E-wasteリサイクルにおいて貧困国と富裕国をつなぐ

1990年代以降、電気・電子機器は人々の生活に変革をもたらしてきた。そして、技術革新がますます進歩するとともに、私たちが使う機器の寿命は全体的に短くなっている。つまり、電子廃棄物(E-waste)は急増しているということだ。

実際に、『E-waste Monitor 2014 — Quantities, flows and resources(世界のE-wasteモニター2014年:量、流れ、資源)』(国連大学から近日出版予定の報告書)でKees Baldé(キース・バルデ)氏その他は、E-wasteの年間排出量が現在の4100万トンから2017年には4700万トンに増えると予測している。多くの電子製品には貴重な素材だけではなく有害な物質も含まれているため、上記の予測は廃棄物管理にとって課題である。

使用済み機器は再利用のために開発途上国に輸送されてもいるが、それでも、その多くは最終的にE-wasteとなることは、これまでにも言われてきた。多くの国でよく見られる低水準の非正規リサイクルは、環境を汚染し、人々の健康を危険にさらす。

しかし今、もっと複雑な状況が見えてきている。2013年以降、開発途上諸国と過渡期にある国々は、いわゆる先進工業国よりも多くのE-wasteを排出しているのだ。『世界のE-wasteモニター2014年』によると、例えばラテンアメリカは昨年、世界の山のようなE-wasteの一部として約395万トンを排出した。

開発途上国が自らの力でこうした廃棄物をより適切に処理できるようになるまでは、問題に取り組むための革新的なモデルが必要である。そして、そのモデルの1つはすでに展開されている。

乏しいE-waste管理規制

ラテンアメリカの21カ国のうち、E-wasteに関する管理規制が導入されているのは、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、メキシコ、ペルーのみである。しかし国家戦略がないため、管理規制のほとんどは地域レベルでしか機能していない。

また、責任あるリサイクルに対して国際的に認められた規格である、R2認証を受けた施設は、ブラジル、コスタリカ、メキシコにしかない。その原因の一部には、限られた法的要件、リサイクル工程での汚染管理に対する認識不足、訓練機会の不足がある。

全体として、ほとんどの開発途上地域において、回収、前処理工程(廃棄物から部品を取り外すこと)、最終処理工程(素材の精製や処分)といった異なる段階を通したE-wasteの管理をするシステムが欠如している。しばしば、技術移転やリサイクル産業の高度化を支援する資金が不十分である。現代的なインフラを構築するには、十分な技術的ノウハウと、産業設備や環境管理対策への大規模な投資が必要である。

非公式経済部門が広く関与していることも、消費者からE-wasteを回収するための効率的なシステムの構築を困難にしている。消費者の低い意識もまた障壁になっている。

世界的なリサイクル

しかし、手頃な費用で環境に優しいリサイクル手法を開発途上諸国に提供する方法はある。地域での解体作業と、素材をさらに精製することができる世界のインフラネットワークの間で協力体制を整えるのだ。

これは、国際的な「リバースサプライチェーン」を通して実現可能である。さまざまな場所にある処理施設が、異なる素材や異なる処理段階に適したリサイクル対策を実行できるように協力するのだ。

このようなコンセプトは、国連大学が調整役を担う電子廃棄物問題を解決する(StEP)イニシアチブの参加組織によってすでに展開されている。コンセプトはBest-of-2-Worlds (ベスト・オブ・2ワールズ、Bo2W)と呼ばれ、最新の国際的な最終処理施設におけるベストプラクティスの技術面と物流面を統合する狙いだ。

ベスト・オブ・2ワールズのモデルは、すでに開発途上諸国で行われている最もすぐれた前処理工程(手作業による解体)と、国際的な処理施設ネットワークの中で最もすぐれた最終処理工程(素材の精製と処分)を結びつける。

解体はE-wasteから素材と部品を分離する非常に効率的な方法であり、労働コストが低く、設備があまり必要ないため、採算の合う方法でもある。同時に、回路基盤やバッテリーといった部品は、開発途上諸国では通常は利用できないハイテクな処理を施す必要がある。Bo2Wのコンセプトでは、そのような部品は安全で効率的な精製と処分のために世界各地の施設に送られる。

このようにして、同イニシアチブは、すでに開発途上諸国で行われている最もすぐれた前処理工程(手作業による解体)と、国際的な処理施設ネットワークの中で最もすぐれた最終処理工程(素材の精製と処分)を結びつける。

環境への影響を削減する

StEPの参加組織は、Bo2Wコンセプトと従来のリサイクルの流れを、環境や経済の面でのパフォーマンスで比較する評価を数回実施してきた。従来のリサイクルの流れとしては、解体後に回路基盤の酸浸出やその他の方法で物質を抽出するような非正規のリサイクル技術、直接的な埋め立て処分、破砕のような機械処理が含まれる。

評価によると、Bo2Wコンセプトは他の対策よりも、経済的で環境に優しいことが示された。例えば、素材はサイズが小さいほど混ざり合いやすいため、破砕による再生素材は純度が劣る。これに対し、Bo2Wによる手作業での分解作業は、素材の混合を最小限に抑えながら効率的に部品を分離できる。しかも設備や労働力への投資はほとんど必要ない。

一方、典型的な管理されていない精製作業は、環境への影響と経済的利益の面で、現代的な精製作業よりも評価が低い。つまり、有害物質を含むE-wasteを安全に処分するためには、強力な国内法、適切な資金、国際連携といった支援が必要であるということだ。

短期的な解決策

しかし短期的に見れば、Bo2Wのイニシアチブは、開発途上諸国が十分な最終処理施設を構築できるまでの実用的な解決策となり得る。Bo2Wは柔軟に、また地域の条件に合わせて実施されるべきである。そうすることによって、例えば解体の程度や、どの部品を世界の施設に送るのかを決定できる。

また、中国やインドのパイロットプロジェクトでの経験は、解決策の成功を左右する社会的要因を浮き彫りにした。例えば、このモデルはE-wasteの排出量が少ない比較的小さな国で有効である。そのような国では、国内の廃棄物の量が大規模な精製施設を建設するほどではないからだ。

Bo2Wを効果的に実施するには、国から国への解体部品移動の安全性を確実にすべく、報告、登録、追跡システムも正しく機能させる必要がある。また、国際的ネットワークを通じたこうした協力は、素材や処理技術に関する知識の共有を促進できる。そして、長期的に見れば、開発途上諸国が十分な資金と技術のノウハウを利用できるようになった時に、地域的な精製施設を創設することを促すことができる。

翻訳:髙﨑文子

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著者

フェン・ワン博士は国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の電子廃棄物問題を解決する(StEP)イニシアチブのリサーチ・アソシエイトである。新興経済国において主要なE-waste前処理工程である手作業解体に関して調査をするため、StEPの「ベスト・オブ・2ワールズ」プロジェクトとともに活動している。UNU-IASのSCYCLE(持続可能なサイクル)ユニットの一員として、ワン博士は中国などの開発途上国におけるE-waste管理を中心に、E-wasteに関するさまざまなテーマを研究している。2010年以降、世界のE-waste排出量の数量化のための手法とモデルを評価すべくStEPとともに活動している。現在、ワン博士はオランダのE-wasteの流れのマッピングと評価を行うオランダの研究プロジェクトに参加している。

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