原子力は化石燃料よりマシという意見

4人の著名な気候およびエネルギー科学者が環境活動家たちに対し、原子力エネルギーへの長年にわたる反対を再考するように要請した。彼らは「原子力に大きな役割を担わせなければ、気候安定対策に信頼できる進路」はないと警告している。

この警告は、来週ポーランドで開幕予定の国際気候会議の新たな会期を目前にして発表された。今回の気候会議は2015年以降の気候変動緩和策について国際的な合意をまとめるのが目的である。しかし、今世紀末までの地球の平均気温の上昇をセ氏2度未満に抑えるという現在の目標を達成させることが、今回の交渉によって可能になるかについて、観測筋は悲観的だ。

この新しい要請は書簡という形式で、世界の指導者や著名な環境活動家や環境保護団体に週末にかけて送られた。特に注目されるのは、NASAの元科学者であり、気候変動が引き起こす危険について数十年にわたり執筆してきたジェームズ・ハンセン氏が書簡に署名していることだ。彼は恐らく今日のアメリカで、この問題について発言している唯一かつ最もよく知られた研究者だ。

「環境政策に影響を及ぼし、原子力エネルギーに反対している人々」に送付された書簡に名を連ねたのは、さらに2人のアメリカ人科学者、ケン・カルデイラ氏とケリー・エマニュエル氏、そして1人のオーストラリア人のトム・ウィグリー氏である。彼らはそれぞれ、主要な研究機関の関係者だ。

「私たちは、貴機関の地球温暖化に関する懸念、および再生可能エネルギーへの支持を高く評価しています。しかし、原子力への反対を継続すれば、危険な気候変動を回避するための人類の能力を脅かします」と4人は記している。

「かつてないほどの速さで地球の温暖化が進み、二酸化炭素排出量が増加する現在、炭素排出量の大部分に取って代わる可能性を持ついかなる技術に対しても、背を向ける余裕はありません。1970年代以降、状況は大きく変わりました。21世紀における原子力への新たな取り組みの時がやって来たのです」

現在、原子力エネルギーはアメリカの電力需要のおよそ5分の1を賄っている。世界的に見ると、この数字はわずかに低く、2011年時点で原子炉を有する30カ国が世界の電力生産の約12パーセントを供給していた。

アメリカのロビー団体である原子力エネルギー協会(NEI)によれば、今年7月、世界では約434基の原子炉が操業していた。さらに71の新しい発電所が建設中であり、そのうち2カ所はアメリカ国内の発電所だ。

公開書簡の中で、4人の科学者たちは再生可能な電力生産の方法を支持しながらも、その方法では急増する世界のエネルギー需要に対応することが不可能のようだとしている。彼らはまた、新たな原子力発電所の設計は旧式の原子炉よりも安価で、「はるかに安全」であり、新しい焼却方法なら「廃棄物処分の問題を解決」できると示唆している。

この書簡は原子力業界に喜んで受け入れられている。同業界は何年もの間、環境や安全性への懸念により停滞し続けてきたと、多くのアナリストは示唆している。

「書簡は、この数年、明らかになりつつあった現象を浮き彫りにしました。つまり、有力な環境活動家たちの原子力エネルギーへの賛同が着実に増えてきたのです」と、原子力エネルギー協会のマーヴ・ファーテル会長が声明文でIPSに語った。

「原子力エネルギー施設が炭素ゼロの電力源によって世界の電力の40パーセント(アメリカでは63パーセント)を供給しなければ、温室効果ガスの排出量は大幅に増えるでしょう……この分析はますます多くの人々に認められています」

高価で、時間が掛かり、リスクが高い

ジェームズ・ハンセン氏が支持派に加わったことは注目に値するが、実のところ、気候変動に直面して原子力を公に支持し始めた環境活動家の数は相変わらず少ない。

環境活動家たちは書簡に対し、敬意を払いながらも断固とした拒絶反応を示している。

「(私たちは)4人の科学者に敬意を払い、彼らの長年の貢献に感謝しています。残念ながら今回の件については、彼らとの意見の相違を認めるしかありません」と、環境保護団体のシエラクラブ会長のマイケル・ブルーン氏はIPSに語った。

「私たちは、気候の危機が現代の最も切迫した課題であるという点では同じ意見を共有しています。しかし気候の脅威と闘うには風力や太陽光や(エネルギー)効率化の方が、速くて安価で安全な方法であることを書簡の署名者たちは認めていません」

ブルーン氏は、原子力発電所は「あまりにも高価で、建設に時間が掛かりすぎ、リスクが高すぎる」と語る一方で、ドイツの例を挙げた。世界最大の経済国の一つであるドイツは現在、再生可能エネルギー源への大規模な投資に力を注ぎながら、原子力発電所を閉鎖しつつある。

実際、環境団体は再生可能エネルギーの低価格化をますます声高に吹聴している。風力エネルギーは過去3年間で約43パーセント安くなり、太陽光発電は80パーセント安くなった。その一方、原子力の経済は近年、以前よりもさらに複雑になり、アメリカの数カ所の原子力発電所は採算性の問題により閉鎖されている。

さらに多くの再生可能エネルギー技術が現在、実用に向けて準備が整っている一方で、1カ所の原子力発電所を新たに建設するには10年を要する。昨年、アメリカの研究組織である国立再生可能エネルギー研究所が発表した主要報告書によると、現在利用可能な再生可能エネルギー技術によって、2050年までにアメリカの電力需要の80パーセントを供給できるという。

書簡の中でハンセン氏と他の科学者らは、原子力発電をより安価で安全にする新技術についてほのめかしているが、そのような技術のほとんどは、まだ実証されていない。

「このような懸念に対処できるのだと原子力エネルギーの支持派が主張する技術は、確かに存在するのですが、それらの技術には実証された実績がなく、まだ大規模な実用に至っていません」とスティーヴ・クレマー氏はIPSに語った。クレマー氏は、憂慮する科学者同盟(UCS)の気候およびエネルギープログラムでエネルギー研究ディレクターを務める。

「今回の書簡が具体的にどの技術について言及しているのか、明確に分かればよかったと思います。署名者たちは提案を裏付ける情報を明らかにしていないのです。環境団体を説得するつもりなら、しっかりとした技術的情報を提供する必要があります」

UCSは長年、原子力の安全性と価格という問題に注目してきた(アメリカで建設中の原子力発電所に関する分析はこちらでご覧いただけます)。しかし、UCSは原子力エネルギーの未来を完全に否定しているわけではない。

「気候問題は非常に重大であり、排出量削減の必要性は甚大かつ切迫しているため、私たちは気候変動への解決策の一つとして、原子力を選択肢から除外したくないのです」とクレマー氏は語る。

例えば、アメリカだけでも、2050年までに少なくとも80パーセントの排出量を削減しなくてはならない見込みだ。

「そうであれば、私たちは、炭素排出量を削減できる原子力やその他の技術の研究と開発といった行動を絶対的に支持します。そしてできる限り多くの選択肢を自由に選べるようにしたいのです」とクレマー氏は続けた。

「しかし私たちが今、置かれている状況については、また別の話です。安全保障、原子力の拡散、安全性、廃棄物処理といった原子力エネルギーをめぐる懸念によって、私たちは原子力エネルギーの大規模な展開を許す立場にはありません。その一方で、太陽光や風力テクノロジーは、原子力の持つリスクがなく、急速に低価格化しているのです」

翻訳:髙﨑文子

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著者

キャリー・L・ビロン氏はインタープレスサービス(IPS)およびミント・プレス・ニュースのワシントン特派員で、開発、アカウンタビリティー、国際ガバナンスに関する記事を執筆している。