命と地球の守り手

女性は開発途上諸国の農業労働力の43パーセントを占め、毎日飢餓と闘っている。本稿では、国際連合食糧農業機関(FAO)のジョゼ・グラジアノ・ダ・シルバ事務局長が、最も脆弱な国における農業システムでの男女間の格差を埋めるために、女性に権利と手段を与えることは最も重要な食料安全保障政策の1つであり、政府や国際協力機関が実施可能であると説く。

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世界各地で、特に地球で最も貧しい地域の女性は、時としてあらゆる困難に見舞われながらも、日々生まれ変わる生命力を象徴している。

例えば農村部の女性は、開発途上諸国の農業労働力の43パーセントを占める。飢餓との闘いは、彼女たちが毎日取り組んでいる課題だ。

女性は、私たちの時代において最も破壊的な闘いの顔の見えない志願兵である。しかし逆説的なことに、それは最も簡単に勝利することができる闘いである。地球に住む人々の8人に1人、すなわち約8億7000万人を苦しめている飢餓との闘いだ。

世界中の何百万もの家庭では、食べ物が確実に食卓の上に用意されている状況を確保するために、女性が日々の決断を下していることが多い。

女性に権利を与え、女性が担う重要な役割を正当に評価することは、政府と国際協力機関の責任である。すなわち、女性が役割を全うし続けるために必要な権利、政策、手段、資源を提供するということだ。

食料安全保障と栄養摂取における女性の中心的な役割は、人間の最初の1000日(受胎から2歳の誕生日を迎えるまでの期間)から始まる。この期間が人間の発達を永遠に決定付ける。

児童の年間死亡数250万人という恐ろしい数字を、女性は(良くも悪くも)変えることができる。

家族の食卓に食べ物を載せるということは、母性本能を超えた範囲にまで女性の役割を拡大する。つまり女性は労力と人生経験を、土地を耕すことから作物を収穫することにまで投入するのだ。

こうした役割は、特にアフリカで意味を持つ。アフリカは21世紀の飢餓との重要な闘いが繰り広げられている場所であり、およそ2億3900万人、すなわち全人口のうち23パーセントの人々が飢餓に苦しんでいる。

アフリカの全人口のうち60パーセントの人々が暮らす農村地域では、悲劇への抵抗と女性の重要性が最も顕著に表れている。

アフリカの農村部では4世帯に1世帯の割合で、女性が家長である。アフリカ南部では、この割合が45パーセントとなる。

戦争、民族紛争、移住、環境破壊は、近年の農業労働力市場における女性の絶対的かつ相対的な存在を浮き彫りにすることとなった。

アフリカ北部の農業労働力市場への女性の参加率は1980年以来、30パーセントから43パーセントに急増した。一部の国では女性が過半数を占めており、例えばレソトでは農業労働力の65パーセント以上は女性である。

家族を食べさせ、面倒を見るという役割以外に、女性は新しい責任を負うようになった。畑や家庭や社会で、女性が男性の2倍、時には3倍の労働を引き受けているという事実を、男性家族は必ずしも認識しているわけではなく、また男性が労働を分担しているとも限らない。こうした状況がしばしば女性の社会的地位向上をさらに難しくしている。

逆説的だが、世界各地で土地の法的所有権取得に対する規制に苦しんでいるのは女性である。そのため、女性が社会福祉に傾ける最大限の努力が最も効果を発揮するために必要な信用取引や資金調達を、女性が利用しにくい状況が生じている。

最も脆弱な国における農業システムでの男女間の格差を埋めるために、こうした権利と手段を女性に与えることは最も重要な食料安全保障政策の1つであり、政府や国際協力機関が実施可能である。

経済的および社会的発展における女性の中心的役割を国に認識させ、その役割に必要な手段と権利を女性に与える政治的合意を構築することは、飢餓との闘いにおいて欠かせない道のりとなるだろう。

飢餓との闘いだけではない。母として、姉妹として、娘として、妻として、そして多くの場合、家庭の唯一の支え手として、女性は社会正義を達成する闘いの最前線にいるのだ。

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この記事は インタープレスサービス(IPS)のご厚意により転載を許可されたものです。IPSはグローバルな通信事業を柱とした国際通信機関であり、開発、グローバリゼーション、人権、環境にまつわる諸問題に関する南半球や市民社会からの意見を取り上げています。

翻訳:髙﨑文子

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