国連にはシリアに平和維持ミッションを派遣する準備が整っているか

7年続くシリア内戦の死傷者は40万人を超えており、避難民は500万人以上だ。国内に今でもとどまる人々は、化学兵器による攻撃をはじめ、あらゆる残虐行為を戦闘当事者から受けている。しかも、それらが終わる見込みはない。何年も流血が続く中で「国連が介入すべき時が来たのではないか」という声が上がっている。これに対してモスクワから来る政治的な回答は、断固として「ノー」だ。理由こそ違うものの、国連安全保障理事会のそのほか常任理事国(P5)も、おそらく同じ意見を表明するだろう。しかし実際には、「それ以外に方法はない」という答えが出てもよさそうなものだ。よって、平和維持活動局(通称「DPKO」は、国連の平和維持活動を計画、準備、実施する)史上、最も困難なこの取り組みが、どうすれば成果をもたらせるかについて検討しなくてはいけない。

これまでで最も困難な平和維持活動

2017年12月7日、国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)は、設立以来24年の中で、国連部隊に対する最も大規模な攻撃を受け、平和維持要員15人が死亡し、53人が負傷した。この暴力行為は個別に起こった事件ではなく、「ブルーヘルメット」(国連平和維持活動を、従事者がかぶる青色のヘルメットで表す言い方)が直面す敵対行為の増加を表す最新事例にすぎない。

国連が展開している15件の平和維持ミッションの多くが、ここ数カ月で悪い方向へ進んでいる。平和維持要員は敵対的な地域に展開され、反乱軍やテロリスト組織からの非対称的脅威(正規軍同士ではない戦闘、両交戦者間の軍事力や戦術などが大幅に異なる戦闘)にさらされている。2017年は平和維持活動にとって、死傷者だけでなく、兵員提供の政治化、受入国によるミッションへの後ろ向きな協力姿勢、安全保障理事会のメンバーの国益に関する政治的課題により、極めて困難な年となった。

これは危ない傾向だ。第1に、主な兵員提供国(TCC)はますます危機を回避するようになり、展開中の自国軍の行動を制限する「差止請求」を拡大する可能性が高い。こうした差止請求は、現場指揮官の戦術的な意思決定を損なわせ、マンデート(展開期間や権限内容など平和維持の機能全般)の成功を危うくする。第2に、兵役提供の「効果のなさ」を理由に国連を批判する人々がDPKO予算の大幅な切り詰めを求めるようになり、さらに政治化するおそれもある。第3に、マンデートを与えられたか、または攻撃を受けたかの理由で、平和維持要員が巻き込まれる暴力が増えているため、平和維持要員は中立であるいう概念自体が消滅した。そのため、兵員と文民要員(戦闘行為を行わずに活動する人道支援要員)がともに危険にさらされるようになっている。

こうした状況を踏まえながら、シリアでのマンデートに向けて、DPKOが既存の活動から何を学べるのかを把握することは重要だ。このような平和維持ミッションには、合同活動、テロと闘うためのマンデート、強力な政治戦略という3つの主要要素が必要となるだろう。

合同活動の将来性

第1に、平和維持活動を展開する場合には当然、地域機関との共同管理、すなわち合同で取り組むマンデートが必要となる。これは新たな試みではない。DPKOは現在、ダルフール国連・アフリカ連合(AU)合同ミッション(UNAMID)を展開中だ。これまでのところ、成果はまちまちだが、AUを対等なパートナーとすることで、ミッションはアフリカ地域内部で大きな政治資本を獲得し、それによりアフリカ諸国からの貢献を合理化し、「欧米」からの介入とみなされない形で円滑な政治対話を支援できた。

ミッションには、地域からの歓迎だけでなく、兵力や装備、政治的支援を提供する長期的な コミットメントも必要になる。さらに、欧米諸国は物流の調整、装備、諜報能力(情報を合法または非合法の手段によって収集する能力)を含め、さまざまな形でミッションを支援すべきだ。これらの支援において多くの兵員は派遣されないため、アラブ連盟にさらなるコミットメントを求める声は強まるだろう。

まずは安定化、次に平和維持

仲介によって停戦が成立すれば、ミッションは敵対的な地域に展開されるようになるため、兵員がテロ組織と積極的にやり取りできるマンデートが欠かせない。紛争中の敵対的地域へより幅広く強力なマンデートで安定化ミッションを展開することは、平和維持活動における劇的な転換点となった。この新たな平和維持活動の領域を示す最も象徴的な例は、多数のテロ組織が活動する中、反乱鎮圧作戦(テロリストなどの反乱勢力を鎮圧する作戦や行動)とみなされかねないマンデートで紛争地域に展開された国連マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)だ。

MINUSMAは国連史上、最も多くの死者を出しているミッションの1つであり、2018年も情勢が沈静化する見通しは立っていない。マリにおける多くの複雑な安全保障環境と、これに対する取り組みの失敗は、シリアへ展開する可能性のあるマンデートに教訓を提供できる。

シリア情勢は信じられない程複雑で、多数の主体が関わっている。どの主体をテロ組織とみなすべきかについて、すでにP5の間には根本的な見解の相違が見られ、これがマリのように、長期的な平和構築を危険にさらすおそれがある。敵対的な環境にさまざまな主体が関与する現状では、加盟国がTCC諸国に提供する訓練と装備を改善する必要もある。最後に、最も重要なのは強靭性だ。MINUSMAに対する攻撃は、兵員がリスクにさらされた場合、特に欧米のTCCが長期的な関与を行う意思も能力もないという事実を露呈させた。しかし、TCCの強靭性を高めない限り、シリアでのミッションが成功する可能性はない。

政治対話

結局のところ、持続可能な平和には政治的集中と市民社会の全面的な再建が必要となるが、これには数世代を要する可能性が高い。国連は対話を支援し、和平プロセスに技術的な専門知識と政治的信頼性を提供するとともに、国内外双方の主体間の一体性を醸成しなければならない。

国連はソマリアでのミッションなど、成果を上げている政治ミッションの経験を活かすことができる。ソマリアでの国連の関与は、政府が長期的な行動計画を策定し、その他の国内主体を交渉の場に集め、IMFへの継続的な債務救済への関与の要請に役立った。

まとめ

シリアに平和維持ミッションを派遣する場合には、合同活動にすることで、テロ組織の根絶だけでなく、国の安定化も確保する強靭なマンデートが必要となるだろう。また、シリアの社会内部で対話を育むと同時に、それぞれの国益をさらに追求しようとする外部セクターの侵入を抑えるためには、大量の政治資本も必要となる。だが、予算削減が進み、国連安全保障理事会が停滞し、域内からのコミットメントも欠如している現状では、極めて大きな難題である。しかし、国連が要請を受けた場合には、準備態勢を整え、シリア紛争の平和的解決に向けて全力を挙げて努めなければならない。

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著者

ディエゴ・サラマは、国連大学マーストリヒト技術革新・経済社会研究所(UNU-MERIT)広報官。戦略、プログラムとプロジェクトの管理、国連その他の組織との連携、研究所の制度的ガバナンスと報告を担当し、広報部の管理を支援する。それ以前は、国連広報局職員としてラテンアメリカに勤務していた。現在、ライデン大学国際関係史博士課程に在籍中。主に国連の平和維持、グローバル・ガバナンス、国際機関を中心とする研究を行っている。21世紀における平和維持の課題に関する国連大学ブログ・シリーズを共同で編集しているほか、平和構築、多国間問題と開発に関する論文も執筆している。サラマは、UNU Jargon Buster App (アプリ)・プロジェクトのアソシエイト・プロジェクトマネジャーも務めている。このプロジェクトは、大学院生や国際機関、一般市民など、さまざまな関係者間における分野横断的な学術・政策対話のさらなる促進と明確化を目的としている。サラマは、マーストリヒト大学から国際関係論学士号、ライデン大学から国際関係史専攻国際関係(優秀)修士号をそれぞれ取得している。

オルトルン・マークルUNU-MERIT博士課程研究員。ニューヨーク州シラキューズ大学マックスウェル行政大学院から経済学修士号、国際関係論修士号、安全保障研究上級修了証を取得。博士論文では、国づくりで腐敗や汚職が果たす役割、特にそのプロセスにおける市民社会と外部主体の役割を中心に検討を加えている。特に、国づくりの失敗と、その後の紛争再発リスク増大につながるメカニズムに関心を有する。マークルは、ダイムラー社コーポレートコンプライアンス部および米国トランスペアレンシー・インターナショナル(腐敗や汚職について取り組む非政府組織)に勤務した経験があるほか、仲介に関する幅広い研修を受けており、異文化コミュニケーションの研修官にも認定されている。

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