討論会2.0:ジャンクフードは違法にすべきか

そのとおり、ジャンクフードの消費を減らすための法律ができないかという話だ。特に子どもによる消費である。アメリカでこの傾向が出てきたのは、全国の20歳未満の子供の3人に1人が体重過多または肥満だからだ。これは1963年の3倍である。

もちろん、「何もかもほどほどが大事」という考えに沿う方がずっと良いに決まっているが、どうやら無理なようだ。私たちは、栄養価が低く不健康な食料の消費を自発的に「ほどほど」に抑えるということはできそうにない。

だから今では子どもの肥満が親にとっての一番の健康上の悩みであることも驚くにあたらない。アメリカ心臓協会によると、これは麻薬乱用や喫煙を抜いてトップなのである。懸念の理由は、子どもたちの肥満が、以前は大人にしか見られなかった高血圧や2型糖尿病、高コレステロール値など様々な慢性的な健康障害を引き起こしているからだ。

アメリカがこの問題に直面する唯一の国というわけではない。これまでにも特集したことがあるとおり、肥満はいまや世界的な問題だ。世界保健機関の子どもの成長と栄養不足に関するグローバルデータベースにある栄養に関する調査によると、2010年には、世界中の就学前児童のうち4300万人が体重過多または肥満で、さらに9200万人が体重過多になるおそれがあるとされている。これは全体の6.7%で、1990年の4.2%から増加している。

これは巨大企業がこのような新たな市場をターゲットとしているからである。しかも、効率的にだ。最新の研究によると 「不健康な商品」(清涼飲料水、塩分、脂肪、糖を多く含む加工食品、タバコ、アルコール)の消費増加率は下層から中級の所得レベルの国々で最も大きい。

アメリカでは健康の大問題について政府の様々なレベルで措置が取られている。代表的な例がニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長の最新の動きだ。市長は砂糖入り飲料(清涼飲料水、レモネード、バブルティー)のサイズを16オンス(0.47 リットル)以下に制限する方針を打ち出したのだ。市長は市の肥満・体重過多(成人の34%が体重過多、22%が肥満)を減らそうとレストランでトランス脂肪使用を禁じ、カロリー値を示すよう求めるなど、既に様々な措置を取っている。

邪悪な炭酸清涼飲料水?

公益科学センターのシニア政策顧問ジョージ・ハッカー氏は「1970年代と比べて増加したカロリーの半分が清涼飲料水から摂取されている」と説明している

これも、清涼飲料水産業が市場のニッチ拡大を行ったからだ。かつては週に1度か2度飲めれば贅沢だった飲み物を今では世界中の多くの人が毎日飲むようになっている。この産業は子どもや貧しいコミュニティをターゲットにして派手な宣伝を行ってきた。(ただし子ども番組でジャンクフードの宣伝を禁ずるディズニーの最近の計画に追随する者が増えれば、このような広告も廃れていくことが期待される)

研究では砂糖入りの飲み物と子どもの肥満の関係性が証明されたため、アメリカの国および地方の健康、医療、消費者に関する様々な団体、自治体の保健所、著名人らが代表団を作り、公衆衛生局長官に対し清涼飲料水など砂糖入り飲料の悪影響に関する報告を発表するよう要請している。そして、1964年に公衆衛生局長官が発表した健康と喫煙に関する報告書が与えたと同じような強い影響力を今回の報告書が与え、清涼飲料水による健康被害を減らすことを様々な団体が願っている。

小児科学誌「Pediatrics」に掲載された研究によると、学校でのジャンクフードと砂糖入り飲料の販売を厳しく制限する法律があれば、子どもの肥満を抑えるのに役立つかもしれないと指摘している。

また、小児科学誌「Pediatrics」に掲載された研究によると、学校でのジャンクフードと砂糖入り飲料の販売を厳しく制限する法律があれば、子どもの肥満を抑えるのに役立つかもしれないと指摘している。この研究はアメリカ40州の6300人の生徒のデータを分析し、公立の学校の自動販売機や売店で食事の時間以外に販売される飲食物に関する州の法律をデータベースで調べたものである。その中では砂糖や脂肪の制限など特定の栄養に関する条件が定めてある法律を強制力のある法律とみなしている。

研究結果は、常に強制力のある法律に最大の影響力があることを示している。例えば身長150センチ、体重45.4キロの生徒が強制力のある法律を持つ州に住んでいれば、体重増加は他の州より998グラム少なかった。 この違いは小さなものに思えるかもしれないが、肥満の専門家によれば、ごくわずかな違いであっても重要なのだという。

厳格な政府による過干渉?

では、あなたはどうお考えだろうか。

立法の動きは「過保護国家」のようだという事実に目をつむってもよいほど、この問題は重要なものだろうか。あるいは、コメディアン・社会評論家ジョン・スチュワート氏のようにもっとひどい言い方をすれば、そんな法律は「厳格すぎる政府による過干渉」だろうか?これは彼が風刺ニュース番組「ザ・デイリー・ショー」で熱弁をふるっていた話題である。ニューヨークには不健康な食品など市内のありとあらゆるところで見られるにもかかわらず、ビッグサイズの清涼飲料水を制限するなど偽善だというのだ。

私たちはこう問うべきだろう。これがそんなに悪いものなら、食品産業がこういった、人の健康を脅かす「飲食可能な物質」(作家マイケル・ポーラン氏の表現)を作ることを一切禁止してはどうだろう?

アメリカ政府がジャンクフード製造に欠かせない添加物(ブドウ糖果糖液糖や水添植物油など)の生産支援に何十億ドルも費やすとは、なんと愚かしく非生産的なことだろう。

また別の研究ではアメリカ政府はジャンクフード製造に欠かせない添加物(ブドウ糖果糖液糖や水添植物油など)の生産支援に何十億ドルも費やす一方で、生鮮食品にはそのほんの一部程度しか拠出していないということが分かった。これはひどい矛盾であり、愚かしく非生産的ではないだろうか。

明るい面に目を向け、反ジャンクフード法ができれば資源集約的食料品を断つ最初のステップになると期待すべきだろうか。

それ以上に、もしかしたらこれは世界的な菜食主義へ向かう動きを示しているのだろうか。そういう動きを理想的とみなす人々もいる。新しいスウェーデンの報告は、今夏のアメリカの深刻な干ばつのため今後予測されるトウモロコシ、大豆、小麦の価格急上昇によって私たちはより厳しい現実を味わうことになるだろうと述べている。

「分析は、現在の傾向がこのまま続けば2050年に予測されている人口分の食料を育てる畑に十分な水が行き渡らないだろうという事を示している」とストックホルム国際水協会の「Feeding a Thirsty World (喉が渇いた世界を養う)」報告書は述べている。「ただし、動物ベースの食料がカロリー総量の5%以下に抑えられれば、十分な水はある」

上記の様々な事情を考えると、あらゆる選択肢についてじっくり議論すべき機は熟している。皆さんのご意見をお聞かせ願いたい。

翻訳:石原明子

Creative Commons License
討論会2.0: ジャンクフードは違法にすべきか by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDerivs 3.0 Unported License.

著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリスト。グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。