麻薬による森林破壊:麻薬対策と森林保護につなげる

メキシコから中央アメリカまで広がる森林は、地球上で最も豊かな種の多様性を育む地域の1つである。しかし包括的な保護活動にもかかわらず、この地域は圧倒的な速さで進む森林破壊に直面し続けている。この窮状を招いている重複する原因の多くは十分に記録されている(例えばアグリビジネスの拡大、弱いガバナンス、土地の管理体制の対立など)。その一方で、同地域の麻薬取引が環境に及ぼす影響には、あまり関心が向けられてこなかった。

麻薬ルートが森林破壊の速度に影響する

『サイエンス』誌に発表され、国連大学の研究者のデヴィッド・ラサール博士が共同執筆した新しい論文は、南北アメリカでの麻薬の流通が、北アメリカで生物多様性が最も豊かで最も影響を受けやすい地域での森林破壊のスピードに直接関連するという説得力のある証拠を提示している。「Drug Policy as Conservation Policy: Narco-Deforestation(環境保護対策としての麻薬対策:麻薬に関連した森林破壊)」と題する論文は、国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)の研究者らとアメリカの4大学(オハイオ州立大学、北アリゾナ大学、デンバー大学、アイダホ大学)による共同研究の結果である。

論文が主に注目したのは、中米生物回廊(MBC)における森林の喪失である。MBCとは国境を越えたイニシアティブで、メキシコと中央アメリカにおける生態系と生物保護の取り組みを連携させ、持続可能な社会と経済の開発を促進するために1998年に設立された。しかしこうした取り組みを支える利害関係者や政策メカニズムが麻薬取引組織とますます対立するようになっている。

MBCに含まれる森林のように人里離れた森林は、極めて貴重な保護地域だが、麻薬取引における要衝でもある。なぜなら秘密の滑走路や隠れた道路を造る理想的な拠点となるからである。「すでに管理が甘い辺境地に、空前の規模の資金と武器を投入することで」、麻薬取引は、農場主やアブラヤシ生産者のような奥深い森林に暮らす利害関係者を「麻薬によって利用する」ことができるのだと、論文執筆者らは指摘する。

その結果、森林は「武装化」され、土地の購入や保護森林地域の農地転換を通して麻薬の収益を洗浄することが可能になる。こうした不正行為と暴力が社会に及ぼす負担の多くは、先住民族や小規模農家にのしかかる。

麻薬対策は環境保護対策だ

「森林社会は文字通り、政府による麻薬禁止策と麻薬密売者の闘いに巻き込まれています。こうした社会にとって現状は恐ろしく、孤立しがちです。そして、その社会こそ、環境保護における最後の望みなのです」と、UNU-EHSアソシエイト・アカデミック・オフィサーのラサール博士は語った。

Narco-Deforestation Linking Drug Policy and Forest Conservation

Photo: © David Wrathall

麻薬作物の根絶政策は生産者を、影響を受けやすい生態系に追いやる可能性があるという事実は十分に裏付けられている。しかし麻薬密売の禁止プログラムからも(調査例は少ないものの)同様の影響が見られる点に、論文は言及している。禁止プログラムは麻薬密売者と彼らが生態系に及ぼす影響を新たな森林地域へ向かわせる。この現状が世界各地の環境保護活動家に教えてくれることとは、「麻薬対策は環境保護対策」であり、生態系を今後も保護していくためには麻薬の流通に対して新たな対策が必要であることだ。

論文は「特に麻薬資金(とりわけ資金洗浄と賄賂)が環境ガバナンス、農村部の開発の方向性、生態系サービスにどのように影響するかを含む、麻薬密売と森林破壊の関係における影響の大きさと力学に関する証拠の不足を補うための…綿密な学際的研究」の必要性を訴えている。

前進するために

ラサール博士は前進するための2つの目標を記している。「第一に、麻薬密売と禁止策が社会と環境にもたらす結果を科学的に理解する必要がある。第二に、そうした社会と自然への影響を考慮に入れた、証拠に基づく優れた政策が必要である」

「そうすることによって、結果的に私たちは解決策に地域社会を取り込むことが可能になると私は確信している。例えば、先住民族の土地である森林を特定の社会に授けて委託地や国立公園として保護する。そうすることで、たとえ一時的に秘密の滑走路が作られたとしても、土地は法的な保護下に置かれる。長期的には、コカイン密売の問題が解決した際に土地を森に戻すことが可能だ」

論文は「麻薬対策の改革だけでは中央アメリカの森林破壊を止めることは不可能だ…麻薬戦争の再考が生態系にとって重要な恩恵を生むことができる」と結論付けている。

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「Drug Policy as Conservation Policy: Narco-Deforestation(環境保護対策としての麻薬対策:麻薬に関連した森林破壊)」は『サイエンス』誌のウェブサイトで入手可能です(購読登録が必要です)。

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麻薬による森林破壊:麻薬対策と森林保護につなげる by ダニエル・パウエル is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License.

著者

ダニエル・パウエルは国連大学メディアセンターのエディター兼ライターであり、Our World 2.0担当エディターに名を連ねている。東京の国連大学に加わる前は8年間、東南アジアを拠点に過ごし、農業、生物多様性、水、市民社会、移住など、幅広いトピックを網羅する開発・研究プロジェクトに携わっていた。最近では、USAID(米国国際開発庁)がカンボジア、ラオス、ベトナムの田園地帯で行った水と衛生に関するプログラムにおいて、コミュニケーション・マネジャーを務めた。アジアで活動する前は、米国林野局に生物学者として勤務、森林の菌類学および地衣学の研究を行っていた。