2010年以来、飲み水と衛生へのアクセスは人権として確立されている。その一方で特にサハラ以南のアフリカとアジアでは、ミレニアム開発目標を達成し、さらに前進する取り組みは遅れている。水と衛生へのアクセスの権利担当の国連特別顧問のカタリーナ・デ・アルブケルケ氏は、こうした権利の「漸進的実現」という概念を導入した。言い換えれば、各国政府は法的および制度的枠組みを確立する方向に動くべきであり、また、弱い立場に置かれた人々のための公平性と手段に重点を置いて、水と衛生へのアクセスを確実に拡大し続けるべきである。
国の義務と地域による自給をめぐって議論が行われている。自給はいわば政府の責任逃れを許してしまうという主張がある一方で、最終的に誰がサービスを提供するのかに関係なく人々はアクセスを必要としているという主張がある。
もちろん、自給において公平性は必ずしも確保できるわけではなく、先行投資に必要な資本は大抵、法外な額である。ある意味で、このような両極化した意見は単純に、連続した供給過程の両端であり、実際には、地域社会による水供給が確立されて人々がアクセスできるようになり、時間の経過と共に地方自治体による管理体制に組み込まれるという成功事例(そして失敗事例)が存在する。成功すれば、このモデルは水と衛生への権利の漸進的実現を通じて一時的な溝を埋めることができる。
国連大学(UNU)の2つの研究所、すなわち国連大学水・環境・保健研究所( UNU-INWEH)と国連大学マーストリヒト技術革新・経済社会研究所(UNU-MERIT)による新たな共同 論文は、マイクロファイナンスの混成型メカニズムを探究している。このメカニズムは地域社会のネットワークと中規模融資のための第三者による担保をベースに、小さな地域社会への水と衛生の供給のためのさまざまな財政モデルを提供する。
水のための協同組合員にインセンティブを与えるビジネスモデルを伴った、低コストでの資金調達へのアクセスは、小さな地域にとって経済的に理にかなうとして示されている。こうした地域社会の水関連の組織を地方政府の体制に組み入れれば、権利の漸進的実現の一環として、持続可能性と政府による最終的な管理のためのメカニズムが成立する。
より詳しい情報や報告書をダウンロードするには、UNU-INWEHあるいはUNU-MERITのウェブサイトをご覧ください。
翻訳:髙﨑文子