テロは憎悪からくるのか?子どもとテロに関する誤った社会通念

世界では軍縮、貿易、移住をはじめ、数多くの問題について議論の両極化が進む中、コンセンサスが得られている問題もあるという事実は忘れられがちだ。2月12日は、それらのひとつである「子ども兵士の使用に反対する国際デー」であり、武力紛争における子どもの使用を禁止する国際条約が発効した日を記念して設けられたものだ。現時点で約170カ国が条約に署名している。

このように、子どもを兵士として用いるべきではないことがほぼ国際的なコンセンサスになっているにもかかわらず、全世界で数十万人の子どもたちが、今も非国家武装集団と関わっている。広範囲に及ぶサポートの役割を果たし、時には前線で戦闘に加わるこうした子どもたちは、極度の暴力や強制、苦難にさらされている。

武装集団が子どもを勧誘すること自体は、新しい現象ではないが、武装集団に関わっている子どもたちの取り上げ方や取り扱い方は、近年大きな変化を見せている。20年前、武装集団に加わっている子どもは「被害者」と見られていた。現在、こうした子どもたちは「安全上の脅威」として語られることが増えている。この区別は、子どもたちの動機と大きな関係がある。

動機は愛か、憎しみか

従来、ある程度の自発性を持って、すなわち脅迫や強制なしに武装集団に加わる子どもたちは、反社会的な傾向やイデオロギー、さらには怒りや憎悪、復讐心などのマイナスの感情に突き動かされていると考えられてきた。しかし、国連大学による新たな研究は、この広く信じられてきた考えに疑問を投げかけている。

この研究によると、子どもが武装集団に加わるのは主として、向社会的でプラスの理由からだ。例えば、集団間の紛争に加わる人々は、主に敵対集団に対する憎悪よりも、自集団に対する愛情に突き動かされている。この「集団内の愛情」は、集団の生存と繁栄を助ける行動の動機となるが、それが「仲間か敵か」という力学を作り出せば、「仲間」を助ける行為が「敵」を傷つける行為につながることが多くなる。

人間は生来、社会的な生き物であり、意味のある集団への帰属という基本的な必要性を持っている。人間には、生きることに意味を感じたいという欲求もある。人間が不確実性に直面したり、屈辱や剥奪を感じたり、意義が失われることを予期したり、自分が死すべき運命にあることを思い知らされたりする時、この帰属と意味を感じる必要性は一気に高まる。これらはいずれも、紛争地帯に当たり前に見られる状況だ。既成のコミュニティやアイデンティティ、目的意識を提供する武装集団は、若者にとって特に魅力的に映る可能性がある。多くの武装集団の勧誘担当者は、この可能性をうまく利用しているのだ。

改善策

こうした研究結果には、重要な政策的含意がある。暴力的過激主義を予防したり、対抗したりするための既存の取り組みは、暴力的集団との関わり合いの原因が反社会的傾向にあるという想定に基づくものが多い。よって、このような取り組みは、子どもや若者が暴力的集団と関わらないようにするための対策として、向社会性を育て、共感と市民としての価値観を教え込むことをミッションとしてきた。しかし、このような取り組みは見当違いとなる公算が大きい。子どもや若者が暴力的集団に引きつけられる本当の動機に対応していないからだ。

国連大学の研究は、多くの子どもに高い向社会的動機が備わっていることを示しているため、この領域にさらに照準を絞っても、大きな成果は得られない可能性がある。しかも、こうした取り組みは、守ろうとしている子どもたち自身に汚名を着せてしまうなど、マイナスの結果を生みかねない。

国際社会では、いかにしてテロリストや「暴力的過激派」とみなされる武装集団による子どもの勧誘を効果的に防ぎ、このような集団との関係を断つことができないでいる子どもたちに対応すべきか、という問題ついて議論が続いている。今日の紛争における拡大する子どもの勧誘と使用に対処する実質的な必要性はあるが、国際社会は思慮深く、慎重に対応を進めるべきだ。

政策や計画の策定においては、ニーズや課題、動機に関して子どもや若者とのやり取りを通じて得られた声を参考とすべきである。計画を策定、実施する際には、それが悪影響を与える可能性を認識、緩和せねばならない。子どもと若者に関する国際的な議論では、これを我々の安全に対する脅威としかみなさない社会通念を捨てるべきだ。

こうした集団への子どもの取り込みを予防し、すでに関与している子どもの離脱を促そうとする場合、コミュニティと社会全体に貢献したいという子どもたちの欲求を認識し、満たすことのできる有意義なプラットフォームを見つけなければならない。

子どもと若者は我々の資産である。その向社会的な傾向をうまく活用できれば、我々皆にとってプラスの財産となるだろう。

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この記事の初出はThe Hillに掲載されたものである。

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著者

シボーン・オニールは、国連大学ニューヨーク事務所武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)プロジェクト・マネジャー。以前は、マリとパレスチナで、国連地雷対策サービス部(UNMAS)に戦略的な指針とプログラム支援を提供していた。オニール氏は、安全保障と諜報の分野でともに経験を積んでおり、9.11同時多発テロ事件の直後には、ニューヨークとニュージャージーで新設された州安全保障庁に勤務し、テロ攻撃を察知、予防し、その被害から立ち直る能力の構築に努める州政府と地方政府を支援した。その後は、議会調査局の国内安全保障・情報分析官も務め、新たに生じつつある脅威の特定や、議会が採択しうる政策対応の評価も行っている。

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