野菜中心の食事は地球と人間に最適

世界各地で都市が拡大し、収入が増加するなか、ますます多くの人々が菜園と伝統的な食事から離れ、精製糖、精製脂肪、油、そして牛肉のように資源や土地集約型の農産物を食べるようになってきた。こうした世界的な食生活の変化が人間と地球双方の健康を害していると、新しい研究は示している。

しかし同研究によると、この傾向から離れて、より健康的な伝統的地中海食や魚菜食や菜食を選択すれば、人間の寿命や生活の質を向上できるだけではなく、温室効果ガスの排出を削減し、絶滅危惧種の生息地を守ることもできるという。

しかも、急いだほうが良いだろう。この傾向が継続すれば、状況はさらに悪化し、温室効果ガスの排出は2050年までに最大80%増加すると科学者たちが予測しているからだ。

ミネソタ大学で生態学の教授を務めるG・デイビッド・ティルマン氏と大学院生のマイケル・クラーク氏は、世界で最も人口の多い100カ国から収集した約50年分のデータを検証し、ますます増加する農業による温室効果ガスの排出や生息地の劣化に現在の食生活の傾向がどのように影響しているのかを例示した。

それに加え、彼らは次のように記している。「こうした食習慣の変化は、世界的な平均余命を短縮する2型糖尿病、冠動脈疾患、その他の非伝染性の慢性疾患の発生率を大幅に上昇させている」

研究者たちは11月12日の『ネイチャー』オンライン版に発表された論文で、1961年から2009年の間に収入が増加するとともに、人々は動物性タンパク質、「空のカロリー」、および1人当たりの総摂取カロリーをより多く消費し始めたことを発見した。(「空のカロリー」とは砂糖、脂肪、油、アルコールのことで、同研究によると現在、世界で最も豊かな15カ国で購入される食料のほぼ40%を占めるという)

こうした傾向と、今後数十年間での人口増加および収入増加の予測を結びつけて、研究者たちは2050年の食習慣を予測することができた。フルーツや野菜の供給は少なくなり、空カロリーは約60%増加し、豚肉、鳥肉、牛肉、乳製品、卵は20~50%増える。こうした変化は、2型糖尿病や冠動脈疾患や一部のがんの有病率を上昇させることで知られている。

同研究はさまざまな食料生産システムのライフサイクル分析を利用し、現在の傾向が広く普及した場合、2050年のこの食習慣では、食料生産から生じる温室効果ガスの排出は80%増加すると推計した。また、世界各地での農地開墾による居住環境の破壊が生じることもしかりだ。

「寿命を約10年延ばし得る食生活への移行は、環境への大規模なダメージも防ぐことができることを、私たちは示しました」とティルマン氏は語った。彼はミネソタ大学の生物学部教授であり、Institute on the Environment(環境研究所)のレジデント・フェローである。

「とくに、もし世界が先に述べた3つの食事のバリエーションを取り入れた場合、健康が大幅に向上すると同時に、世界の温室効果ガスの排出量はすべての乗用車、トラック、飛行機、電車、船から生じる現在の排出量に匹敵する量を削減できるでしょう。さらに、こうした食生活への移行は、アメリカの半分の広さに匹敵する熱帯林やサバンナ地帯の破壊を防ぎます」

この研究は、世界で見られる雑食性の食事が健康に及ぼす影響と、伝統的な地中海食や魚菜食や菜食の場合とを比較した。これらのオルタナティブフードを取り入れた場合、雑食性の食事に比べ2型糖尿病の発生率は約25%減少し、がんの発生率は約10%減少し、心臓病による死亡率は約20%減少する。

食習慣の変化および世界人口の増加によって引き起こされる更なる温室効果ガスや居住環境の破壊も、こうしたオルタナティブフードやそれに近い食事を取り入れることで、ほとんど、あるいは完全に回避される。

研究者たちは、数多くの要因が食事の選択を左右することを認めている。しかし、オルタナティブフードはすでに、世界中で数え切れないほど多くの人々にとって生活の一部であるとも指摘する。

「このデータがまとめられ、これらの関連性が現実かつ密接であり、食を愛する人々や環境活動家の単なるつぶやきではないことを示したのは、今回が初めてです」とティルマン氏は語った

筆者たちは、このシナリオで用いられた食のバリエーションは更なる恩恵をもたらす可能性があることを指摘し、次のように結論づけた。「食と環境と健康という結びつきの強い3つの難しい課題に対し、食習慣による解決策を評価、実行することは、世界的な課題であり、また環境と健康の問題解決において極めて重要なチャンスでもあります」

ところで、この論文は、異なる食の選択による環境への影響について、数々の詳細な調査結果を報告している。覚えておくべきいくつかの事柄を以下に記す。

翻訳:髙﨑文子

著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリスト。グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。