大地は呼吸している:アルタイの自然を敬う心

「大地は呼吸している。大地にはへその緒、鼻、口、目、耳があり、地球上に存在するすべての物には命がある。アルタイには人類と自然が共生している」これはロシア連邦にある、アルタイ共和国に伝わる先人たちの言葉だ。アルタイ共和国は中国、カザフスタン、モンゴルの中継点に位置する。山々が豊かな先住民文化を育み、その教えは長い間にわたり地域の自然環境を守ってきた。

「氷河を抱く山々は人々の生活に恵みをもたらす。氷河の谷は健康な家畜を育てるための牧草を与えてくれる」 -アルタイ民族の格言

アルタイ共和国は、その一部が1998年に世界遺産リストに登録された。多くのユニークな特徴を持つ国土は印象的な美しさを誇り、植物、哺乳類、爬虫類、魚類の生物多様性の豊富さにおいても極めて重要な場所である。

しかし、世界の多くの場所と同様に、ここでもまた人間と自然の関係に変化が生じている。氷河はすでに溶け始めており、気候変動モデルの予測では、2050年までに水量が平均26%減少するという。

温暖な気候が長く続けば、永久凍土の氷解や地盤沈下が起こり、生態系や動植物、伝統的な土地利用にも影響が及ぶだろう。

「自然は大きく変わろうとしている」シャーマンのスラヴァ・チェルツエフ氏は言う。

この記事に添付されているビデオ映像では、アルタイの高地コシ・アガチ地域にあるテレンギト族コミュニティのリーダー兼シャーマン、スラヴァ・チェルツエフ氏が、私たちの生きる21世紀の世界を見つめ、伝統的知識の再興の必要性を訴える。

「自然は大きく変わりつつある。この地方では夏が一ヶ月遅れて来るようになった。雨も降らない。地球は疲弊しているのだ」チェルツエフ氏は言う。

アルタイの神話や霊的信仰においては、動物、植物、水、そして大地や岩までが尊敬の対象となってきた。コミュニティに新たな家畜飼育法が導入される中、チェルツエフ氏は人間の営みが変わり、代々受け継がれてきた知恵が失われていくのを嘆く。彼は、人間と環境の関係が、再び尊敬と調和に基づいたものなるよう呼びかけている。そしてこの遺産を人々が再発見できるよう、仲間たちを導こうとしているのだ。

「私たちの世代は無知である。人々はお互いを理解できない。子供たちを教育し、自分たちを抑えることが出来れば、この破壊的な慣習は止まるだろう」

チェルツエフ氏のメッセージは、アルタイの人々だけでなく、世界に向けられた警鐘だ。

「私たちの大地は神聖である。地上に生きる人々は大地に敬意を払わなくてはならない。大地を守り尊敬すれば、それは私たちに生命と健康を与えてくれるだろう」

このビデオ映像はFoundation for Sustainable Development of Altai(アルタイ持続可能な開発基金)およびクリステンセン基金の協力を得て国連大学メディアスタジオのキット・ウィリアムズが制作した。

翻訳:森泉綾美

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大地は呼吸している:アルタイの自然を敬う心 by シャガト・ アルマシェフ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

著者

シャガト・アルマシェフ氏は、地域および先住民コミュニティの自然と文化遺産保護を中心に活動するNGO、Foundation for Sustainable Development of Altai (FSDA)(アルタイ持続可能な開発基金)代表。FSDAは保護地域の新しい形を確立し、その活動は、地元住民や先住民族による5つの自然公園の設立につながった。そして、彼らにとって神聖な場所、信仰の対象となる動植物、伝統的な土地、そして生物多様性が守られることとなった。アルマシェフ氏は国際自然保護連合の世界保護地域委員会メンバーでもある。