ネットワークで環境保護を推進する教師

インドネシアの教育者たちは、環境に配慮し、「グリーン・ティーチャー・ネットワーク」を通して、国立の小学校と高校のカリキュラムに環境擁護を取り入れようと努めている。

とりわけ彼らが擁護を急いでいるのは、気候変動を和らげるマングローブについてである。海岸沿いのマングローブ林が次々と姿を消しつつあるからだ。

「グリーン・ティーチャー・ネットワーク」を拡大しようという考えがうまれたのは、グレーター・ジャカルタ、南東スラウェシ州、北マルク州、バンテン州の21の小・中・高等学校の教師30名が、ジャカルタのサンポエルナ教育大学が主催したマングローブに関するワークショップに参加してからのことだ。

「私たちは、環境問題、特にマングローブに関する問題を学校の教科に取り入れ、侵食や海抜上昇を防ぐためのマングローブ保護区の重要さを生徒に意識してもらうにはどうしたらよいかを学びました」 バンテン州パンデグランにある国立高等専門学校Iの教師、エコワント氏(シングルネーム)はこのように話した。

インドネシアのマングローブ林に関する懸念には理由がある。インドネシア大学院教育課程の人材開発と環境リサーチセンターの講師、アンドレアス・プラムディアント氏によると、インドネシアのマングローブ林は世界のマングローブ保護区の3分の1を占めるが、その規模はここ20年の間に800万ヘクタールから450万ヘクタールへと激減したのだ。

インドネシア南部の南東スラウェシ州ワカトビでは、教師たちは2005年から環境問題の授業と学校活動を融合させて行っている。

写真: フィリップ・バーティレット

写真: フィリップ・バーティレット

有害な家、産業廃棄物、海水汚染、マングローブ林の大々的な住宅地や養魚池への転換などが、その激減の理由だ。

「マングローブ林の破壊は加速するでしょう。私たちは、マングローブの重要性について人々の知識と理解を深め、意識を高めるための教育プログラムやトレーニング、ワークショップを考案しなければなりません」プラムディアント氏は教師たちに語った。

インドネシア南部の南東スラウェシ州ワカトビでは、教師たちは2005年から環境問題の授業と学校活動を融合させて行っている。ワカトビの「グリーン・ティーチャー・ネットワーク」のコーディネーターを務めるマールジ氏(シングルネーム)によると、彼の県では海洋生物(マングローブを含む)について、6年前から、保育園児から高校生にいたるまで教えているそうだ。
「ワカトビは、領土より領海のほうが広いことが関係しているのでしょう」彼は「Mangroves 4 Life」という名のワークショップで語っている。

国のカリキュラムでは、マングローブに関するレッスンはほとんど見られない。ワークショップに参加した教師たちが指摘したところでは、教室で扱われる環境問題は主に公害、絶滅に瀕した動物、森林伐採、3R(リデュース・リユース・リサイクル)、地球温暖化についてである。

「マングローブについての指導がほとんど行われていないのはマングローブとその利用について教師自身があまり知らないからです」西ジャワ州デポックのイスラム学校Al Fauzienの小学校教諭、デウィ・ムシア氏が言う。

北マルク州テルナテの公立中学2の語学教師、シティ・ハワ・A・ラックマン氏はマングローブに関する問題を教室に導入する方法を学んだという。「今では、生徒たちのマングローブ林についての意識を高めるには、マングローブに関する物語を選べばよいのだとわかりました」

「テルナテの教師たちとマングローブに関する知識を共有し、可能であれば、ほかの学校とも(マングローブの植樹と保護に関して)協力し合いたいと思います」ラックマン氏によると、インドネシア北東の北マルク州の7県全ての海岸沿いに大きなマングローブ保護区がある。

サンポエルナ教育大学講師、スティエン・マタクパン氏は前回の研修は、2011年に開催予定の3回の研修のうち2回目だったと説明する。

「次のマングローブに関するワークショップは8月に予定しています。インドネシアと近隣諸国からの参加者がある予定です」氏によると、第一回目は5月に東ジャワ州のプロボリンゴで開催されたそうだ。

「ワークショップによって学校が刺激を受け、マングローブに関する問題を含む環境問題をプログラムに導入し、マングローブ林へ遠足に出かけ、生徒の意識を高めることが目的です」マタクパン氏は教師用研修を行うと決めた理由について、このように説明した。

氏はさらに指摘する。「国内の学校の多くがマングローブ林の近くにあります」

ワークショップで教師たちはマングローブは海洋生物や渡り鳥などにとっての繁殖、子育て、休息の場となるだけではなく、フルーツジュース、シロップ、ジャムなどにも使えるということを学ぶ。

研究はマングローブ保護区の破壊と劣化によって世界の森林伐採によるガス排出総量の10%にも上る可能性を示唆した。

西ジャワ州ボゴール国際森林調査センターとアメリカの農林業省の科学者による共同研究によるとインド洋と太平洋のマングローブには、これまで認識されていた以上に二酸化炭素を貯蔵していることがわかった。気候変動を緩和するための主要な役割としてのマングローブ保護の意義が裏付けられたのだ。

月刊の学際誌「Nature Geoscience」4月号に掲載された研究によると、その炭素のほとんどは、マングローブ林の地中に貯えられている。しかしマングローブ林は熱帯雨林の0.7%にしかならない。さらに、その研究はマングローブ保護区の破壊と劣化によって世界の森林伐採によるガス排出総量の10%にも上る可能性を示唆した。

エコワント氏は約1200人の生徒たちにマングローブの育て方を指導しようと誓った。「私はマングローブの種を集めたので、次の学年度には同僚たちと共に校内で発芽させ、その後パンデグラン県ラブアン地区にある、破壊されたマングローブに植えます」新しい学年度は7月中旬に始まる。

エコワント氏は、バンテンのインドネシア教師会(IGI)の会長も務めており、教師の環境に関する意識と能力を高めるために、州のグリーン・ティーチャー・ネットワークを設立するつもりだという。

また、マタクパン氏は8月のセミナーの際にオンラインフォーラムを開催し、教師が知識を共有し合い、それぞれの学校の環境に関連した活動を報告する場を提供する予定だ。

「フォーラムによって、参加者たちがインドネシア各地の同僚たちと連携を取れるだけではなく、マレーシア、日本、シンガポール、さらにはスウェーデンなどの諸外国の教師たちともつながりを作ることができるのです」マタクパン氏は語った。

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本記事は、開発や環境、人権、市民社会などのテーマを扱う独立系通信社インタープレス(IPS)の許可を得て掲載しています。

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著者

フリーランス・ジャーナリストであるカニス・ダーシン氏は、130国以上の国々にいる370名のジャーナリストを擁するインタープレスサービスに寄稿している。