地球上で最も象徴的な自然環境の1つ、ボツワナのオカバンゴ・デルタが1000番目の世界遺産登録地に認定された。この決定は、ユネスコ(UNESCO)の自然に関する世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)の勧告に続いて下された。今回の認定はカタールのドーハで開催された第38回世界遺産委員会で発表された。
世界遺産委員会は年1回開催され、世界遺産条約の締約国のうち21カ国の代表国で構成されている。委員会は条約履行に関する責任を負い、世界遺産基金の運用を明確に規定し、条約締約国の要請を受けて財政的支援を配分する。IUCNの世界遺産プログラムは、IUCNの下部機関である世界保護地域委員会(WCPA)と緊密に連携して、世界遺産の候補地を評価し、候補地の保護状況を監視し、世界遺産条約を重要な世界の自然保護手段として振興する。さらに同プログラムは、世界遺産登録地の管理者、政府、科学者、地域社会に支援や助言やトレーニングを提供する。
世界遺産委員会は、ある候補地が世界遺産一覧表に登録されるか否かについて最終決定権を持つ。同委員会は登録された世界遺産の保護状況に関する報告を審査し、世界遺産が適切に管理されていない場合には締約諸国に処置を講じるように求める。また、危険にさらされている世界遺産一覧表への登録および削除を決定する。
「オカバンゴ・デルタは長年、世界遺産一覧表における最大の欠落の1つと考えられてきました。IUCNは今回の推挙を支援できたことを誇りに思います」とIUCNのジュリア・マートン-ルフェーブル氏は語った。「並外れた努力の末にこの歴史的な登録を実現させたボツワナの関係諸機関に対してお祝い申し上げます」
オカバンゴ・デルタはボツワナ北西部に位置し、永続性の沼と季節性の氾濫原を含む扇形の広大な平原である。その広さは、今年の世界遺産委員会の開催国であるカタールの国土のおよそ2倍だ。毎年乾期に発生する驚異的な洪水がアフリカの野生生物が最も多く集まる地域の1つを支えている。
オカバンゴ・デルタは絶滅の危険が最も高い大型哺乳類の数種が生息する場所だ。例えばチーター、シロサイ、クロサイ、リカオン、ライオンなどである。また、世界的に絶滅の危険のある鳥類24種の生息地であり、世界最高の個体数を誇るボツワナの13万頭のゾウの生存にとっても重要な土地だ。
「オカバンゴ・デルタは30年以上にわたり重要な保護地区でした。今回ついに、しかるべきステータスである世界遺産に認定されたことを喜ばしく思います」と、IUCNの世界遺産プログラム部長であるティム・バッドマン氏が語った。「他に類を見ない自然美だけではなく、生態学的および生物学的重要性を持つオカバンゴ・デルタは、世界遺産が象徴するものとは何かを示す優れた例です」
オカバンゴ・デルタは、淡水、食料、建材、薬用植物、観光業による雇用を提供することで、数千人の人々の生活を支えている。世界遺産への登録を求める提案は、デルタ内部や周辺に暮らし、数千年にわたって同地域を保護し続けてきた先住民族の人々が強く支持していた。
「オカバンゴ・デルタは、たぐいまれな、象徴的な自然保護地区です」とIUCNの世界保護地域委員会副委員長のCyril Kormos(シリル・コーモス)氏は語った。
「数千年にわたる地域社会の適切な管理は、自然と文化の密接なつながりをまさに実証しています。オカバンゴ・デルタは近年、採取産業を含む脅威に直面しており、うまくいけば世界遺産への登録によってこうした問題は食い止められるでしょう」
翻訳:髙﨑文子
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