討論会2.0:最後の1匹のクロマグロ

名高いタイセイヨウクロマグロ(日本ではクロマグロあるいは本マグロとして知られている)の資源量が枯渇寸前だということは、現在よく知られている。

確かに、柔らかくて脂の乗った肉を持つこの海洋生物は美味だ。最も称賛される部位は脂肪分の多い腹部からとれる大トロで、刺身を味わう際の最高の逸品である。

ポール・グリーンバーグ氏は「Four Fish」(フォー・フィッシュ)を著した。数種の魚が世界中を席巻する状況についての著作だ。彼もまた、私たちの多くと同様に、よくないことと知りながらもマグロの誘惑に屈服してしまったことがある。

グリーンバーグ氏や他の人々は、マグロはクジラではないという点が問題だと強く主張している。つまり、世界の圧倒的な傾向として、クジラを食べるのは文化的に受け入れらないが、マグロを食べるのは文化的に受け入れられているのだ。

では、どうしたらよいか?私たちは人生のささやかな楽しみを公益のためにあきらめればいいのか?そして、そうすれば状況は変わるだろうか?

こういった魚についての新たな物語は、テクノロジーに関する寓話として読むことができる。かつて捕食者と獲物の間には安定した関係が成立していたのに、その関係が新たな「機械」によって死に至る不均衡な状態に変えられてしまった。この解釈は間違えているというよりは、誤解を与えやすい。全米ライフル協会のお気に入りのフレーズを拝借すれば、魚を殺すのは人工集魚装置(FADs)ではなく、人間なのだ。(エリザベス・コルバート、「The New Yorker」誌)

私たちがクロマグロを食べなければ、地球上のどこかでスシ愛好家が食べるに違いない。それが現状だ。そしてその人達は、世界のクロマグロ消費量の何と70~80%を占める国、日本の人々である可能性が高い。世界自然保護基金が日本の消費者たちにタイセイヨウクロマグロを守る活動への参加を呼び掛ける新しいキャンペーンに成功したとしても、結局のところ、クロマグロは巨大企業の強欲な手中に落ちてしまうのではないだろうか?

「私たちはクジラに対する意識を変えたようには、マグロに対する意識を変えないのかもしれない。しかしマグロの問題を完全に解決したいなら、クジラの時と同じように意識を変えていかなくてはならないのだ」とグリーンバーグ氏は嘆く。

今週の討論会2.0では、皆さんに次の質問をしたいと思う。人類はクロマグロを救うことができるだろうか?あなたはクロマグロを食べるのをあきらめるだろうか?さらに、他の人達にも食べないように勧めるだろうか?もしそうなら、どんな方法で?

翻訳:髙﨑文子

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著者

マーク・ノタラスは2009年~2012年まで国連大学メディアセンターのOur World 2.0 のライター兼編集者であり、また国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)の研究員であった。オーストラリア国立大学とオスロのPeace Research Institute (PRIO) にて国際関係学(平和紛争分野を専攻)の修士号を取得し、2013年にはバンコクのChulalpngkorn 大学にてロータリーの平和フェローシップを修了している。現在彼は東ティモールのNGOでコミュニティーで行う農業や紛争解決のプロジェクトのアドバイザーとして活躍している。