ヒロシャン・ヘチアラックチは、土木工学教授でドレスデンの国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)廃棄物管理専門家。廃水のリサイクルと有機廃棄物の堆肥化を中心に、廃棄物の資源としての持続可能な活用を専門に研究している。
今週(10月22日〜23日)、関連部門から1,000人を超える出席者が横浜に集まり、循環経済の経済、社会、環境への便益をどのように活用すべきかについて議論する。この「世界循環経済フォーラム(WCEF)」は、政策立案者や学識者だけでなく、ビジネスや産業界の中心者も集まり、環境とビジネスの両方にとって利となる解決策の創出を促すという特徴がある。
「循環経済」というコンセプトは、より持続可能な都市と社会を達成する手段として関心が高まっている。既に利用可能な天然資源に大きな負担を課しているが、今世紀半ばまでに世界人口は100億人に達する見込みで、今よりさらに25億人増えると推計されている。さらに、世界の都市は現在、およそ20億トンの固形廃棄物を排出しているが、この量は2050年までに70%増大すると予測されている。
これらは、持続不可能かつ維持困難な未来図を描き出している。では、循環経済とはどのようなもので、どのような助けとなり得るのだろうか。
従来の消費経済は直線型だ。天然資源を「取る」ことで、自分たちが使うものを「作る」とともに、余ったものを「廃棄する」。一方、循環経済は、自然から既に取り出された素材の利用を最適化し、「取る」ものと「廃棄する」ものの削減に主眼を置く。
日本を含め、循環経済を達成するための取り組みのほとんどは、リサイクルや廃棄物管理という、循環サイクルの「廃棄する」に焦点を当ててきた。これは重要な点ではあるものの、サイクルが必要とする部分の半分にすぎない。同じく重要であるもう半分の「取る」に注目すること、すなわち、そもそも自然から取り出す素材の削減が必要である。
天然資源の観点から見ると、従来モデルの最大の問題点は、自然から無限大に「取る」ことができる我々の能力にある。より多くの石油を採取し、より多くのプラスチック(一例として)を作ることができる限り、我々はそうし続けるからだ。
限界が来るまで物事を真剣に考えないのが人間の習性だ。よって、循環経済を達成するためには、限りある天然資源の開発を制限すべく、厳格に法律で制限する以外にない。我々は自由の悪用に長けている一方で、限界に直面した際に革新的な代替策を見出す能力も備えているためだ。
その例として、シンガポールを見てみよう。シンガポールは、世界でも有数の水ストレスを抱える国であり、消費・使用できる水の量は極端に限られている。これを克服するために、シンガポールは下水二次処理水回収プロジェクト(NEWaterプロジェクト)を実施し、廃水を効果的に捕集、処理するとともに、これを飲み水として再利用している。
ルワンダやオランダ、米国も、社会が課された制約に適応できた事例がある。
ルワンダでは、2008年のビニール袋使用禁止を受け、生分解性バッグ(微生物によって分解され、環境へ悪影響を与えない性質でできたバック)を製造する新たな産業が生まれ、繁栄した。10年後の今、ルワンダは地域をリードする生分解性バッグの製造国だ。オランダでは2017年に、政府がすべてのガソリン車とディーゼル車を2030年までに禁止するという計画を発表し、電気自動車の売上が急増した。また、シアトル市が米国の大都市として初めて使い捨てプラスチック製ストローを禁止すると、堆肥化と再利用が可能なストローへの需要が一気に増大した。
「循環経済」は現在、国際社会の関心を集める流行語となっているが、このコンセプトの意味をすべて理解するには、長い道のりが残っている。素材のリサイクルと再利用に向けた取り組みは継続すべきだが、厳格な法的限度の設定により、「取る」部分の削減へ関心を向ける必要がある。
全世界の社会は既に、このような制限が、イノベーションと創意工夫によって対処でき、また、すべての人にとって、さらなる持続可能な未来へとつながると立証している。
今週、横浜で開催される「世界循環経済フォーラム(WCEF)」が、完全な循環に焦点を当てることで、循環経済の真のコンセプトとその導入を強化するプラットフォームになると期待している。