マレーシアの20年にわたるテクノロジー投資が大きな成果を生む

マレーシア経済が好調だ。2017年の国内総生産(GDP)成長率は5.8%で、近隣のインドネシア、タイ、シンガポールをいずれも上回った。成長率が2018年も5.3%に達すると見られる中で、マレーシアは高所得国への道を駆け上っている。輸出と所得はともに増大。輸出額は対1990年比で10倍に伸びており、さらに1人当たり国民総所得(GNI)は1万米ドルと、タイやインドネシアの2〜3倍に達している。マレーシアは現在、競争力で世界23位にランクされ、政府支出の効率性も世界15位と、英国や日本、カナダを上回っている。

この高度成長の源はどこにあるのだろうか。それは、マレーシアが20年にわたって情報通信技術(ICT)分野に投資を続けてきた直接的な成果であると言える。

1990年代に行われた調査は、経済成長率とテクノロジーへの投資に直接の相関関係があると示していた。この分野に投資していなかったヨーロッパの成長は鈍化する一方、多額の投資を行っていた米国は、大幅に成長した。そして今、4つの大規模投資による結果として、マレーシアでも同じ現象が起きている。

第1に、マハティール・モハマド首相時代の1996年、マレーシア政府は最重要案件としてマルチメディア・スーパー回廊(マレーシアを知識集約型産業の国際拠点とするため、行政都市や情報産業都市を建設し、情報通信技術のインフラ整備や、優遇措置によりIT産業を中心とした企業誘致を図る計画)に投資を始めた。その目的は、電子情報システムの導入により、行政の効率を高め、公共サービスの費用対効果を向上させ、官僚的な遅れを減らすことにあった。この取り組みは多くの成果を生んだが、中でも、臨床システム、管理システム、財務システムを単一のプラットフォームに統合する包括的なオンライン・ツール「総合病院システム(Total Hospital Information System)」は2002年だけで13カ所の病院が導入した。こうした取り組みは高く評価されている。2016年に実施されたマレーシア・ユーザー満足度評価によると、政府ウェブサイト利用者の80%は、これらオンライン・サービスに満足している。

マレーシアの「国家変革2050アジェンダ」は、投資と開発をさらに促進し、投資収益をより一層高め、マレーシアが世界で最も繁栄する国に仲間入りするための明確な道筋となるだろう。

第2に、マレーシア政府は2007年に「国家ブロードバンド・イニシアティブ」を立ち上げた。世界銀行は、ブロードバンド普及率が10%上昇するごとに、GDPは1.3%の増大を遂げると推計している。また、2012年のブロードバンド品質に関する調査は、ブロードバンドの速度を倍増すると、GDP成長率が0.3%増大する可能性があると示した。

この可能性を認識し、マレーシアのイニシアティブでは政府と国有通信会社の契約によって、ブロードバンドの普及率と速度が改善した。また、全長3,500キロメートルに及ぶ海底光ファイバーケーブルも敷かれ、マレーシアの半島部分と東部のサバ州、サラワク州がつながった。その結果、人口100人当たりの家庭ブロードバンド普及率は、2011年のわずか19.4%から2016年には99.8%に達した

第3に、2013年から実施されているマレーシア高等教育計画(革新的な科学技術やイノベーションを創造する人材の育成を目標とした計画)は、世界に通用する教育制度の実現に向け、テクノロジーの重要性を強調している。2013年時点で、政府はGDPの5.5%を教育に費やしており、近隣国である日本、タイ、インドネシア、シンガポールのいずれも上回っている。この計画により、マレーシアの学校にはコンピュータのほか、コンピュータ室、ブロードバンド・インターネット、仮想学習環境(インターネットを使用した教育の実施、評価、学習目標の設定など)が整備されている。

第4に、2017年より実施し始めた国家変革2050アジェンダは2050年までに、経済開発、社会的進歩、イノベーションにおいてマレーシアを世界の上位20カ国に仲間入りさせることを目指し、情報通信技術を含む5つの重点領域の概略を示している。具体的には、インターネット帯域幅や処理能力、デジタル保存能力の爆発的な拡大を継続するほか、ブロードバンドとモバイルの接続性、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学、人工知能(AI)の台頭を指摘している。そして将来的に、国内の建設、輸送および都市資産(交通、道路、公共施設、水・下水道設備など)の一部として自動化とロボット工学を想定している。現状のペースでのイノベーションと、継続的な成長を目指す本格的な取り組みから見て、こうした構想が2050年のマレーシアで実現することは間違いなかろう。

マレーシアの高度経済成長を示す数字は、情報通信技術への投資という政府の賭けが、大きな成果を生んだことを証明している。しかし、同国にとってこの成果はまだ序の口にすぎない。国家変革2050アジェンダは、投資と開発をさらに促進し、投資収益をより一層高め、マレーシアが世界で最も繁栄する国に仲間入りするための明確な道筋となるだろう。

2018年5月、マレーシア第7代首相として政権の座に返り咲いたマハティール・モハマド氏は、同国にとってさらに魅力ある未来を描き出すだろう。すでに第4代首相として22年にわたって政権を担ったマハティール氏のアプローチは、技術進歩がいかに経済開発の原動力となりうるかを示した。今回も、テクノロジーの推進がさらに続くと期待されている。他国と同様、マレーシアにおいても、テクノロジーへの多額の投資が、国の未来への強力な投資になるという事実が立証されているからだ。

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