エアコンの環境への影響に関する事実と予想には驚くべきものがある。第1に、毎年5億トンの二酸化炭素が建物や車のエアコンから排出されているのだ。
他にも次のような問題がある。
- 2010年には中国だけで5000万台のエアコンが販売された。
- 15年以内にはサウジアラビアは「主にエアコンの使用により」、石油の輸出より消費が増える可能性がある。
- 2050年までには、温暖化が進むこの惑星の気温を下げるために使われるエネルギー消費量は10倍になるかもしれない。
たとえ科学者や作家スタン・コックス氏による将来のエアコン使用予測は少々大げさすぎる警告だとしても、富が増え、利便性と快適さを求めて購買意欲が増すにつれ、エアコンの台数も増えることは間違いない。
都市へ移り住む人々が世界的に増えるということは、これまでの伝統的な木造家屋や木々を離れ、コンクリートの屋根の下、暑苦しい部屋で暮らしたり、1日中働いたりすることを意味する。ほとんどの先進国と異なり、「グローバル・サウス」においては冷房の「必要性」は年がら年中であるから、経済的にも環境的にも負担が大きい。
冷蔵庫や洗濯機がグローバルな中産階級への仲間入りを意味してきたのと同様、エアコンも、その世帯や企業、あるいは政府やNGOが「うまくやった」ことを示すステータスシンボルなのである。
「エアコン付き」という言葉は、車を売る時、ホテルに滞在する時、客を家に呼ぶ時に忘れずに触れるべきポイントだ。
先進国で働く私たちは、エアコンが一般的になるにつれ、特に「暑さには慣れている」はずの南国の人々が1日中、震えるほどの16度の設定で満足しているという奇妙な現象を見ることになるだろう。
さらに最近注目されてきているのが、アラブ首長国連邦でも、あなたの国でも、エアコン利用者の中に呼吸器系疾患が増加していることだ。あなたの健康状態とエアコン利用時間に何らかの関わりはないだろうか?
素晴らしき「エアコン」
エアコンが贅沢品でなく、「必需品」へと移行したことについてシドニー・モーニング・ヘラルドが取り上げている。その報告によるとオーストラリアの人口は2200万人だが、ここ5年だけでも170万台のエアコンが設置されたということだ。
エネルギー消費を増やすのではなく減らすべき時代にあるというのに、エアコンだけでなく他の分野でも驚くほどの消費の増加が見られる。エネルギー効率の高い電球を使うなど、対策が行いやすい(「下枝にぶら下がる果実を取る」という表現がある)地域で特に消費が伸びているのだ。
「経済的、環境的、社会的コストが甚大であるにもかかわらず、世界中のエアコンブームを疑問視する声が上がらないのは驚きである」と評論家、マット・ウェイド氏は述べている。
ウェイド氏の発言はもっともだ。だが彼は正しいのだろうか。あなたはエアコンの利用増加について疑問に思ったことはあるだろうか。エアコンは必需品なのか、それとも数世代が使い慣れたという程度のものなのか。
ぜひ一緒に考えてほしい。気候変動が私たち全員に影響を与えている昨今の状況を踏まえると、現実的にエアコン好きであり続けることは可能なのだろうか。それとも私たちは、例えばエネルギー効率のよいシンプルな扇風機へと回帰すべきなのだろうか。
地球を暑くすることなく、人々を涼しく保つ方法にはどんなものがあるだろうか。(こちらにいくつかのアイディアが載っているので参考にしていただきたい)
翻訳:石原明子