たばこ産業に屈する日本は条約違反、と専門家

2017年07月21日 小竹 朝子 ジャパンタイムズ

日本政府は2020年の東京五輪に向け、公衆の集まる場所での屋内禁煙の義務化を目指していたが、与党自民党議員が喫煙者の権利とたばこ産業を保護する必要性を主張して激しく反発し、その取り組みは思いがけず暗礁に乗り上げた。

もしたばこ規制の法案成立に向けた動きが停滞するようなことになれば、日本は、加盟している国際的なたばこ規制条約に違反したとして非難の的になる可能性があると、国連大学関連研究所のヘルスガバナンスの専門家は指摘する。

日本は2004年に公衆衛生に関する初めての国際条約「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」に署名し、2005年に条約が発効した。FCTCは、現在179カ国と欧州連合が締約国となっており、たばこの需要を減少させること、受動喫煙から人々を保護することを目的としている。

条約は、締約国に対し、「屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所」での受動喫煙の防止策を講じるように求めている。

国連大学グローバルヘルス研究所(クアラルンプール)のオビジオフォー・アギナム所長代理は先週、電話取材に対して次のように述べた。「国際条約を承認するということは、国として義務を負うということです。FCTCの第5条は、締約国にそれぞれたばこ規制の制定のために国全体としての協調体制を確立することを求めており、……また、その過程において可能な限りたばこ産業の影響を排除するよう示している」

「日本で現在起きていることは、事実上、条約第5条違反に当たります」とアギナム氏は指摘する。

国内唯一のたばこメーカーである日本たばこ産業(JT)は、1985年まで国営企業であり、現在でも財務省が3分の1の株式を保有している。

同条約第5条には、たばこ規制の実施に取り組む締約国は、「国内法に従い、たばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護」しなければならない旨が明記されている。

たばこ規制の制定に関しては他の国でも同様の対立が見られたが、日本の状況は特異で複雑である。

国内唯一のたばこメーカーである日本たばこ産業(JT)は、1985年まで国営企業であり、現在でも財務省が3分の1の株式を保有している。JT株の配当による国の収入は2015年度では700億円、たばこ税収入は国と地方を合わせて1年間に約2兆円となっている。この財政的利益はかねてより、喫煙のリスクから国民を守る立場の厚生労働省の方針とは相容れないものとなっている。

しかし、アギナム氏は、FCTCが、締約国に対してたばこ産業の影響の排除を求めていることは明白であるとし、もし日本が条約に従って義務を遂行しないのであれば、来年ジュネーブで開催されるたばこ規制枠組条約第8回締約国会議(COP8)の中で、義務に反していると非難される可能性が出てくるだろうと述べた。

ナイジェリア生まれで、国際弁護士でもあるアギナム氏は続けて次のように語った。「日本も、COP8で名指しの非難を受けたくはないでしょう。自民党や自民党議員は国際条約の下、たばこ規制法案を成立させる義務を負っているということをもう一度認識し直す必要があります。そして、規制法案成立を図っていくうえで、たばこ産業の権益は排除すべきです。この条約に署名したということはそういうことなのです」

 

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本記事は、The Japan Timesで最初に公表されたものであり、許可を得て再掲しています。

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著者

小竹 朝子

ジャパンタイムズ

ジャパンタイムズのスタッフライターおよびエディター。健康、医療、社会問題に興味を持つ。「A Matter of Health」という日本における健康、技術、政策関連の問題を特集したウィークリーシリーズを担当。奈良県出身。モンタナ大学にてジャーナリズムの修士号を取得。