たばこ業界に立ち向かうインドネシアの若者たち

インドネシアは、たばこ業界にとって「ディズニーランド」のような国だと言われてきた。規制が緩やかなせいで喫煙率は世界でも有数の高いレベルにあり、子供たちや若者らが露骨にターゲットにされている。今、新しく作られた若者の権利擁護組織が、たばこ業界のやりたい放題に待ったをかけようと活動している。

2011年、インドネシアの幼児、アルディ・スガンダ君が立て続けにたばこを吸う映像が世界中を駆け巡った。今日もなお、事態は深刻である。インドネシアでは13~15歳の子供の19パーセントが喫煙者である(そのほとんどが男児)。全世界では同年代の子供の喫煙率は7パーセントにとどまる。インドネシアの子供の4分の3がたばこの広告を目にし、ほぼ3分の2が受動喫煙にさらされている

教育施設でのたばこ製品の販売は、法律により禁じられているが、多くの学校は、たばこ小売店に囲まれており、これらの小売店はたばこの屋外広告も掲示している。これらの店では、たばこを1本から容易かつ安価に購入できる。若者へのたばこの販売を断る店は多くない。さらに悪いことに、インドネシアのたばこ農場は、児童労働により利益を得ており、そこで働く若年労働者らは、有害な化学物質危険な労働環境経済的搾取にさらされている。

「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」に参加していない国はたった9カ国だが、インドネシアがその内の一つなのは、偶然ではない。東南アジアでは唯一の非締約国である。たばこ業界の豊富な資金力に対抗し、インドネシア政府は、政治的障壁を乗り越えてFCTCに署名するか、あるいは、より強力なたばこ規制政策を採択することに苦戦してきた

たばこ会社は、ロビー活動のための協力関係を構築し、通商法や国際協定を用いて公衆衛生規則に法的に対抗するなど、政治的利益を得るための戦略を用いてきた。企業の社会的責任(CSR)について欺瞞的な物語をでっちあげ、社会的、経済的貢献をしていると主張するたばこ会社に対し、政府はいくつものCSR賞を与えてきた。この「CSRウォッシング」戦略は、たばこ業界の負の影響から一般の人々の注意を逸らし、ビッグタバコ(大手たばこ会社)が子供たちの教育を支援し、児童労働を阻止する存在であると人々に認識させることを目指すものである。

2010年以降、若い活動家らは、世界保健機関による「たばこ需要削減のためのMPOWERフレームワーク」の実現を強く求めてきた。

若者たちは、もう我慢できない。たばこ規制のためのインドネシア青少年同盟(IYCTC)は、変化を求めてキャンペーンを行っている。2021年に43の組織やコミュニティーが集まって結成されたIYCTCは、さまざまなユース団体によるたばこ規制運動において、効果が期待される活動を記録し公表してきた。若い活動家らは、国際的たばこ会社が主催するイベントやたばこ会社に優しい規制に対し、デモを行った。FCTCの批准を目指し、セミナーや大規模な集会を開催したり、一般向けのキャンペーンを展開した。また、たばこ広告の完全禁止と、最高裁によるインドネシア放送法の見直しを強く求めてきた。放送法には抜け穴があり、それを利用したたばこ業界が、テレビ放送での広告を行ってきたのだ。

2010年以降、若い活動家らは、世界保健機関による「たばこ需要削減のためのMPOWERフレームワーク」が定める6つの対策の内、すくなくとも4つの実現を強く求めてきた:①たばこの煙からの保護、②たばこの危険性に関する警告の表示、③たばこの広告やプロモーション、スポンサーシップの禁止、そして③たばこ製品に対する増税である。また、たばこ業界のCSRウォッシング(特に子供たちをターゲットにしたもの)に対抗して、エビデンスに基づく、より強固な主張を行うため、複数の研究も行っている。

たばこ使用の問題の中心にいるのは、若者らである。彼らは、たばこ業界からターゲットにされ、危害を受けている。また、彼らは変化を求め、後押しする中心的役割を担っているのだ。世界的に、若者を対象としたたばこ規制政策やプログラムは、費用効率が高いことが分かっている。さらに、若い活動家らに力を持たせ若者によるイニシアチブを強化することは、たばこ使用と戦う上で不可欠である。

一般の人々や政策立案者からより広範な支援が得られれば、若者らは最大限の貢献をできるようになり、自らの権利を守り、自らの声を届け、自らの安全を保証できるようになる。

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