「風」に接続

旅行中に遠くの丘に回るタービンを見かけたり、風力発電所についての話を聞いたりしたことがあり、もし地元の電力会社が風力発電を提供してくれれば、それを利用したいと思っている人も
気候変動対策の一環として、また減少しつつある化石燃料へ依存を減らすために、世界各国でも再生可能エネルギーの生産目標を拡大している。風力発電は本当に注目を浴びているのか、それとも単なるPR戦術なのだろうか?

その答えは、下記の国別グラフに示されている。風力エネルギーの開発は従来、化石燃料の可用性や国民の反原発感情などにより、地域ごとに異なってきた。

2008年風力容量トップ10

出典: 世界風力エネルギー協会

しかし今日、世界各地で大きな変革の波が押し寄せている。再生可能エネルギー資源を模索する中で、風力は今、かなりの注目を集めている。

欧州風力エネルギー協会によると、2008年、ヨーロッパの風力発電は大幅に伸び(新エネルギー生産容量の43%が風力発電)、大陸全体の風力発電容量は142Twhに達した。

この発電容量は、EU全体の電力需要の約4.2%に相当し、年間1億8000万トンのCO2排出削減、つまりヨーロッパ中で5000万台の自動車が排出する量に匹敵する。

欧州には、風力エネルギーの導入に長年、積極的に取り組んできた国々がいくつかある。例えばデンマークでは、20年間にわたり、風力発電への助成金支援や投資者に優遇税制措置を講じてきており、現在では全エネルギー供給の20%を風力でまかなっている。また、風力エネルギーをプラグ接続式(プラグイン)の電気自動車に利用するプロジェクトも始まっている。

これまで風力発電容量では世界をリードしてきたドイツ。現在、エネルギー供給の7%を風力で(再生可能エネルギー資源の14%)生産するに留まっているが、技術ノウハウでは世界一を誇っている。

さらに驚くことには、増え続けるエネルギー需要に答えるため、インドと中国で風力発電開発が急ピッチで行われている。昨年、中国のエネルギー供給量は4年連続で2倍に拡大した。

しかし、2008年、風力エネルギー分野でもっとも飛躍的進展を果たしたのは、アメリカだ。アメリカの電力発電容量はヨーロッパとほぼ肩を並べ、さらには風力発電No1のドイツを抜き勢いを増している。

2008年風力発電普及トップ10

出典: 世界風力エネルギー協会

米国・風力タービン
フィーバー

アメリカでは、ゼネラルエレクトリック(GE)のような旧体制のエネルギー会社も、将来の利益を見込んで、風力産業に積極的に参入している。GEをはじめその他の大手企業も、風力エネルギー分野で経験豊富な中小企業の買収を図っている。発電容量、技術、技術革新の部門で、業界トップに躍り出ようというのだ。

テキサス州の石油王であるT.ブーン・ピッケンズ氏のような大富豪も、風力発電に乗り出している。

投資会社BPキャピタルの設立者・会長であるピッケンズ氏は、アメリカの風力発電容量を高めようというプランに拍車をかけるため、昨年の夏、ソーシャルネットワーキングサイトを立ち上げた。アメリカのエネルギー需要の22%を風力で補おうというものだ。

オバマ政権も先週、140項にわたる予算案を提出し、政治的(また経済的)刺激を与えて、風力エネルギーの推進に努めている。

「クリーンエネルギー経済を創出するため、国内の再生可能エネルギー容量を2倍にするため、今後3年間に投資を行う。」

そのためには、風力をはじめとする再生可能エネルギー資源の研究を大幅に拡大する予定だ。また、風力と従来のエネルギー資源を統合させるため、スマートグリッド技術の開発にも力を入れるとしている。

無論、このニュースは環境保護主義者たちにとって朗報で、この政策は世界が徐々に石油依存から脱却する、前向きな流れである。

米国風力エネルギー協会(AWEA)の元事務局長であるランダル・スウィッシャー氏も、「もはや、“風”は取るに足らない資源ではなく、将来の発電源としての有望な新資源である」と述べている。

日本は躓いているのか?

しかし、その他の国々は、風力エネルギー産業の開発に尻ごみしている。世界風力エネルギー協会の最新評価によると、日本は現在、風力発電で世界13位に位置している。

日本は風力に恵まれた地域でありながら、この自然の恵み、さらには自国の技術力を無駄遣いしている。国内での投資機会がないために、多くの日本企業は海外の風力発電プロジェクトに大金を投資しているのが現状だ。

「日本政府は原子力を推進しており、そのため、風力発電に必要な許認可を保留したり、市場再編が起きるのを妨げているのだ」と専門家は指摘する。

また、東京を拠点とする環境エネルギー政策研究所の事務局長である飯田哲也氏は、「日本の風力エネルギー成長を妨げているのは各地域の電気会社である」とグリーンテック・メディアに語っている。

「それらの電気会社は、地域の中で、機能面、そして政治面で、独占企業のように振る舞っている。」と飯田氏は述べている。「彼らは自ら法律を定め、風力エネルギーを締め出したい考えなのだ。」

日本は、自らのグリーン政策を再検討し、再生可能エネルギーを積極的に推進する必要がある。世界中で起きている変革の風が、じきに東京にも訪れることを願ってやまない。

風力発電の障壁

国際エネルギー機関(IEA)は、「2008年版世界のエネルギー展望」の中で、現在のエネルギー路線が非持続的な軌跡を辿っていると警告している。同機関の事務局長・田中伸男氏は、2050年までに世界のエネルギーの50%を再生可能な資源でまかなう必要がある、と先週、警鐘を鳴らしたばかりだ。

これまで、再生可能エネルギー導入を遅らせていると非難を受けていたIEAにとっても、これは大きな好機だ。

しかし、これだけでは不十分だとする意見もある。例えば、報告書「風力発電の意義:エネルギー部門におけるクリーン革命」は、風力発電が開発されてから長い歳月が経っており、今こそ注目される時がきていると説明している。

この報告書では、太陽、水力、バイオマス、地熱などの従来の自然エネルギー資源に「風」も加われば、再生可能な発電が100%可能になり、これは21世紀半ば頃までに達成可能な目標であると予測している。

果たして、これが我々の次なる目標になるのだろうか? それとも不可能な夢物語に終わるのだろうか?

Creative Commons License
「風」に接続 by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
Based on a work at http://ourworld.unu.edu/en/plugging-into-wind/.

著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリスト。グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。