リオ+20 :人口対策を訴える科学者たち

リオ+20 地球サミットは政治的タブーを破り、人口と消費問題に対して断固たる対策を取らねばならない。さもなければ地球環境はひどく悪化し、その対応に苦しむこととなるだろう。6月7日、世界的科学アカデミーはそう警告した。

裕福な国々は持続不可能な生活様式を大々的に減らすか改めるべきであり、開発途上国は必要な人に避妊具を提供するための一層の努力を行うべきである。王立協会を含む105の組織が共同報告書でこのように訴えている。
これは、リオデジャネイロで開催される、国連持続可能な開発会議への参加者に対する警鐘となった。

著者らは、今回のリオ地球サミットは貧困を削減し、環境劣化を逆転させることを目的としているものの、切迫する資源問題への2つの解決策についてほとんど触れていないことを指摘している。

科学者コミュニティ内の多くは、この直視したくない問題に対応すべき時期が来たと考えている。「あまりにも長い間、人口と消費の問題は、政治的および倫理的繊細さを要するという理由で議論の対象から外されてきました。これは先進国、開発途上国の両方に影響を与える問題であり、両者が共に責任を持つべきです」と、王立協会フェローであり、IAP(世界の科学アカデミー)作業部会会長のチャールズ・ゴッドフレイ博士は述べている。

この共同声明で科学者たちはリオ+20の政策立案者に対し、自然資源搾取の速度と、現在と未来における食料、水、エネルギーその他の需要に応える地球の能力を決定付けるのは人口と消費であるという事実を再認識するよう訴えている。現在の世界各地で見られるような消費パターンは持続不可能だ。人口の急激な増加は社会と経済に否定的影響をもたらし、その2つが組み合わさると生物多様性が大幅に失われてしまう。

この声明は、4月に王立協会が発表した痛烈な内容の報告書を受けてのものだ。この報告書では貧困削減に向け資源のバランスをとり戻すこと、不公平で住み難い未来を招く環境的圧力を軽減することを求めている。

世界の人口は現在の70億人から、2050年までには80億~110億人に増加すると予測されている。また、途上国での中産階級の増加と世界の富裕層によるぜいたくな生活様式によって、資源の消費が急速に増えている。

「私たちはこの惑星の能力を超えた生活をしている。それは科学的にも証明済みだ」と国際科学会議のギズバート・グレーサー氏は海洋の酸性化、気候変動、そして生物多様性の喪失に関する調査を引き合いにして述べている。 「現在人類は、開発のために生命維持システムを破壊しようとするところまで来ているのだ」

科学アカデミーは貧困削減の優先順序が最も高いと強調しているが、教育、より良い医療、避妊による自発的な家族計画がそのプロセスを早めると述べる。

「政治的に不適切であったり、物議をかもしたりすることを恐れるあまり、人口問題については語られません。しかし、人口の議論は単なる数字の問題ではありません。そんな議論は責任追及に終わりがちです」サイドイベント参加のためリオデジャネイロを訪れていた人口統計学者ローリー・ハンター氏が語る。全体像はもっと複雑で、生殖に関する意思決定の要因を検討する必要性があるという。地域によっては、自然資源不足は子沢山に結びつく。家族は労働力を必要とするからだ。また世界の多くの地域で避妊具の需要がほとんど満たされていない。

「家族の大きさを決定づける要因に対して策を講じなければなりません」とハンター氏。「つまり、性と生殖に関する健康政策やプログラムがなければ環境を救うことはできないのです」 また移住、都会化、高齢化も将来の消費への影響を考えるにあたって重要だという。

リオ+20の交渉用ドラフトには「持続不可能な生産と消費のパターン」を変える必要性が記載されている。だがアメリカは、先進国が率先して行うべきだとする文言の削除を求めている。

またドラフトでは、経済成長が生態的要因によって制限される場合があることについてほとんど触れていない。その理由の1つは、科学者たちは「世界的境界線」については議論するが、それがどこにあるのかについては合意していないからだろう。

世界の様々な問題の棚卸し作業は現在も進行中だが、新たな科学イニシアティブ「Future Earth(未来の地球)」が6月14日に開始されたおかげで、そのプロセスは加速するだろう。このイニシアティブは持続可能な食料生産と気候、地球圏、生物圏の変化に関する研究を共同設計するため学会、資金、国際機関を集結させたものだ。
リオ+20で国連環境計画を強化する提案が受け入れられ、「この惑星の状態を定期的に調べる」計画も実行されれば、全体像はより鮮明になるだろう。

リオ+20の科学コミュニティにおいて交渉を取りまとめるグレーサー氏は、80ページにわたるドラフトの合意はまだ得られていないと話す。

「今は言葉のやりとりばかりが行われていて、その裏にある現実についての交渉は進んでいません。魔法でも起こらない限り、あらゆる主張を取り下げる共通項が見つかる可能性は低いでしょう」

この記事は 2012 年6月14日、guardian.co.uk に掲載されたものです。

翻訳:石原明子

All Rights Reserved.

著者

ジョナサン・ライトは、カナダのカルガリー地域の農家で市で初めて行った地域によってサポートされた農業プログラムの共同設立者である。彼はパートナーのアンドリアと共にアルバータ州カーボン市の近くでトンプソン・スモール・ファームというゼロエミッション農場を経営している。