SDG 16: 平和と公正をすべての人に

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、目標16(SDG16)は国連で初めて、開発と平和、公正、より良いガバナンスを正式に関連づけ、真にもたらす目標とみなされた。目標16達成のために設けられた意欲的なターゲットには、あらゆる形態の暴力の大幅な削減、子どもに対する虐待と暴力への終止符、法による支配の推進、不正な資金の流れと腐敗の減少、そして責任と透明性のある制度の開発が盛り込まれた。

しかし、目標16はすんなりと採択されたわけではない。多くの国は、平和と安全はともかく、公正の観点が開発の領域に含まれることに異議を唱え、目標16の削除を望んだ。その一方で、この目標が自国にとって重要であり、2030アジェンダを支援するか否かは、この目標に合意できるかにかかっていると主張する国もあった。

これらの議論から約3年が経った今、目標16の達成に向けた進捗状況には隔たりがあり、現在の実施率で達成可能なのかという大きな疑問が持たれている。カナダを含め、すべての国で課題が持ち上がっており、現状の動向を考えれば、特に暴力に関するターゲットについては、問題がさらに深刻化する可能性が高くなっている。

暴力は全世界で増えているだけでなく、ますます複雑化、多次元化している。過去15年間で、世界人口のほぼ半数が政治的暴力の影響を受けており、特に所得が相対的に低い国々は、武器を用いた暴力による被害を不当に多く被っている。とはいえ、先進国も無関係ではない。先進国の各所で、異なる形態の暴力が台頭しているからだ。カナダ国内でも、特に女性や子供に対する暴力、殺人への対処について課題を抱えている。

カナダは、目標16のその他関連領域でも課題に直面している。先住民にとっての公正の問題は多く議論されてきたが、過去40年間で十分な取り組みはなされていない。また、越境組織犯罪と不正な資金の流れへの包括的な対処も、達成しにくい目標となっている。

地方の優先課題と、国家戦略との関連づけが課題となるだろう

目標16の実現に努める国々に共通する障壁は、信頼できるデータの大幅な不足である。これにより、目標に盛り込まれた各ターゲットの進捗状況の測定が困難になっている。特に脆弱な紛争被災国では、データが不完全・不十分であったり、まったく無かったりする場合が多い。世界の国々の間には、指標データの収集、監視、追跡能力に大きな隔たりがある。

しかも、目標16の達成に向けた障壁は、都市部で増えている。都市人口は2050年までに70%近く増大する見込みだが、都市の殺人事件発生率は農村部を上回る。急速で野放しな都市化、不平等や失業、暴力の蔓延、重要なサービスへの劣悪なアクセス、気候変動への脅威。これらは「脆弱都市」の特徴的な課題である。これらを見ると、目標16は地方レベルで取り組む必要があるとわかる。

目標達成に向けたペースを加速するために可能なアプローチの1つとして、全国レベルの政策と地方レベルの政策を関連づける、地方自治体への支援強化が挙げられる。

すでに多くの国や地方自治体がこの認識に立っており、新たな制度の取決めや調整経路は、効果的で責任と透明性のある制度と、より大きな対応力、包摂性、参加性、代表性を備えた政策決定を下支えする必要がると主張している。地方自治体がコミュニティ対応力を高め、国家が目標16を実現するためには、これらが欠かせない。

これらを実証する取り組みも進行中だ。予算作成や、都市住宅、サービス供給、スラムの居住条件の改善などに対し、新たな形態の参加型政策決定を行うことで、治安と都市部の安全が向上している。関連情報と、革新的なデータ駆動型(分析したデータを未来予想・意思決定などに役立てる)の解決策を国際的、全国的に共有しようとする地方自治体も出てきた。

しかし、地方の実質的な優先課題と国家の戦略との関連づけは課題となっている。例えばカナダでは、SDGsの環境側面を重視する「連邦持続可能な開発戦略(2016-2019)」が、安全、安心で持続可能なコミュニティの形成を1つのねらいとしているにもかかわらず、実施進捗状況では目標16が十分に反映されていない。しかし州レベルでは、具体的な言及こそないものの、多くの戦略が雇用や教育、環境の懸念を重点事項に掲げ、SDGsを重複している。但し、暴力と公正はあまり対象とされていない。

全世界的に、特に比較的貧しい国々にとって、目標16の達成は気の遠くなるような課題だ。参考とされるターゲットや指標の多さも、集中力を削ぎがちだ。中には、2030アジェンダの潜在力を社会の活性化に役立てながらも、その意欲と対象範囲が大きすぎるため、無力感を感じている国もある。これは、すべてを含むアジェンダを策定しようとする、本来であれば賞賛すべき国連の取り組みに事実上、明らかな否定的側面があると示している。

2019年に目標16を再検討する「国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)」は、各国政府がその成果を披露する場となるだろう。それまでの間、あらゆる国で、目標達成に向けた国内政策を実施するための取り組みを強化する必要がある。全国レベルと地方レベルの連携を改善すれば、正しい方向にあゆみを進めるられるだろう。

本稿は、覚醒(Awakeningと題するカナダ、オンタリオ州副知事が編集した持続可能な開発にまつわる小論・イラスト集からの抜粋である。

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著者

デイビッド・マローンは、外交官として国連のカナダ大使(1990-1994年)をはじめ、国際平和アカデミー(現国際平和研究所)所長や、カナダ駐インド高等弁務官、ブータンおよびネパールの非常駐大使、国際開発研究センターの総裁を務めた後、201331日より現職。
モントリオール商科大学経営学士、ハーバード大学ケネディ行政大学院行政学修士 、オックスフォード大学にて国際関係の博士を取得。
著書に『The UN Security Council in the 21st Century 21世紀の国連安全保障理事会)』(共編、2015)、ほか。

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