梟の違法取引がインドの祭典に影を落とす

光のフェスティバルとして知られるディワリが近づき、インドは現在、陽気な雰囲気で活気づいている。この熱狂的な祝祭は2010年11月5日から始まる。

インドで最も重要視されているこのイベントの準備のため、人々は大がかりな買い物に奔走し、家を隅々まできれいにする。5日間続く祭りの間はロウソクやランプに明かりをともし、女神ラクシュミーをお迎えする。ラクシュミーは物質面と精神面の両面で富と繁栄を司る女神だ。人々は贈り物を交換し、祝祭にふさわしい食事を用意する。

ところが、ほとんどの人が知らないのは、この時期にインドのフクロウが最も危険にさらされるということだ。インド全域で年間に何羽のフクロウが違法に取り引きされているかは不明だが、火曜日に発表されたImperiled Custodians of the Night(危機に瀕する夜の守護者たち)と題された報告によると、その数は何千という単位になることは間違いないという。

インドの野生生物法はフクロウ全種の狩猟と取引を禁じているにもかかわらず、TRAFFIC(野生生物の取引を監視するネットワーク)による研究では、インドで確認されている30種のフクロウのうち、15種が国内の生きた鳥類取引の現場で発見された。

TRAFFICは、フクロウの裏取引が横行する主な原因の1つとして迷信やタブーを挙げている。フクロウを生け贄に捧げることは吉と考えられているため、ディワリの時期には取引が増加する可能性があるとTRAFFICは警告している。

「耳」(羽角)のあるフクロウは最も強力な魔力を持つと考えられており、「Tantrik(タントリック)」(黒魔術師)は儀式でフクロウやその体の一部を用いるように指示することが多い。「ディワリは国中でお祝いをする時期であるべきで、愚かな迷信のために野生生物が略奪される時期であってはなりません。インドの野生生物はすでに数々のプレッシャーに直面しています。人間の無知と恐怖心のせいで殺されるというさらなる負担を野生生物に負わせる状況は、現代社会では起こってはならないことなのです」とインドの環境森林大臣のジャイラム・ラメシュ氏は、報告書の発表の際にニューデリーで述べた。

「トラなどのように、よく知られていてカリスマのある種と同様に、フクロウは我が国の生態系にとって重要な存在です。ディワリの期間中にフクロウへの脅威を明るみにし、違法な取引を抑制するための具体的な対策をとることが重要です」とラメシュ氏は補足した。

テーマを超えて

ディワリの期間中にフクロウへの脅威を明るみにし、違法な取引を抑制するための具体的な対策をとることが重要です。

ディワリの期間中にフクロウへの脅威を明るみにし、違法な取引を抑制するための具体的な対策をとることが重要です。

TRAFFICの調査では、フクロウが主にオカルト儀式で使われるだけでなく、大道芸に使うためにワナにかけられ、取り引きされていることも判明している。さらに、剥製にするためや食べるために殺されたり、体の一部が民間療法に用いられたり、ツメや羽根は頭にかぶる装飾品に利用されたりしている。さらに生きたフクロウは、他の鳥類を捕獲するためのデコイとして利用される。

報告書の筆者であるアブラール・アハメド氏は長年にわたりフクロウについて懸念してきたが、ある奇妙な出来事に強烈なインスピレーションを受け、フクロウの報告書を書く決心をした。その出来事の詳細は報告書の前書きに記載されている。彼の裕福な友人の奥さんが、息子の誕生日パーティーのためにフクロウを調達してほしいと何度も頼んできた。息子へのプレゼントにしたいとのことだったのだが、そのパーティのテーマはハリー・ポッターだった。「その依頼は、私が鳥類学者として受けた依頼の中で最も奇妙なものでしょう」と彼は記した。

しかし、この出来事にはハッピーエンドが待っていたのだ。

「結局、私はそのテーマ・パーティに3羽のフクロウを持っていきました。ヘドウィグに似たフクロウの絵を描いていき、芝生の上のよく見える場所につるしておいたのです」とアハメド氏は述べた。

「夜になると、フクロウの鳴き声が聞こえてきました。誰もが大喜びしたことには、本物のインドコキンメフクロウが、その家の門のそばの電信柱の上にとまっていたのです。私は神に感謝し、みんなに『彼らの』フクロウを見せることにしました」

「子供たちがうれしさのあまり手を叩いたので、そのフクロウは間もなく飛び立っていきました。パーティー客の中には、その後バードウォッチング団体に参加した人もいました」

農民の友

TRAFFICの報告書には、フクロウをワナにかける数々の技術が記録されている。さらにインド国内で野生鳥類を販売している場所や地域は約50カ所あり、そういった場所で商売している者なら誰でもフクロウを調達することができるだろうとしている。ただし、フクロウが人目につく場所に置かれていることはまずないという。

「フクロウのような鳥類は非常に高値で売られます。そして黒魔術に使うために客がはっきりと依頼してきて初めて、実物が持ち込まれるのです。大抵の場合、客の玄関先まで配達されます」とアハメド氏は述べる。

RAFFICの報告書には、フクロウをワナにかける数々の技術が記録されている。さらにインド国内で野生鳥類を販売している場所や地域は約50カ所あり、そういった場所で商売している者なら誰でもフクロウを調達することができるだろうとしている。

RAFFICの報告書には、フクロウをワナにかける数々の技術が記録されている。さらにインド国内で野生鳥類を販売している場所や地域は約50カ所あり、そういった場所で商売している者なら誰でもフクロウを調達することができるだろうとしている。

取引場所のうち21カ所は大規模な市場で、年間2万~5万羽のフクロウなどの野生鳥類が売買されていると推測される。

アハメド氏によるフクロウ取引の実態調査は、1992年~2000年に実施された鳥類取引の関する全国的な研究の一環であり、2001年~2008年に収集した情報も追加された。

この報告書を考慮に入れて、TRAFFICはフクロウの取引を早急に抑制するために、より徹底した法律の施行などの対策を要求している。さらにフクロウが生態系で担う有益で重要な役割について、世間の認識を高めるべきだと主張している。フクロウはネズミなど作物に害を与える生物を補食する。だからフクロウは農民の友と考えるべきなのだ。

TRAFFIC(野生生物の取引を監視するネットワーク)は、世界自然保護基金(WWF)と国際自然保護連合の共同プログラムである。TRAFFICは現在、25以上の国や地域における野生生物の取引に関する問題を扱っており、その他の地域でも調査や活動を行なっている。

インドのTRAFFICはWWF-Indiaの1部門として機能している。TRAFFIC Indiaは野生の植物や動物の取引がインドの自然保護を脅かすことがないように努めている。詳細に関しては、  www.trafficindia.org または  www.traffic.org をご覧ください。

翻訳:髙﨑文子

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著者

サイード・アリ・ムジタバ氏はインドのチェンナイを拠点としたジャーナリスト。2003年、ハワイ東西センターのジェファーソン・フェローシップに参加。数紙の新聞、通信社、ウェブサイトで執筆活動を行なっている。彼は250人以上のメンバーを持つSouth Asia Contact Group(南アジア・コンタクト・グループ)というウェブフォーラムの創立者および進行役である。彼の記事はGoogleで検索するか、YouTubeや自身のブログでご覧いただけます。