雑草を見直す:アマランサスの真実

自然が過剰な除草剤散布に抵抗力を得るのは時間の問題だった。なかでも悔やまれるのは、グリホサート(モンサント社が発売した除草剤「ラウンドアップ」の成分として有名)の開発だ。このグリホサートの出現以降、アメリカ農業は、「ラウンドアップ」を散布しても枯れないよう遺伝子操作されたトウモロコシや大豆、綿の栽培に依存するようになった。これらの遺伝子組み換え(GM)作物もまた、モンサント社による開発だ。

数年前から雑草の除草剤耐性に関する研究結果が報告されるようになったが、問題は膨らむばかりだ。ニューヨーク・タイムズ紙は「スーパーウィード(除草剤耐性雑草)の台頭」として、除草剤耐性雑草と薬剤耐性菌の類似性を警告した。この現象に、約22の州と数百万エーカーの土地が被害を受けたと言われている。とりわけ「パルマー・アマランス」と呼ばれ、グリホサートに対して強い抵抗性を持つブタクサの一種が問題となっている。

モンサント社は、遺伝子組み換え種子とラウンドアップがもたらす免れない障害に、かなり前から気付いていたように思われる。同社は、10年ほど前から「高性能」ラウンドアップの試作を始め、来るべきスーパーウィードの問題に対処しようとしてきた。しかし今日、効果のない高額商品は農家の家計を圧迫し、収穫高を減らすばかりだ。

モンサント社のウェブサイトでは、グリホサートと2,4-Dのような古い(余った)除草剤を混合して使用することを農家に勧めている。2,4-Dは、癌の発症、生殖への危害、さらには精神疾患との関連性から、スウェーデン、デンマークおよびノルウェーでその使用が禁止された薬品だ。また、60年代にベトナム戦争で使用された化学兵器、枯葉剤の成分としても有名だ。想像してみて欲しい。ベトナムで使われた枯葉剤がついにアメリカに戻り、今度は耐性雑草と戦っているのだ。これはベトナム戦争の続編だろうか

それでも雑草と呼ぶのか?

それでは、悪名高きブタクサとは一体どのような雑草なのだろうか。まず、その名前がこの植物を悪者にしている。一体誰が「豚」と「雑草」を組み合わせた名前を持つ植物など好むだろうか。

ブタクサについてこれ以上話を進める前に、まずはその威厳ある本名について触れておこう。ブタクサとはアマランサス属の野生種を指す通称だ。アマランサスは、ギリシャ語の「amarantos」に由来しており、枯れない、色褪せない花を意味している。

アマランサスには様々な種があり、一部は栄養価の高い葉(ホウレンソウと比較される)や穀物(種子)のために食用として栽培されている。とりわけ北米では、いくつもの野生種が「ブタクサ」の名で呼ばれており、その一部はグリホサートに耐性を持つ雑草として関心を集めている。

(雑草と見なされる種類も食用に適しており味も栽培されたものに近いが、サイズが小さく、葉や穀物の収穫量が少ないとされる)

アマランサスには様々な種があり、一部は栄養価の高い葉や穀物のために食用として栽培されている。

実際、アマランサスの花は長期間その赤い色を保ち続ける。しかし、「色褪せない」のは花だけではなく、植物自体のしぶとさにも言えることだ。アマランサスは酸性からアルカリ性まで、あらゆる土壌で成長し、様々な気候条件に耐えることができる。野生種は自生することもでき、乾燥した土地でも育つ。中にはグリホサートが散布された土地でさえ生き延びるものもある。まさに「枯れない」植物なのだ。

天からの贈り物

私とアマランサスとの関係は1983年ごろに始まった。その頃、私は自分が経営するCloud Cliffベーカリーのために特別なパンを焼きたいと考えていたのだ。当時、Cloud Cliffはニューメキシコ州サンタフェの小さな会社に過ぎなかった。その土地ならではのタンパク質や珍しい栄養素(ミネラルやビタミンなど)を豊富に含むパンを作りたいと考えた私は、ローデル研究所を通じてアマランサスを知ったのだ。アマランサスは世界中の多くの人々によって長年栽培されてきた。その中には、この植物を儀式の一部として、または主食として大切にしてきた古代ローマ人やアステカ人も含まれる。

米国学術研究会議が出版した書籍によると、アマランサス種子のタンパク質含有量は16%で、広く消費されている小麦や米、トウモロコシよりも多い。さらに驚くべきことに、アマランサスのタンパク質消化率は90%で、問題を伴う大豆や牛乳、小麦といった食品よりもはるかに高い。

アマランサス種子には、一般的な穀物よりも多い5%から9%の高品質な油が含まれており、この油の中にはトコトリエノール(比較的珍しいビタミンEの一種)やスクアレンなど、様々な抗癌性物質が確認されている。

一部の地域・文化では過小評価されているが、この植物は実に栄養分が豊富なのである。アマランサス・クルエンタスという種類にいたっては、種をつけるばかりか野菜として食べることもできる。

メキシコではアマランサスが屋台で売られるお菓子の材料に使われている。

その種子は小さく硬い。そして、人間の体で消化するためにはいくらかの加工を必要とする。しかし、他の穀物と同様、調理方法はシンプルで簡単だ。まず、種子を洗い、茹でるだけで簡単にポリッジ(お粥のようなもの)が作れるし、代わりにトーストすれば、風味も増しそのまま食べられる。メキシコや中米では、加熱して弾けさせたり膨らませたりするのが一般的だ。私はアマランサスを使ったパン作りを研究し、種子を発芽させて柔らかくしてからパンに加えるとい方法に行き着いた。必要なアマランサス種子は、ニューメキシコとネブラスカの試験用農場で栽培した。

Cloud Cliffの「アステカ・アマランサスブレッド」は私の初めてのヒット商品となり、パンの味だけではなく、その健康面でのメリットが人気を博した。26年経った今でも、私はアマランサスを使ったパンを焼いている。私たちの未来を担うこの古代穀物への尊敬を忘れずに。

一言で言うならば?

アマランサスを「ブタクサ」や「スーパーウィード」と呼ぶ動きは、モンサント社やその罠に陥った人々の策略なのかもしれない。1984年、ニューヨーク・タイムズ紙で始めてアマランサスが取り上げられた時、ジェーン・ブロディ氏は次のように書いている。

「農業研究者たちは、この太古からの贈り物を、アメリカ国民や世界中の人々にタンパク質とミネラルを供給してくれる”未来の穀物”として、慎重に歓迎している。」

そして26年後の現在、アマランサスに関する記事がニューヨーク・タイムズに再び掲載された。しかし、今回はブタクサと呼ばれ、強力な侵入雑草としてのみ扱われている。これは、人々の認識が言葉によっていかに左右されるかを示す一例だ。つまり、アマランサスをスーパーウィードと呼び、その気高い伝統と未知の可能性を無視することは、(枯葉剤で使われていた有毒除草剤を復活させるという)解決法をいかにも合理的に見せるために仕組まれたイデオロギーなのだ。

私たちは、侵入雑草の問題をまったく異なる角度から見直していかなければならない。そして幸運にも、私たちはその機会に恵まれた。タンパク質を豊富に含むアマランサスの種子頭部は、2パウンドもの重さに達し、比較的簡単に収穫できる。アマランサスは他の植物が育たない土地でも立派に成長する。多くの土地をGM作物の栽培に使う現代、アマランサスは自然界からの贈り物と言えるだろう。

想像力を身につける

そこで問題になるのは、アマランサスをどう除去するかではなく、それをどうやって粉末やパン、キャンディ、高品質な粗飼料に加工し、資源集約的なタンパク質(家畜など)に高度に依存している国々の市場に届けるかだ。さらに、食糧を確保できず飢餓が発生している国とは、製品や栽培に関する知識を共有していかなければならない。{こう ひんしつ そしりょう}

栄養失調はサハラ以南のアフリカの国々に蔓延している。栽培が簡単で栄養素を豊富に含む食物は、自給自足農業を営む社会の栄養と食糧安保を強化してくれる。アマランサス・クルエンタス(種子と野菜の両方を兼ね備えた種)は、栽培が容易く、栄養源としても優秀だ。しかも、熱帯地方で最も高収量の葉物野菜でもある。

アマランサス・クルエンタス(種子と野菜の両方を兼ね備えた種)は、栽培が容易く、栄養源としても優秀だ。

これで、なぜ私が、アマランサスがブタクサと呼ばれる最近の風潮に怒っているかおわかり頂けたと思う。毒薬などより、このスーパーフードとも言える野生植物のほうが研究開発に値するのではないだろうか。

残念なことに、企業化農業が出現する以前は、農家は今よりも自立して抜け目がなかったように思われる。彼らはいつでも、他人が目を向けない場所にチャンスを見出そうとしていた。歴史にはこのような例が数多くあるが、一つだけ引用してみよう。

「ライ麦は、祖末にされた植物の反逆という形で突如世界に現れた。肥沃な小麦畑に囲まれた黒海沿岸の街、ポントスの港では、南ロシアへ運ばれる穀物の種子が船に積み込まれていた。その時、誰も気に留めない雑草が数本、穀物の中に入り込んだ。しかしここで注意して欲しい。種蒔きの時期が来て、ロシアの土壌は小麦には厳しすぎると人々が気づいたとき、力強く育ったのはその雑草だったのだ。このようにして、またたく間に栽培されるようになった雑草がライ麦である。種を蒔いた人々は、このアクシデントを賢く利用した。そして、それから数百年の間に、繰り返される小麦栽培で痩せてしまった多くの土地にライ麦が広まっていった。」-(H.. E.. ジェイコブ Six Thousand Years of Bread (6,000年のパンの歴史) 1944年)

そこで、私は研究や技術、食事療法の方向を転換し、アマランサスをより幅広く食に取り入れていくことを提案する。数百万エーカーの土地にアマランサスを栽培できるかもしれない。アマランサスは私たちへのギフトだ。この贈り物を活用していく方法を学ばなければならない。

翻訳:森泉綾美

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雑草を見直す:アマランサスの真実 by ウィレム・モルテン is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDerivs 3.0 Unported License.

著者

ウィレム・モルテンはパン職人、映画監督および地域活動家であり、ニューメキシコ州サンタフェにCloud Cliffベーカリーを経営している。自生小麦の有機栽培の再興を支援しており、1993年にはThe Northern New Mexico Organic Wheat Project(ニューメキシコ北部有機小麦プロジェクト)の立ち上げに尽力した。モルテンは、エミー・グッドマンやグレッグ・メロに焦点を当て、核兵器と市民の反抗を取り上げたドキュメンタリー映画「Cry at the End of the 20th Century」(20世紀末の叫び)を監督した。また、ペルーの熱帯雨林に居住するシピボ・コニボ族と共同で女性の成人式に関する映画を制作し、音楽はコレオ・アエレオが、ナレーションはジーン・ハックマンがそれぞれ担当した。その他、Ecoversity TVで放送される養蜂や日干しれんが、藻類、太陽、持続可能性に関するショートフィルムの制作も手がけている。母国であるオランダのアムステルダム大学で文化人類学の修士課程を修了し、アラモス研究ブループ(Los Alamos Study Group)の責任者を長年勤めている。また、Vortex Politicoというブログに定期的に記事を掲載している。

ウィレム・モルテンはパン職人、映画監督および地域活動家であり、ニューメキシコ州サンタフェにCloud Cliffベーカリーを経営している。自生小麦の有機栽培の再興を支援しており、1993年にはThe Northern New Mexico Organic Wheat Project(ニューメキシコ北部有機小麦プロジェクト)の立ち上げに尽力した。モルテンは、エミー・グッドマンやグレッグ・メロに焦点を当て、核兵器と市民の反抗を取り上げたドキュメンタリー映画「Cry at the End of the 20th Century」(20世紀末の叫び)を監督した。また、ペルーの熱帯雨林に居住するシピボ・コニボ族と共同で女性の成人式に関する映画を制作し、音楽はコレオ・アエレオが、ナレーションはジーン・ハックマンがそれぞれ担当した。その他、Ecoversity TVで放送される養蜂や日干しれんが、藻類、太陽、持続可能性に関するショートフィルムの制作も手がけている。母国であるオランダのアムステルダム大学で文化人類学の修士課程を修了し、アラモス研究ブループ(Los Alamos Study Group)の責任者を長年勤めている。また、Vortex Politicoというブログに定期的に記事を掲載している。