フランス、スペイン、各地の移民女性がいかにして地域でリーダーを担うか

今日の移民の約半数を占めるのは女性である。これらの女性たちは単に男性のパートナーあるいは扶養家族としてだけでなく、仕事やチャンスを求める独立した主体として移住を行なっている。しかし、ひとたび移住先に到着すると、移民女性は社会から取り残され、権利の享受を妨げられるという状況が多く見られる。

ヨーロッパでは、移民は一般的に、投票や公職への立候補といった正式な政治プロセスから排除されている。これが意味するきわめて重要な点は、移民政策が移民の意見を踏まえることなく採択されているということである。公的な領域において集会・結社・表現の自由という普遍的な権利を定めることにより、移民は地方政治における発言権を獲得し、公式な政治と非公式な政治の格差に異議を唱えることができる。

こうしたなか、とくに女性の移民に注目する必要があるのはなぜだろうか? その理由とは、出身国と受入国の双方における不平等なジェンダー関係によって、彼女たちの政治的エンパワーメントを阻むさらなる障害が生み出されているからである。こうした障害を取り除くため、欧州各地の移民女性たちは、地方政治において自分たちの利害を代表するさまざまな組織を設立している。これらの組織を率いる女性たちは、それぞれの組織の成否を左右する重要な役割を担う存在であるとともに、移民が居住国での完全な包摂を実現するうえで不可欠となる、政治的エンパワーメントの象徴でもある。

フランスとスペインのケーススタディ

その実例が、パリとバルセロナそれぞれにある2つの移民女性団体である。パリのAction to Support Female Victims of Violence in Guinea(ギニア暴力被害女性支援活動:AFAVEG)は、ギニアで政治的動機に基づく暴力の被害を受けた女性のために医療・教育資金を募っている。その活動はパリのディアスポラの間で行われており、コミュニティにおけるギニア移民の認知度向上に貢献している。また、同団体に参加する女性たちは、その過程で政治的エンパワーメントを獲得してきた。

AFAVEGの創設者であるアイサトゥ・バーさんは、組織の成功において大きな役割を果たしてきた。具体的には、AFAVEGを率いて、ギニアのジェンダーに基づく暴力の被害者のための資金集めイベント「Day of Solidarity(団結の日)」をパリのコミュニティセンターで開催したことなどがあげられる。しかし、夜に開催された同イベントは大成功に終わり、毎年の恒例行事となるはずだったが、個人的な事情から彼女自身は翌年の組織活動を行うことができず、また、その代役に名乗りを上げる者もいなかった。このケースには、各地の移民女性団体に共通するある特徴がよく表れている。その特徴とは、組織の成功のいかんが往々にして非常に高い意欲を持った1人の個人の存在にかかっているということである。このような団体を設立するには明確なビジョンを持った力強い女性リーダーの存在が不可欠であり、その取り組みの影響を永続的なものとして根付かせるためには、リーダーを支えるエンパワーされた他の移民女性たちの力が必要なのである。

公的な領域において集会・結社・表現の自由という普遍的な権利を定めることにより、移民は地方政治における発言権を獲得し、公式な政治と非公式な政治の格差に異議を唱えることができる。

同様のことがバルセロナのケースでも言える。同地では、Association of Sub-Saharan Women Immigrants(サブサハラ移民女性協会:ADIS)という団体がアフリカから来た移民女性たちの交流の場となっている。ADISの創設者であるセネガル人女性のボンボ・ンディールさんは同協会において、人権分野での活動とともに、女性器切除を始めとする女性の健康に有害な伝統的慣行の撲滅に取り組んでいる。ンディールさんは、受入国での女性団体について、悪いイメージが付きまといがちだと指摘する。彼女自身に加え、ADISの他の創設メンバー2人が離婚経験者であることから、メンバーの夫の中には、同協会が「伝統的価値観」に敵対しようとしているのではないかと懸念する者もいる。しかし、ンディールさんは、このような場を持つことの重要性をコミュニティに訴えた。「地方自治体に属しているならば、そこに参加するのは当然のことであり、そうすることで初めて自分が完全な市民だと実感できるのです。団体の設立はその実現の足がかりとなるものであり、私たちはそのために取り組んでいるのです」

このADISとAFAVEGの事例によって明らかとなったことは、移民女性たちが、いかにして男性とは別に、自らの生活のジェンダー的側面を軸とした団体を形成するかという、その過程である。こうした団体の設立は困難を伴ともなうものであるため、強いリーダーシップの有無がその成否のカギを握る。それぞれの団体のリーダーである2人は、いずれも移住する前からすでにそうしたスキルを身につけていた。バーさんはギニアで積極的に政治に関わり、ンディールさんはセネガルの女性団体で活動していた。他方、多くの移民女性たちはリーダーを務めた経験を有していないのが現状である。したがって、リーダーとしての役割を担うために必要なスキルをより多くの移民女性に身につけさせることにより、既存の団体を強化するとともに、新たな団体の誕生を促すことができる。

移民女性がその団体のネットワークの輪を広げていくことで、彼女たちの政治的な発言力は高まる。European Women’s Lobby(欧州女性ロビー)は移民女性の加入を優先課題として掲げており、多くの移民女性団体との相乗効果を生み出してきた。このパートナーシップによって、35の加盟機関からなるEuropean Network of Migrant Women(欧州移民女性ネットワーク)が誕生した。組織化されたこのネットワークを通じ、欧州20カ国で暮らす移民女性たちはそれぞれの懸念を共有することができるほか、政府や政治家の関心を移民女性という自分たちの存在に向けさせることができるのである。こうしたネットワークは、加盟団体を拡大することによって、移民女性たちをより幅広く代表し、彼女たちの多様な優先課題を訴えることができる。

現在、移民女性たちの経験の多様性は、彼女たちに関わる政策に必ずしも反映されていないというのが現状である。しかし、移民女性たちの経験は、彼女たちが女性であるという事実のみによって単純にひとくくりにすることはできない。移民女性による政治や結社への参加について、多様な要素を交差させるインターセクショナルな視点で取り組むためには、人種、社会的階級、教育レベル、セクシュアリティ、およびその他の社会経済的要因を含むさまざまな要素を考慮に入れなければならない。

次のステップと提言

国連大学グローバリゼーション・文化・モビリティ研究所(UNU-GCM)が先ごろ発表したポリシーレポートでは、いかにして地方自治体は移民女性のエンパワーを促進すべきかという方法に関する提言がなされ、その中で、移民女性団体への支援拡大や、これらの団体と政府の意思決定機関における対話の促進といった具体的手段が示された。国際的なレベルでは、最近採択された「難民と移民に関するニューヨーク宣言」が契機となり、今後交渉が予定されている2つのグローバル・コンパクトにおいて移民女性の権利への十分な配慮が約束されることとなった。ジェンダー平等を実現し、すべての移民の人権を守るために、移民女性が自らの政治的エンパワーメントを進めていくことのできる方法を、私たちは評価し、支援していかなければならない。

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この記事は、UNU-MERITとUNU-GESTが主催する「Gender Full Spectrum(ジェンダー・フル・スペクトラム)」シリーズの一部として、当初、UNU-MERITのウェブサイトに掲載されたものである。元の記事はこちら。同シリーズは、ジェンダーの視点から見た研究結果、ジェンダー研究における方法論的課題、ならびに多様な視点に立ったジェンダーに関する時事問題の議論に重点を置いている。

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著者

ジャニナ・ペシンスキ氏は、国連大学グローバリゼーション・文化・モビリティ研究所(UNU-GCM)において、女性の行為主体性、モビリティおよび社会文化的変化に関するプログラムに貢献するジュニア・リサーチ・フェローです。ペシンスキ氏は、パリ政治学院で人権および人道支援分野の修士号を取得しています。研究対象には、移住、人権、離散ネットワークおよび市民社会などがあり、学際的アプローチを使って研究を行っています。

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