魚は選んでから食べよう

昨年の世界海洋デーに指摘したとおり、世界にはもはやたくさんの魚はいなくなった。地球上の大型魚の90%はすでに絶滅しており、今後も今のような漁業傾向が世界的に続けば、2050年までに天然魚は枯渇するだろう。

さらに悲惨なのは世界中の海とその生物の大多数が、人類が引き起こした気候変動や酸性化と有毒物質の流出によって大きな被害を被っているという事実だ。

この現状からいくと私たちはもう特定の魚や水産物を食べてはいけないのだろうか。もしそうなら持続可能性を心配せずに食べられる種類を知るにはどうすればよいのだろう。もう海の恩恵を口にすることを完全にあきらめるのが一番なのだろうか。

持続可能な水産物

ある問題が見過ごしてはおけないほど大きくなってから慌てて行動を起こすのが人間の常である。世界の海の枯渇問題が深刻になった昨今、持続可能な水産物のイニシアティブも急激に増加した。

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その最たる世界的組織は海洋管理協議会(MSC)で、世界中の漁業が持続可能な形で行われているか認証している。水産物に詳しい人ならスーパーの棚に目立つ青色のMSC認証製品についてご存知かもしれない。そのような商品は65カ国以上あり、なお増え続けている。MSC認証製品の数は2007年の608品から2009年の2366品へと急増した。

MSCも認証製品を使っているレストランを発表しているが、2009年に始まっ「Fish to Fork」というサイトはアメリカとUKで客が提供される魚の質や持続可能性についてランク付けすることができる初めてのイニシアティブだ。

海を守りつつ、自分たちの評判も上げたいと考えるシェフもいる。エコ意識の高い顧客に最高品質の持続可能な魚を提供することによって得られる利益もあると考えているのだ。また「シェフ・コラボラティブ」は料理人同士がオンラインガイドを参照して持続可能な水産物を調達できるよう支援している。

どの魚を食べたらいいの?

「消費者」正確には「食す人」はすでに様々なラベル漬けになっている。魚だけではない。コーヒー、紅茶、果物、卵など持続可能性について考えるだけでもうんざりしそうだ。

ただ、基本的な情報に無料でアクセスすることはできる。安全の基準としては、その魚が世界のどこで獲られたものかによるが、他にも世界中で当てはまる基準もある。クロマグロは常に避けるべきだ。今年3月に開催されたワシントン条約の締約国会議でクロマグロの国際取引禁止提案が否決された事実をふまえると、ますます避けたほうがよい。国際自然保護連合によると、ある種のサメやチリ産のシーバス、メカジキも「持続不可能な漁業または持続不可能な水産養殖方法で調達されている可能性が非常に高い」ということだ。

アメリカ用消費者グラフィックガイド 出典: Good

アメリカ用消費者グラフィックガイド 出典: Good

他に人気のサーモン、カニ、タラなどについても養殖か天然物か、太平洋産か大西洋産かなどを調べる必要があるかもしれない。だからといって自分の健康と地球の未来を考え正しい選択をするために海洋生物学の資格が要るわけではない。まずはネット上にあなたの国の言語で書かれた持続可能な水産物ガイドを検索してみるとよい。ややこしいリサーチは既に環境NGOがやってくれている。

例えばブラジルに住んでいるならGuía de bolsillo para un consumo responsable de pescado(持続可能な水産物ガイド)がすぐに見つかる。アメリカのモントレー湾水族館などではスーパーやレストランへ持ち歩ける携帯用ポケットガイドを配布している。これらは居住地別になっており消費パターンも考慮されている。

水産養殖クラッシュ

名の知られた組織ばかりが安全な水産物について情熱を持っているというわけではない。カッセン・トレナー氏のように個人でウェブサイトを立ち上げる者もいる。彼はサイト「持続可能なすしネタ」に最新の科学データを挙げ、気兼ねなくすしを選べるよう示してくれている。

持続可能な水産物が増えているのは確かに良いことだが、逆の考えを持つ団体もあるようだ。世界自然保護基金(WWF)は2011年までに水産養殖管理協議会の設立を決定したが、MSCもグリーンピースもそれを支持していない。活動家や科学者は水産養殖における「飼料効率」の低さを懸念しているのだ。少なくともある研究では、食物連鎖の下部に位置する生物から作られる3.9ポンドの魚粉からわずか1ポンドのサーモンしか養殖できないと指摘している。

見解に相違のあるこれらの団体にはより建設的に協力し合ってほしいものだ。そうしなければ、こちらの調査が示すように内容の食い違う情報や複雑なラベル表示によって消費者の持続可能な水産物を買おうという意欲を削ぐことになりかねない。

それまでは慎重過ぎるぐらいがちょうど良いだろう。賢明な選択肢はたくさんある。特に管理の行き届いたイワシ、サバ、オヒョウや比較的安全な方法で養殖されたカキやイガイなどである。地域別ポケットガイドをぜひとも参照していただきたい。

2010年世界海洋デー

6月8日は世界海洋デーだ。国連が支援して毎年恒例となっているこの日は海と私たちの結びつきを祝福する日だ。

例え海岸へ行ったことがなくても、皿に載った調理済みの魚しか見たことがなくても、私たちは海とは深い結びつきがある。海はたんぱく質の主要源だからだ。そして例え魚を食べないとしても、やはり私たちは海と結びついている。海は気候、大気、水の調整に重要な役割を果たしているからだ。

より多くの人々が持続可能な水産物の重要性を認識し、未来の世代のために海を守るための掛け金を払って、この結びつきが深まりつつあることを願いたい。

2010年世界海洋デーを祝う最良の方法はどの世界のどこの水産物を選んだらよいかを学び、それに従って行動し、そして最も大切なことはその知識を家族や友人と共有することだろう。

翻訳:石原明子

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魚は選んでから食べよう by マーク・ノタラス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

著者

マーク・ノタラスは2009年~2012年まで国連大学メディアセンターのOur World 2.0 のライター兼編集者であり、また国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)の研究員であった。オーストラリア国立大学とオスロのPeace Research Institute (PRIO) にて国際関係学(平和紛争分野を専攻)の修士号を取得し、2013年にはバンコクのChulalpngkorn 大学にてロータリーの平和フェローシップを修了している。現在彼は東ティモールのNGOでコミュニティーで行う農業や紛争解決のプロジェクトのアドバイザーとして活躍している。