接近する原油を警戒するキューバ

キューバは環境破壊と環境業への打撃に備えて確固たる態度で臨む準備をしている。ディープウォーター・ホライズンの事故によって流出した原油が、美しい自然の姿をそのまま残すキューバ北の沿岸に迫ってきているのだ。

当局は海沿いの地域に、最初の兆候である海面上に見られる黒い油膜を見逃さないよう注意を呼び掛け、またすでにベネズエラから専門家を呼び寄せて被害防止策に関するアドバイスを求めている。

4月20日に起こったディープウォーター・ホライズン石油掘削基地の爆発事故であるが、メキシコ湾の潮の流れから、キューバにもその被害が及ぶだろうとの懸念が膨らんでいる。そのような中、キューバの北西100マイル沖の海上でところどころに油が浮いていると報じられた。

もし原油がキューバに達するようなことがあれば、何十年も続いてきたキューバとアメリカ政府間の著しく対立した外交関係に新たな波紋をひろげることになるだろう。

「かつてキューバ沿岸ではタンカーに関連した小規模な石油流出事故がありました。しかしこれほど大きな事故に直面したのは初めてです」軍司令官で国軍次官のラモン・エスピノサ氏が自然災害防止策に関する政府会議の場で記者に語った。

「とにかく我々は書類にまとめ、調査を進めています。総力をあげて対応しているところです」そして彼は、もし原油がキューバに到達すれば大惨事になるだろうと付け加えた。

経済成長が比較的遅れているキューバ北の沿岸部は、フロリダからたった90マイルしか離れていないが、ここは以前からマンタや移動性のウミガメやサメにとって格好の生息地となってきた。また白い砂浜を求めてやってくる観光客は、共産主義国キューバの経済にとって頼みの綱である。

キューバ民間防衛隊のリーダー、ラモン・パルド氏は、キューバ政府はありとあらゆる予防策を立てていると話す。

「沿岸部の準備、警戒、起こり得る様々な被害状態について考えること、大きな影響を受ける可能性のある沿岸部に住む人々に心構えをさせること」

政府筋では、キューバはベネズエラからの専門家を当てにしているということだ。ベネズエラはキューバの同盟国で、長年海底石油の採掘をし、それが引き起こす環境への影響についての知識と経験を持つ。しかし同時にキューバはアメリカとの対話にも意欲的だ。アナリストによれば、“石油外交”はアメリカ政府とキューバ政府の協調という希少な機会を生み出す可能性があるということだ。しかし詳細はいまだ煮詰まっていない。

キューバはその北沿岸に50億バレルの原油と10兆立方フィートの天然ガスの埋蔵物を保有すると見積もられているが、BP社の原油流出事故により、これらの自然資源の開発計画を中断することになるかもしれない。現在の予定では、スペインの会社レプソルYPFが今年中もしくは2011年の早い時期に石油や天然ガスの調査井を掘ることになっている。

この記事は2010年6月16日水曜日、英国夏時間17時37分にguardian.co.ukに掲載されたものです。

翻訳:伊従優子

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