水害対策の助けとなるのは、母なる自然

世界のどこかで洪水や干ばつによる大規模災害が発生しているというニュースは、ほぼ毎日耳にする。気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)による最新の報告書は、1世代のうちに、多数の国や地域が異常気象による問題をさらに多く抱えることになるだろうと警告している。

甚大な洪水や干ばつは、特に後発開発途上の地域における開発に深刻な影響を及ぼしている。およそ1億4000万人の被災者が所得または家屋の喪失によって避難を余儀なくされており、この二つの災害によって全世界で年間1万人近くが命を落としている。洪水と干ばつによる世界の経済的損失は、年間400億ドルを超えているが、米国における最近のハリケーン「フローレンス」や「マイケル」などの暴風雨による損失を加えると、その額はさらに膨れ上がる。

洪水と干ばつによる経済的損失は、ドルに換算すると全世界の開発援助総額に相当し、各国の水、食料およびエネルギーの安定確保に大きな影響を与えている。

こうした問題への対策の一環として、大規模な貯水池の建設に多額の投資が続いている。

しかし、いくつかの地域では適切な建設地の不足や急激な蒸発によって、「グレー(コンクリートと鋼鉄による)インフラ」を追加的に整備するという工学的な有効性がなくなり始めている。一方で、水理学の尺度や傾向が変化し、老朽化したグレーインフラが当初予定された便益を生まなくなってきている地域もある。

適切な対応は、「グリーン(自然の機能や仕組みを活用した)インフラ」の便益を認識するとともに、グレーインフラとグリーンインフラの両方を基にした設計を通して、人間、自然、そして経済への便益を最大限に高めることだ。

このような「自然に基づいた解決策」は、今年の「国連世界水発展報告書」のテーマにもなった。

自然に基づいた解決策の例としては、下記が挙げられる。

グリーン貯水インフラの役割は特に重要だ。このような手法が持つポテンシャルの大きさは、ようやく理解され始めているが、グリーンインフラがグレーインフラの防災実績を改善できることは明らとなっている。

実際、ある一定の条件下においては、大規模に管理された帯水層(地下の貯水層)の涵養は、同じ河川流域の洪水と干ばつのリスクをともに緩和できる。

最近の研究は、面積が15万km2を超える河川流域で、雨が多く降る都市に地下水の涵養を加速できるように200 km2の土地を転換するだけで、農業所得を年間約2億米ドル増大できる可能性があると示している。農民は乾燥した時期に、追加的な水を得られるだけでなく、川下の洪水コストもなくせる。さらに、必要となる資本投資は、10年以内に回収できる可能性がある。

このように持続可能で費用対効果があり、拡大・縮小可能な解決策は、水害への脆弱性の高まりや、気候変動による影響を最も痛感している開発途上国で、特に有効であると言える。

自然に基づいた解決策は、どこにでも導入できるわけでなく、仮に役に立つ場合でも、それだけで水害リスクや水不足の特効薬とはならない。それだけでは、グレーインフラによる全面的なリスクの削減効果を代替または達成できないからだ。

とはいえ、自然に基づいた解決策は、すべての水管理計画を策定する際に考慮するとともに、可能な場合は実践する必要がある。特に河川流域や地域単位においては、管理計画を策定する際に大型のコンクリート製ダムだけでなく、水面の範囲や地下貯水もオプションとして検討すべきだ。

課題としては、下記が挙げられる。

このような課題の解決には時間がかかるものの、そこには望みもある。

国連総会は10月13日を「国際防災の日」としているが、今年のテーマは、災害を起因とする経済的損失の削減だ。

このテーマは、災害後の計画策定と復興から、事前の災害リスク削減へと主眼を移す必要性を強調し、幅広い生態系に基礎を置く解決策を求める「仙台防災枠組2015-2030」のターゲットと一致している。

一方で、持続可能な開発のための2030アジェンダにおける17の持続可能な開発目標(SDGs)のうち、目標10に含まれる約25のターゲットは、明確にまたは暗黙の了解により、水害管理のさまざまな側面について設定されている。

自然に基づく解決策が、すべてターゲットの達成を支援する理念と見なされれば、互いの相乗効果は、さらに強まってゆくだろう。

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