海、生命、暮らしに関する6つの事実

海は地球の表面積の70パーセントを覆い、少なくとも地球上の酸素の50パーセントを生み出している。このことから、また、他にも海が多くの重要な役割を果たしていることから、世界海洋デーを記念し、国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)の専門家であるジャック・オコナー博士が、海と生命と暮らしとの関係に関するいくつかの興味深い事実を紹介する。

1) 海は気候調節を助けている

海洋生態系は、その生物と生態系によってまさに天然の気候調節機能を果たしている。植物性プランクトンや海草から、クジラやサメにいたるまで、海洋生物は大気中の炭素を取り込んで蓄え、最終的に食物連鎖を通じて深海へと運び、長期間にわたって貯蔵する。

2) 海は地球上のほとんどの生命のふるさとである

例えば、西はマレーシア、北はフィリピン、東はソロモン諸島で形成されるコーラル・トライアングル(サンゴ礁三角地帯)は、地球上で最も生物多様性に富んだ地域の一つであり、紛れもなく海洋生物多様性の中心地である。この地域には、地球上のあらゆる場所の中で最も多様なサンゴ(全種の76パーセント)、サンゴ礁魚類(37パーセント)、亀(86パーセント)が生息している。

コーラル・トライアングルでは、その特別な生物多様性の状況とその資源に直接的に依存している1億2,000万の人々のために、気候変動、持続不可能な漁法、そして陸上汚染による脅威と闘うための保護の取り組みが増えてきている。この唯一無二の海域では、違法な漁業や乱獲を減らし、ガバナンスを強化することで持続可能な形で産業慣習を規制していくことが求められており、大規模な政策努力が必要だ。

3) 海は人類の暮らしを支える

海洋の生物多様性は、世界中の10億を超える人々の主要なたんぱく源である。さらに、30億以上の人々が海洋と沿岸の生物多様性に依存して生計を立てている。

4) 気候変動が私たちの海を変えている

気候変動によって、海水の水温、酸性度、酸素レベルが変化している。それらの影響を受けやすい海洋生物や海洋付着生物にとって、この変化は生物量と生物多様性の直接的な喪失につながる一方、他の海洋生物は極地に向かって移動し、より低温の海域に避難している。こうした新参者が新たな生態系に与える影響は、予測不能であれば良い方で、多くの場合は悲惨な状況を引き起こす。これに対処するための唯一にして最良の方法は、世界中のCO2排出量を直ちに、そして大幅に減らすことだ。

海そのものと人類と海の関わり方に関する真の理解に根差した、新たなバランスを作り出さなければならない。 Photo: Yosuke Shimizu, Creative Commons CC BY-SA 2.0

5) 私たちは海を守り、保護する必要がある

大型魚の個体数の90パーセントが獲り尽くされ、サンゴ礁の最大50パーセントが消失または損傷した今もなお、私たちは海が回復できる速さや量を超えて海の資源を奪い続けています。海と海が支えるものすべてを守り、保護するために、私たちは海そのものと人類と海の関わり方に関する真の理解に根差した、新たなバランスを作り出さなければならない。包摂的で革新的であり、過去の教訓を生かした海との関係を私たちは構築しなければならない。

私たちの海を守る闘いは、海上や権力が集中する会議の中で完結するものではない。私たちは皆、消費する化学物質やプラスチック製品に意識を向け、魚介類を摂取する際に持続可能かつ多様な選択肢をとることで、家にいながらこの闘いに加勢できる。

6) 今日の海に対する最大の脅威の1つは、私たちの過剰消費だ

広範囲に及ぶ使い捨てプラスチック製品の継続使用から、持続不可能で時には違法な漁業活動へと駆り立てる世界的需要と無秩序なバリューチェーンに至るまで、私たちは減少しつつある海の魚を獲り尽くすだけでなく、まだ生き残っている魚の生息地まで損なおうとしている。その一因は、公海上での活動は大部分の人々の目が届かず、規制が難しい点にある。この課題に対処するための2つの重要な手段は、持続不可能な漁業活動の多くが依存する有害な政府補助金を減らすこと、そして私たちが口にする魚介類の種が何であり、どこで獲れたのか、そしてその持続可能性について学ぶことである。

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本記事は2021年の世界海洋デーに際し国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)が掲載した記事を翻訳し、転載したものです。元の記事はこちらからご覧ください。

著者

ジャック・オコナー博士は国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)の環境脆弱性・生態系サービス(EVES: Environmental Vulnerability and Ecosystem Services)の上級科学者を務めています。