海の豊かさを守ろう:アフリカの水産資源保護

持続可能な開発目標(SDGs)の目標14は、持続可能な開発に向けた海洋と海洋資源の保全および持続可能な形での利用の促進を目標としている。海洋、湖など、水域を基盤とする分野の中で最も重要な分野の1つである水産業は、世界の食料安全保障に大きく貢献している。例えばアフリカでは、多くの人は動物性たんぱく質のほとんどを魚から摂取している。また、多くの人が水産業の仕事に就き、収入を得ることができている。

しかし、水産分野のそうした重要性にもかかわらず、アフリカの海洋・内水面漁業は限界に近づいている。例えば、ガーナでは他のアフリカ諸国と同様、海洋漁業や一部の内水面漁業において魚が乱獲され漁業資源は減少した。この問題を受けて、国連大学アフリカ自然資源研究所(UNU-INRA)は、アフリカ10カ国、チャド、エジプト、エチオピア、マダガスカル、モーリタニア、モロッコ、ナミビア、ニジェール、セイシェル、サントメ・プリンシペにおける貧困と失業の軽減に向け、水産分野の潜在力を探る調査を支援した。

この調査の結果からは、これら10カ国の水産分野には貧困緩和と失業率抑制を実現する力がないことが示された。その主な理由としてあげられているのが、漁業資源の乱獲、一部の国での水産資源の活用不足、また大きな雇用圧力(働き手に対して雇用機会が不足している状態)である。調査では、これら課題の解決に向けた取り組みとして、アフリカ、とりわけ大きな雇用圧力を受けている国(チャド、エチオピア、マダガスカル、モロッコ、モーリタニア)や魚の乱獲が行われている国(エジプト、チャド、エチオピア、サントメ・プリンシペ)で水産養殖を最重要項目とする必要性が指摘されている。これにより、漁場の生態系への圧力が軽減され、さらに別の雇用機会が創出されることになる。調査結果の中で、水産資源を十分に活用できていない国(マダガスカル、モーリタニア、モロッコ、ニジェール、ナミビア、セイシェル)について、水産分野の仕事で得られる収入を改善するために、現代的な漁獲技術への投資を増やすことが重要であると指摘している。

また、調査結果から、調査対象国の水産品は通関拒否率が高いことも分かった。その原因は水産輸出品の質の悪さにあり、特に、衛生環境、不純物等の添加(書類の不備)、細菌汚染、食品・飼料添加物の使用、包装・表示などに関する輸出規制を順守しなかったことによるものであった。調査の中では、基準を順守できるよう、アフリカの水産物サプライチェーン全体にわって品質管理システムを強化する必要があると指摘されている。またそうすることによって、水産輸出品は増加し、経済的利益がもたらされることになるだろう。

この調査結果について、調査研究者であるShiferaw Mitiku Tebeka(シフェラウ・ミティク・テベカ)博士は、「今回の調査結果によって、多くのアフリカ諸国の天然漁業には高い漁業圧力(魚の需要に対して供給が不足している状態)がかかっており、損なわれた水産資源を回復させるためには規制の厳守が必須であるということが確認されました」とコメントした。

UNU-INRAが支援を提供している調査の結果について、UNU-INRA所長のエリアス・T・アユック博士は、「調査結果からは、アフリカの水産分野がさまざまな課題に直面している現状や、水産分野の開発に向けてあらゆるステークホルダーが最善の取り組みの導入を促進できるような、政策選択肢の策定および提案が喫緊の要請であることが、経験的証拠として示されました」と述べた。

アフリカの多くの国がこのような共通した水産分野の課題を抱えていることは明らかである。アフリカにおける食料、雇用、収入を創出している分野で、政策実行者および主要ステークホルダーの役割において各々のベストプラクティスに対する意識が高まれば、持続可能な開発に向けた海洋と海洋資源の保全および持続可能な形での利用の促進につながっていくのではないだろうか。

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この記事は、国連大学アフリカ自然資源研究所(UNU-INRA)のコミュニケーション・PRアソシエイトであるプレイズ・ヌタコが、Shiferaw Mitiku Tebeka氏(シフェラウ・ミティク・テベカ)のUNU-INRAポリシーブリーフ「Sustaining Fishery Resources for Economic Growth in Africa(アフリカの経済成長のための水産資源維持)」をもとに作成したものである。この研究についてのポリシーブリーフおよびワーキングペーパーは国連コレクションで入手可能となっている。

 

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