ダミアン・キャリントン氏はガーディアン紙の環境部の責任者を務めている。
天才的アイディアか、それとも馬鹿馬鹿しい思いつきか。WWF(世界自然保護基金)の内部で、新しいファイル形式が作り出された。PDFファイルに似ているが、決定的に違うところが1つだけある。このファイルは印刷することができないのだ。ファイルの拡張子はもちろん「.wwf」である。
このようなファイル形式が考え出された理由は単純明快だ。WWFの話では、世界では毎日100万トンの紙が使われている。
「生産の拡大と製紙用材木の伐採が、残された最後の天然林とそれに依存して暮らす人々や野生動物を脅かしています。また、紙に対する世界的需要は、気候変動にも大きな影響を与えているのです」
だから、使う量を減らせばいい、とWWFはいう。wwf形式の文書を作るためには、無料のソフトウェアをインストールする必要があるが、PDF文書を読むことができれば大抵その文書を開くことができる。このアイディアはWWFドイツによって考え出され、12月に公開された。
予想にたがわず、印刷業界はこれをまったく歓迎していない。
このファイル形式については、私もいくつか疑問がある。これには、デジタル著作権管理に関するものの中でも最悪の要素が含まれている。利用者は自分自身の判断で印刷を行うことができるほど賢明ではない、というWWFの考えを示しているととれるのだ。
もし持続可能な管理が行われている森林の木から生産された紙を使うなら、印刷をすることで実際に森林の木々の維持に貢献しているのだ、と主張することもできるかもしれない。最近WWFは「Check your paper(自分の使う紙をチェックする)」というサイトを立ち上げた。このサイトでは、自分が使う紙の由来をチェックすることができる。
最後に、いずれにせよ説得力のある証拠を目にしたことはないのだが、しかし仮にコンピューターの画面上で文書を長々と見つめることになった場合、そのために電力を消費した結果排出される二酸化炭素の量は、紙を印刷した場合に生じる二酸化炭素の量よりも多くなるのではないだろうか。WWFの話では、誰もこの新しいファイル形式を使うことを強制されるわけではない。また、このプロジェクトは意識の向上に役立っているということだ。
WWF UK Forest and Trade Network(WWFイギリス森林通商ネットワーク)のマネージャー、ジュリア・ヤング氏は次のように話した。
「WWFは新たに考案したファイル形式を中心に据え、「Save as WWF―Save a Tree」(wwfで文書を保存して木を救う)計画を始動させましたが、これはネット上でもそれ以外の場所でも注目を集めています。この計画の開始にあたって紙の使用に関するWWFの世界的な方針を充分にお伝えしていなかった、ということは申し上げた方がいいでしょう。WWFは責任ある紙の使用を支持していますし、紙の使用すべてに反対しているわけではありません」
「紙の使用をもっと持続可能に、そして公平なものにするという取り組みは手付かずです。WWFはその達成のために事業会社と協力しながら全面的に尽力いたします」
結局のところ、天才的なアイディアか、それとも馬鹿馬鹿しい思いつきか? わたし自身は、後者に傾きつつある。
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この記事は、guardian.co.uk.上のデーミアン・キャリントン氏による環境ブログに掲載されたものです。
翻訳:山根麻子
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