セイヨウトリネコの立ち枯れ病対策に フェイスブックのゲームが登場

イギリスのセイヨウトリネコの森を、最近猛威を振るい始めた菌類による被害から守ることは、実は楽しい活動になり得る。それは植物学者が考案したコンピューターゲームの成功にかかっている。

フェイスブックの利用者なら、サイトにログインし、遺伝的変異体の発見のために解析力と知力を役立てる非常に大規模な実験に参加することが可能だ。Chalara fraxinea(クララ・フラキシニア)という菌類が引き起こしたセイヨウトリネコの立ち枯れ病への反撃に力を貸すことができる。このゲームのプレーヤーは、科学者たちが蓄積した遺伝子データに関連したパターンを画面上でマッチさせる。もし数千人がゲームに参加すれば、病気への抵抗力を持つ木の品種改良のプロセスを、50年あるいはそれ以上から、10年あるいはそれ以下に短縮できる可能性がある。

イギリスのセイヨウトリネコは広い範囲でこの病気の被害を受けており、イギリスに残る数少ない古代林の一部は深刻な危機に直面している。感染した木がイギリスで初めて発見されたのは昨年の秋だったが、セイヨウトリネコの立ち枯れ病は恐らく数年前からイギリスで生じていたと考えられる。1990年代にリトアニアとポーランドで発生したのを皮切りに、すでに北ヨーロッパ各地にまん延している。デンマークでは、この病気によって半数以上のセイヨウトリネコが広い範囲で全滅した。

この病気がイギリスに壊滅的な被害をもたらす可能性が懸念されている。イギリスでは、セイヨウトリネコは古代林で最も重要な種の1つである。イギリスの一部の森林には樹齢1000年のセイヨウトリネコが生育しており、こうした森林は萌芽更新(定期的に幹を伐採し、萌芽を育てて森林の若返りを図る手法)を行うことで生かされてきた。

現在のところ、病気の進行を監視すること以外に科学者ができることはほとんどない。しかし、病気への抵抗力あるいは耐性を示すセイヨウトリネコの個体群の中から遺伝的変異体を探し出す研究が、複数の研究施設で行われている。そうした特性を付与する遺伝子を特定できれば、イギリスのセイヨウトリネコと、抵抗力あるいは耐性を持つ品種を掛け合わせることが可能になり、広い範囲に生育するセイヨウトリネコの個体群を救うことができるかもしれない。

抵抗力を示す可能性が最も高い個体を見つけるために、科学者らは何万もの遺伝子をふるいに掛けなければならない。ケンブリッジ大学のセインズベリー研究所の研究者らは、ほとんどのセイヨウトリネコがこの病害で死滅してしまったデンマークでいまだに枯れ死んでいない100本の木を特定した。今後、これらの木と他の個体のゲノムを比較し、病害菌への抵抗力をコード化する可能性が最も高い遺伝子を特定する予定だ。

そのためには、膨大な量のデータをコンピューターで高速処理し、有益である可能性が最も高いDNA配列のパターンを特定しなければならない。しかしこうしたパターンマッチングは大抵、コンピューターと同じくらい正確に人間が行うことが可能だ。目で見て即座に認識したり却下したりする人間のパターン分析の能力に関連しているからだ。

科学者たちはコンピューターゲームの専門家と協力し、無料のアプリを開発した。このアプリは、有益である可能性が最も高い遺伝子配列を特定するために、人々にパターンを比較してもらう。ゲームはFraxinus(フラクシナス)と呼ばれ、ラテン語でセイヨウトリネコを意味するFraxinus excelsior(フラクシナス・エクセルシオール)に由来する。パズル方式のゲームで、プレーヤーは画面に映ったカラフルな葉の形をしたコマの配列を、サンプルの配列に近づけることで点数を稼ぐ。サンプルに合致した配列を作ると最高得点となり、合致した配列数を競い合うというゲームだ。

「とても面白い時代です」と、ゲーム制作にあたって助言を行ったフォレスト・リサーチのジョーン・ウェバー氏は語った。「私たちは病害菌に対処しなければなりませんが、過去にはなかった方法を自由に活用することができるのです」

このゲームはフェイスブック上でwww.apps.facebook/fraxinusgameから見つけることができます。

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この記事は the Guardian紙に発表されたものです。

翻訳:髙﨑文子

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