討論会2.0 : もしも気候が銀行だったら…

ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は、「もしも気候が銀行だったら、アメリカはとっくにその危機を救っていただろう」と述べたが、これは正しいのだろうか。

チャベス大統領が先週この大胆な発言を行ったCOP15は、これまでの主要な国際サミットのうちで、かつてない激しい意見の衝突が見られたサミットとして歴史に名を残すであろう。西側諸国 対 BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)、先進工業国 対 開発途上国、富裕国 対 貧困国といった対立である。

実際は、何千人もの代表者たちが、まだ誰ひとりとしてコペンハーゲン行きの飛行機に乗り込んでいないうちから、すでに論争は始まっていた。しかし、サミットの1カ月前にはまだ望みがあった。工業化の過程で膨大な量のCO2をまき散らした富裕国は、自分たちよりも貧しい国々の要求――つけの清算と、CO2削減への真摯な目標値の提示――を飲むであろうという望みだ。そうではなかったか?

もちろん今では我々は結末を知っている。交渉はどういうわけか針路を外れた。そして最後の間際に、世界的な指導者の幾人かが、彼らの間の直接交渉によってコペンハーゲン合意の詳細を詰めざるを得ないと考えたのだ。

政府間組織のシンクタンク「サウスセンター」のマーティン・コー所長は、サミットの閉会式で次のように話した。「途上国は非常に失望している。なぜなら彼らはこの会議での交渉用ドキュメントの準備に多大な時間を費やしたのだから」

COP15が終わり、今度は非難合戦が幕を開けた。国連の責任だ。中国の責任だ。合意に同意しなかったいくつかの国の責任だ。アメリカ上院議会の責任だ。オバマの責任だ。

責任を問われない者はいるのだろうか?

このような事情にもかかわらず、ゴードン・ブラウン英首相とバラク・オバマ米大統領のように肯定的な指摘をする人々もいる。CO2排出量削減目標値を定められなかったとはいえ、このコペンハーゲン合意は、貧しい国々に対し300億ドルの短期適応支援を保証し、さらに2020年までに年間1000億ドルの基金を設立することで一致したのだと。

基金を設けるのに10年間を要する! 皮肉なことに、ほんの1年前にアメリカはウォール街を無条件に救済するために7000億ドル捻出している。さらに悲しいことに、世界の軍事費の年間総額は、1兆4600億ドルを超えるのである。

あなたはどう思うだろうか。富裕国が下した選択はどこかおかしいのだろうか。

すでに病んでいる気候のさらなる悪化を食い止めることより、軍事費への支出や、機能不全の金融システムへのてこ入れが優先されているのだろうか。

結局すべてリアルポリティーク(実利を優先する現実主義的政治)にすぎないのだろうか。そして、もしそうならば、あなたはそれでいいのだろうか。

翻訳:金関いな

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリスト。グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。