権理事会諮問委員会による小規模農家と農村労働者の権利向上に関する最終調査:A/HRC/19/75(英語、スペイン語、フランス語の文書をこちらからダウンロードできます)
小規模農家と農村労働者の人権の促進と保護に関する国連決議:A/HRC/RES/21/19(英語、スペイン語、フランス語の文書をこちらからダウンロードできます)
2013年7月15~19日に開催された小規模農家の人権に関する国連政府間作業部会に関連する公式情報、決議、調査文書(英語、スペイン語、フランス語の文書をこちらからダウンロードできます)
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本稿は「ラテンアメリカにおける人権擁護家の犯罪化:国際的組織とヨーロッパのネットワークによる評価」と題された声明書に基づいて主に執筆されました。この声明書は、APRODEV、CIDSE、CIFCA、FIAN、OBS(OMCTとFIDHの共同プロジェクト)、Oidhaco、PBI、Plataforma Holandesa contra la Impunidadによるものです。
翻訳:髙﨑文子
食料主権擁護者の犯罪化:傾向の移り変わり by エレエニ (Nyéléni) is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
Based on a work at http://www.nyeleni.org/DOWNLOADS/newsletters/Nyeleni_Newsletter_Num_14_EN.pdf.