ハワイのクリーンエネルギーへの挑戦

世界の多くの島々同様、ハワイ諸島もまた、そのエネルギー供給において石油に大きく依存する地域である。ハワイ州政府の発表によれば、州のエネル ギー需要の85%は石油の燃焼でまかなわれている。ハワイとアメリカ本土の大きな違いは、ハワイは大部分の電力を石油で発電しているという点である。アメ リカ全体では、石油による発電が電気需要のわずか3%を占めるにすぎないが、ハワイのそれは80%近くにも達する。

石油への依存は各地の島に共通して見られる特徴である。例えば、フィジーでは電力の50%が石油によって発電されており、プエルトリコでは90%に も及ぶ。石油による発電が島々で共通して見られるのは、その輸送が容易であり、同時に確実なエネルギー源となり得るからである。

世界のモデルとしてのハワイ

米国エネルギー省は最近、国内で最も石油依存度の高いハワイのエネルギー・ポートフォリオを 転換し、「例外的な離島」であったハワイを、アメリカそして世界の「モデル」地域とする方針を掲げた。国内でも有数の高い電気料金を抱える一方、太陽光、 風、地熱、海洋エネルギーなど多様な再生可能エネルギーが豊富に期待できるハワイは、クリーンエネルギー関連プロジェクトの試験的および実践的実施に理想 的な場所として選ばれた。

2008年1月、米国エネルギー省およびハワイ州政府は、ハワイ・クリーンエネルギー・イニシアティブ(HCEI) を立ち上げた。HCEIは、2030年までにハワイのエネルギーの70%をクリーンエネルギーに転換する、クリーンエネルギー経済への移行を目指してい る。電力に関しては、2030年までにエネルギー効率を30%向上し、再生可能エネルギー利用を40%増やすことを目標にしており、これらのゴールは州法 となる予定だ。

ハワイ州政府と州最大の電力会社であるハワイ電力会社(Hawaiian Electric Company)は、自主協定を締結し、多様な再生可能エネルギーを協力して拡大してくことに同意した。協定には、主要なエネルギー源である大規模な風力 発電地帯をラナイ島およびモロカイ島に建設し、最も人口の多いオアフ島で風力発電を活用する計画が盛り込まれている。

再生可能エネルギーが豊富な人口の少ない島々から、オアフ島の中心都市であるホノルル(住民の約4分の3が集中している)に海底ケーブルを使って送 電するという計画は、1970年代に初めて考案された。30メガワットの発電能力を持つ地熱発電所が実験プロジェクトとして建設され、その後20年以上に わたって稼動している。しかしながら、地熱発電は当初予定されていた規模(約500メガワット)にまで拡大されることはなかった。その理由の一つは、地熱 を利用した施設がハワイの文化および宗教的な信仰を侵害していると考えられたためである。

現在のケーブル敷設計画も同様に、費用および環境負荷に関する問題に直面している。また、風力発電機が地元コミュニティに与える影響も懸念されている。このような議論によって、大規模な地熱エネルギー利用と文化の関係が見直された。

バイオエネルギー基本計画

ハワイ州政府は最近、バイオエネルギー基本計画を 完成した。従来の化石燃料と同様、バイオエネルギーも確実なエネルギー源となり、島と島の間を簡単に輸送できるという点で魅力的である。ハワイのサトウキ ビ栽培は150年の歴史を持ち、そのパイナップル輸出量はかつて世界トップクラスを誇った。しかし、これらの農園は20世紀後半になって急速に減少し、カ ウアイ島の最後のサトウキビ農園が2010年8月に閉鎖される予定である。

使用されなくなった農業用地を、現地のバイオ燃料産業で再利用する可能性が検討されている。しかしながら、サトウキビから採れるエタノールなど、現地のバイオ燃料原材料は費用が高いため、 政府から大規模な援助を得ない限り推進が難しい。例えば、2006年には自動車燃料にエタノールを10%混ぜることが義務化されたが、このエタノールも今 日まで輸入されたものが使われている。このように、バイオ燃料に関する初期の議論および支援は、輸入する燃料源の種類が入れ替わっただけの現状に対する抵 抗感から、その勢いを失ってしまった。

エネルギーの選択肢

屋上付物件の多いオアフ島では、太陽光発電の潜在需要が高いと 考えられている。太陽光プロジェクトを促進するため、ハワイ州は、太陽光発電装置の設置費用の30%を補助する連邦政府の助成金に加え、35%の税額控除 を行なっている。しかしながら、現在ハワイでは、ネットメータリング(消費者が余剰電力を電気会社に供給した分だけ電気メーターを戻す制度)に対して1% の上限が設定されているため、消費者の売電が制限される結果、大規模な事業が妨げられている可能性がある。

しかし、ハワイ州の公益事業委員会では新たな規則が検討さ れており、電力会社が買い取る再生可能エネルギーに固定価格を設定し(フィードインタリフ制度など)、電力会社の利鞘と売電を切り離すことが議論されてい る。電力会社のインセンティブ構造をキロワット時単位の取引で収益を得る構造から、固定価格での取引へと変えていく上で、これらの取り組みは不可欠であ る。

投資家はすでにこの取り組みに目をつけており、太陽光プロジェクトの構築に最大5,000万ドル出資することを明記した同意書に最近2つの企業がサインした

「今年はフィードインタリフ制度が導入される予定であり、急速に発展するハワイの太陽光市場で競争していく上で、この共同投資計画は私たちに有利に働くと考えている」と筆頭企業の会長兼CEOは述べている。

ハワイでは海洋エネルギー利用への期待も高い。波エネルギーと海洋温度差発電(OTEC)に注目した多くのプロジェクトが現在進行中である。しかし、現時点で商業化されている事業はまだない。

輸送用燃料や技術に基準を設けるのはより曖昧な課題を提示している。一般的には地上交通の電化が進んでおり、走行距離は限られるが、電気自動車はと りわけ見込みがありそうだ。2009年の州議会では、大型駐車場に電気自動車のバッテリー充電所を設置することが義務化され、この設備を備えた初めての駐 車場が、数週間前にホノルルに初めて誕生した

これは電気自動車に必要なインフラを整備していく上で小さな第一歩である。ベター・プレイスPhoenix Motorcarsを含む複数の企業が、ハワイへの進出に興味を示している。

ベースロードの課題

他の地域同様、ハワイにとって最も大きな課題は、いかにして太陽光や風力のようなエネルギー源を既存の配電網に取り込んでいくかである。この問題は、とりわけ島のように小規模で孤立した送電システムしかない地域には深刻である。

ハワイ自然エネルギー研究所(HNEI) は、断続的に供給される再生可能エネルギーをより多く取り込むために必要な改善点を探るため、いくつかの島にモデルとなる送電網を導入し、電気自動車への 移行のための適応対策を模索している。また、HNEIは「スマートグリッド」や電気自動車、電池貯蔵など、再生可能エネルギー利用を促進する技術について もモデル事業を展開中である。

気候変動とクリーンエネルギー

ハワイ州の取り組みは主にハワイのエネルギー安全保障の向上に重点を置いているが、温室効果ガス排出量の削減も同様にHCEIの利益と考えなければ ならない。農業セクターの縮小とバイオマスの減少によるハワイのさらなる石油依存が懸念される中、1990年代前半には州の電力ポートフォリオを多様化す るための協調した取り組みが行われ、オアフ島に石炭工場が建設された。

化石燃料の燃焼が有害であるという現代の知識をもって過去を振り返れば、温室効果ガスの影響を定期的に評価することがエネルギー政策において必要不可欠であることがわかる。

多くの太平洋の島々がそうであるように、ハワイもまた気候変動の波にさらされている。とりわけ、海面上昇、海洋の酸性化、侵略的外来種による天然林 のダメージなどは深刻だ。HCEIはハワイ州に高い目標を設定し、島と石油依存との典型的な関係を打ち切ることを目指している。

翻訳:森泉綾美

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著者

マケーナ・コフマン

ハワイ大学

マケーナ・コフマン博士はハワイ大学マノア校の都市・地域計画学部の准教授であり、再生可能エネルギーと気候変動に関する環境計画および政策を専門としている。