世界を変える50冊

得てして持続可能性に関する本は、読む価値はあるものの退屈と思われがちである。そんな中、大地への哀歌からファーストフード非難に至る「一流」と呼ばれる書物の数々は、このジャンルに冒険心や活力を与えようとしている。

レイチェル・カーソンの「沈黙の春」やジョージ・モンビオットの「ヒート:燃える地球をどう救うか」のように、破壊へ警鐘を鳴らすものから様々な解決法を提案するものまで、その内容は多岐に渡る。ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの」は歴史に、E.F. シューマッハーの「スモールイズビューティフルー人間中心の経済学」は哲学に解決を見出す。しかし1965年のラルフ・ネーダーの「どんなスピードでも自動車は危険だ」や、2007年のニコラス・スターンによる影響力のある報告書「気候変動の経済学」など、その多くは資本主義経済に焦点を合わせている。

改善を提案するものとしては、自然を経済の手本とするジャニン・ベニュスの「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」、さらに現在の経済システムを自然保護に応用するジョナサン・ポリットの「Capitalism As If the World Matters」(地球にやさしい資本主義)などがある。

ケンブリッジ大学の持続可能リーダーシッププログラム(CPSL)が出版した「持続可能性ベスト50冊」は、ポール・エーアリックの「人口爆弾」や、社会的平等や環境を金銭的利益と同等と捉える経済活動について書かれたジョン・エルキントンの「Cannibals With Forks」(フォークを持つ人食い)などに見られるように、多種多様な思考動向を取り上げている。また、エリザベスC.エコノミーの「中国環境リポート」を見てもわかるように、人々の気候変動に対する懸念は増幅しているのだ。

CPSL所長のポリー・カーティス氏は、『持続可能性ベスト50冊』の前書きにこう記している。CPSLメンバーの企業時代の元同僚たちによって選定されたこのリストは、“私たちが直面している社会的、環境的、倫理的課題に対する世界最高の分析集であり、創造性に富んだ解決策”なのだと。

しかし“最高の”リストの作成には批判が付き物だ。まずリストは、その選者をよく反映している。北半球の国々の裕福な男性である。リスト入りした61冊のうち、女性の著書は10冊のみにとどまる。また、選ばれた本のほとんどは現行のシステムの改革や変更を訴えるものばかりで、例えばヴォルテールの「カンディード」のように想像力に富んだ提案について書かれた書籍は除外されている。

リストの本が現代的すぎると論じる人もいるだろう。1949年のアルド・レオポルドの「野生のうたが聞こえる」以前の書物や、トマス・マルサスやチャールズ・ダーウィンらが入っていないからだ。また、エドワード・ウィルソンの学問的情熱やロマン派詩人よりも、委員会の報告書を好むことから、リストを味気ないと言い出す人もいるかもしれない。

ベテラン環境保護主義者のトム・バーク氏はバーバラ・ウォードとルネ・デュボスの共著「かけがえのない地球」といった多くの重要な書籍がリストから抜け落ちていると主張する。「そのほかにも、非常に重要なものとして1977年にアメリカのジミー・カーター大統領がまとめさせた『西暦2000年の地球』があります。この報告書を読むと、当時すでに多くのことが分かっていたと気付き恐ろしくなります」とバーク氏は語る。「シューマッハーよりも優れているイバン・イリイチや、初めてテクノロジーを解決策に組み込んだバリー・コモナーもまたリストから外れています。私が選ぶのであれば、環境維持開発に対するすべての考察のきっかけを作った「Blueprint for Survival」(生存のための設計図)も加えたでしょう。著者の文章が上手いからではないですが、核戦争の影響を描写したジョナサン・シェルの「地球の運命」もまた含まれるべきだと思います」

一方バーク氏は、「人の信頼につけ込んだ詐欺で、何一つとして事実に基づいていない」として、ビョルン・ロンボルグ による批判的な書物「環境危機をあおってはいけない」は“絶対に”リスト入りすべきではないと言う。

『持続可能性ベスト50冊』のリストはこちらからダウンロードできます。

この記事は2010年1月27日、グリニッジ標準時11時58分にguardian.co.ukで掲載されたものです。

翻訳:上杉 牧

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