貧困撲滅のための国際デーに健康への答えを探求

10月17日は貧困撲滅のための国際デーであった。この国際デーは、貧困と闘い、不平等を是正する必要があることへの啓発を目的として、1993年に国連が定めて以来、毎年記念されてきた日である。さらに、「Leave no one behind: think, decide and act together against extreme poverty(誰も置き去りにしないために、極度の貧困について一緒に考え、決定し、行動しよう)」という国連の2014年のテーマは、2000年以来、8つの目標に向けて国際社会の大部分を動かしてきたミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限が迫る重要な時期を迎えていることを認識したものである。

誰も置き去りにしないことは、ポスト2015年開発アジェンダの制定に向けた議論の中核的理念である。このアジェンダはまだ最終決定がなされていないが、MDGsによって得られた進展をベースにしようとするものであり、自然と共生しながら世界に繁栄をもたらす持続可能な開発を重視することになるだろう。

健康もこのポスト2015年開発アジェンダの重要な一部を構成し、人生のあらゆる段階における健康の最大限の向上に関する目標に含まれると考えられ、衛生設備と適切な住まいの欠如、なかでも栄養不良が原因で、貧困が不健康をもたらすことに言及している。

西アフリカで始まったエボラ出血熱の流行は、貧困と健康の密接な関連性を示す説得力のある例である。こうした国々を対象にした貧困への取り組みと医療制度への支援が不十分だったことが、新たな感染例が欧米に広がった原因の1つとされている。実際のところ、エボラ出血熱の蔓延によってこれまでに何らかの教訓が得られたとするならば、それは健康問題に国境は無関係であり、エボラ出血熱などの新興感染症は最初の例が報告された時点で世界的問題とみなすべきである、ということである。現在のエボラ危機から、とくに貧困地域を対象とする健康への国際投資の拡大が必要であるとわかるが、それは人道面からだけでなく、世界の安全保障と開発に関する課題であることが明らかになっているからでもある。

貧困と健康との関連性については理解されているが、その対応についてはそれほど明確に理解されていない。貧困と福祉に関する測定指標がまだ1つも定義されていないことがその原因でもあるが、当然ながら、そうした指標は状況に大きく左右される。重視すべきなのは不平等なのか、脆弱性なのか、基礎的資源の確保なのか、それともそれらすべてなのか。

健康に関する分野では、これまで自己負担額の軽減に相対的に重点が置かれてきたが、それは基本的ニーズを満たす経済的余裕のない家庭にとって、医療費が途方もない支出となり、いっそうの貧困へと追いやられる恐れがあるからである。しかし、貧困にかかわる問題はそれだけではない。ほかに取り組むべき分野には、サービスへのアクセスの改善と医薬品の利用可能性の向上、適切な人数の医療従事者の確保がある。

さらに、貧困は開発途上国に限られた問題ではない。今月発表された報告で明らかになったように、欧州連合(EU)では1億2,400万人が貧困もしくは社会的排除の危機に瀕しており、とくにこの経済危機を受けて、米国などの他の国も貧困と闘っている。

貧困を理解するための取り組みは多岐にわたるものの、貧困と健康に取り組むガイドラインや政策は実は世界的、地域的、国家的レベルで存在している。残る問題は、こうした政策が実際に効力を発揮しているかどうかを把握するにはどうすればよいのか、ということである。なかでも、それらが国の政策立案を対象とする地域的ガイドラインの場合のように、策定された場所が実施される場所と離れている場合はどうすればよいのだろうか。

英国の経済・社会研究会議と国際開発省が資金を提供したPoverty Reduction and Regional Integration(PRARI:貧困削減と地域統合)のプロジェクトでは、この問題に取り組むために、測定メカニズムの構築に地域レベルおよび国レベルの関係者を関与させることで、最貧層に利益をもたらす健康政策を成功させるには何が必要なのか、また、政策がもたらす変化をどのように測定するのかを理解しようとしている。その目的は、諸機関がそれぞれの政策の進捗状況を監視するのに役立ち、他の関係者がそうした機関に各自の約束に対する説明責任を負わせることができるツールを構築することである。

政策立案者に健康に関する約束への説明責任を果たさせることは、現在の状況を考えるとますます重要な意味を持つようになってきている。今回のエボラ出血熱の流行により、一般市民は次のような疑問を持つようになった。「西アフリカ諸国がこの健康危機に対処するのを支援するために、私たちは何をしているのだろうか?」、「なぜ流行をもっと早期に抑えられなかったのか?」、そして場合によっては「私たちのコミュニティにエボラ出血熱の患者が出た場合、地域の病院には患者を治療する体制が整っているだろうか?」との疑問である。

これらはいずれも世界保健機関や国境なき医師団、地元の公衆衛生局のような組織の活動をもっぱら後押しする重要な疑問である。こうした疑問にも何らかの答えが得られることを願いたい。

翻訳:日本コンベンションサービス

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貧困撲滅のための国際デーに健康への答えを探求 by Ana Amaya and Stephen Kingah is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License.

著者

アナ・B・アマヤ氏は、貧困削減と地域的統合の関係に注目するPRARIプロジェクトの研究者で、ブリュージュの国連大学地域統合比較研究所(UNU-CRIS)で活動している。

スティーヴン・キンガ氏は、貧困削減と地域的統合の関係に注目するPRARIプロジェクトの研究者で、ブリュージュの国連大学地域統合比較研究所(UNU-CRIS)で活動している。